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10代のZ世代はつぶあん世代!?社会の透明化を促進し「公正さ」をもたらしてくれる存在に

2024.06.21

創刊から38年、常に最前線でビジネストレンドを追いかけてきたメディア『DIME』と国内電通グループ約150社で構成される「dentsu Japan」がタッグを組んで、次のトレンドを探求する『DIME Trend Lab』。

第4回のテーマは「Z世代」。

数年前、若年層の代名詞であったZ世代も上の年代はいまや20代後半。SNSネイティブ世代と言われている彼らは企業やビジネスシーンにどのような影響を与えてくれているのだろうか。

若年層のトレンドのスペシャリストと普段からwebメディアでZ世代に向き合っている編集者が、Z世代が社会にもたらしてくれる恩恵について意見を交わし、そして20代後半から10代中盤までをひとまとめにする「Z世代」という言葉そのものについても再考する!

天野 彬さん(右)
株式会社 電通デジタル チーフメディアリサーチャー
東京大学大学院学際情報学府修士課程修了(M.A.)。2012年電通入社後、SNSのマーケティング活用や若年層のトレンドについての研究開発・コンサルティングを推進し、2024年より現職。ソーシャルメディアプランニングへの深い知見をもち、広告活用とオーガニック運用の一体化を推進するプロフェッショナル集団「Social Connect Group」所属。主著に『ビジネスはスマホの中から生まれる――ショートムービー時代のSNSマーケティング――』。その他、メディア出演・著作・講演など多数。明治学院大学社会学部非常勤講師、TikTok for Business Japan Awards 2024 Creative Category審査員なども務める。

井田 愛莉寿(左)
@DIME編集者。前職マイナビウーマンでは編集長を務め、20代をターゲットにしたweb記事を多数輩出し、数多のバズを生み出してきた〝エモの達人〟。@DIMEではエンタメ記事を中心に担当し、新たな読者層の開拓に尽力している。常に新しいことにアンテナを張り続ける自称「超ミーハー」。

Z世代は社会を変えてくれるドライバー

井田:SNSマーケティングの専門家である天野さんに改めてお聞きしたいのですが、「Z世代」とはどのような世代カテゴリなのでしょうか?

天野:Z世代という言葉自体は2010年代の中盤から注目されてきた印象です。ミレニアル世代に続く世代として、そして近年はZ世代以降のα世代という言葉ともセットで言及されるようになっています。

年齢で言うと90年代後半から00年代に生まれた人たちになります。SNSと共に育ち、スマホを使いこなしているいわゆる「スマホネイティブ世代」です。

新しいSNSにおいて他の世代よりも利用率が高く、最近ではThreads、Be Realなどをどう利用しているのか知ることが、SNSマーケティングをする上で重要な要素になっています。

天野さんはSNSの勃興期よりSNSをターゲットにしたリサーチやマーケティングに携わる

井田:「インスタ映え」という言葉が流行語大賞をとったのが2017年ですから、Z世代にとって学生時代からSNSがあるのが当たり前なんですよね。

いま「Z世代が会社を変える!」なんて言われたりもしていて、私としては新しい価値観を社会にもたらしてくれるんじゃないかと期待しているのですが、いかがでしょうか。

天野:様々なロールモデルの影響もあって自分の生き方や意見をプレゼンテーションすることに長けていると思います。また、「Z世代」という日本固有でなく海外でも通用する呼称が象徴するように、日本の価値観だけに縛られないことも特筆的です。総じて、日本の働き方や社会のルールを変えてくれるドライバーになる世代だと期待できるのではないでしょうか。

肩書きやラベリングは重視しないZ世代が企業価値観を変革中

井田:実はつい先日、個人的にかなり驚いたエピソードがあるんです(笑)。

20代前半の、つまりZ世代のとある後輩が「有給休暇を2週間とるので、その間は絶対に仕事を入れないでください!」って10歳以上離れた上司にきっぱりと言い切っているのを耳にしたんですよ。

私は心の中で「えー!!」って叫んじゃうくらい衝撃的で……。私たちの世代だと思っていても誰も言えなかったじゃないですか。それを言っちゃうんだって。

でも同時に「これはチャンスかもしれない」って思ったんです。彼らが大きなムーブメントを起こしてくれるなら、私たちもそれに乗っかればいいじゃないかって。

たぶん、上の世代の人たちも本当はそうあるべきってうすうす感じているんじゃないでしょうか。

社会の変化を敏感に感じ取る井田

天野:ちょうど今年、『不適切にもほどがある!』がヒットしたことが象徴的なように、世代間ギャップを描きつつ、それが双方の歩み寄りによって混ざり合っていくさまが多くの共感を呼びました。

その舞台の一端がテレビ局=マスコミであったことも示唆的でした。井田さんが感じたようにそれは世の中のトレンドともリンクしているのは間違いないと思います。

井田:これまでの社会で当たり前だった肩書きやラベリングがZ世代には通用しないんじゃないのかなって思うんです。

「上司だから言うことを聞く」ではなくて「なぜそれをするのか」をしっかりと自分でも考えるし、上司であってもきっちりと理由を求めることができる。

もしかしたらSNSでは当たり前なフラットな関係性の構築が、実社会でも現れているんじゃないでしょうか

天野:その通りだと思います。

そして本当はみんなもその方がいいと思っているから、社会全体がZ世代に注目をしているし、期待もしているんじゃないでしょうか。

井田:「肩書きやラベリングを気にしない」という特徴は人間関係だけでなく、企業との関わり方にも現れていますよね。

例えば、ファッションでも昔は高校生でも高級ブランドのバッグを持つことがステータスだったのに、ひと昔まえからZARAやH&Mなどファストファッションが流行して、最近はSHEINをはじめとするウルトラファストファッションが受け入れられています。

ロゴやネームバリューの価値がだんだんと薄れてきていて、良いものはノーブランドであっても支持されています。

価値観の変化がこうした消費行動にまで現れているのは非常に興味深いです。

Z世代を年齢によってさらに細分化してみる

井田:ところで、ずっと思っていたのですが15年分をZ世代としてひとまとめにするのは少し長すぎませんか?(笑)

天野:僕も正直、世代のくくり方は少し大きすぎると思っています(笑)。

もちろん世の中を捉えやすくするためには有効ですけど、一般化しすぎると例外もたくさん出てくるのでやはり限界は目立たざるを得ないですよね。情報があふれて価値観が分岐しやすい時代で、ひとつのカテゴリとして語りづらくなっている面は否めないでしょう。

「テレビのF1、F2世代もなぜか15年区切り」(天野さん)                    

井田:Z世代の中でも、年代によってSNSの使い方に違いがあるんですか?

天野:20代後半~中盤のZ世代の中でも上の世代は、SNSで友達とつながりながらコミュニケーションをとる「ソーシャルグラフ」ベースのつながりと言っていい。分かりやすく言うと、InstagramやXのアカウントをみんな所有して、フォローし合いながらお互いの情報をシェアして情報を得てきた世代になります。

一方で、10代を中心とするZ世代の中でも下の世代は、上記ももちろんありますがおすすめやアルゴリズムから情報を得ることがベースにあります。分かりやすい例だとTikTokです。いわば「インタレストグラフ」ベースで、自分の興味のある分野の情報の方から寄ってきてくれる。SNSという場への期待値自体が変容しているでしょう。

井田:なるほど。やっぱり、同じZ世代でも違いがありますよね。

10代のZ世代は「つぶあん世代」!?

井田:では、Z世代の下の世代(10代~20代前半)に新しい名前を付けるなら‶何世代〟ですか?

天野:難題ありがとうございます(笑)。

そうですね……〝ビュッフェ世代〟というのはどうでしょうか。多様なものから自分が好きなものを選ぶ、でも主体は自分にある。決まったコースよりは、自分で選択していくことを好んでいる。

それに、ビュッフェってコスパがいい。好きなものだけ食べることもできるし、満足したらすぐに帰ることもできる。いまの世代の特徴が出ているかなと思います。

井田さんはどうですか? 同じようにこれから社会に出てくる若いZ世代に新たな名前を付けるとしたら?

井田:若いZ世代は「おすすめやアルゴリズムで情報を得る」とお話がありましたが、その結果、私はユーザーがフォローをしたり、お気に入りのアカウントもかなり細分化されていると思っているんです。

となると、ブランド力のあるひとりのインフルエンサーより自分が好きなインフルエンサーを支持する傾向があるのではないでしょうか。

先ほど私が話した「肩書きやラベリングを気にしない」というパーソナリティと共通しているように思います。

ということで、あえて新しい世代の名前を付けるなら‶ノーブランド世代〟ですね!(笑)

天野:面白いですね、井田さんがZ世代のどこに注目しているのかがよくわかります。

そういえば、私がもう一つ気になっているZ世代の特徴があります。

Z世代は、お互いの個性を尊重するとよく言われています。多様性を理解しているという意味でその通りだと思いますが、一方で、大学で学生たちに講義をしていて思うのが彼らは人前に出たり、目立ったりすることを得意としていないように感じるんです。

でも、オンラインで課題を出してもらったり質問を受け付けたりしていると、みんな真剣に授業を受けてくれているのが分かります。

話を聞いてみると「みんなの前で怒られるのは嫌だけど、褒められるのも嫌だ」と言うんです。

井田:ポジティブなことでも、自分の意に反しラベリングされるのが嫌なのでしょうか

天野:かもしれません。もしかしたら井田さんの言う「ノーブランド」は自分の個性にも当てはまっているのかもしれません。

個性、すなわち個々の〝粒〟は大事だけど、目立ち過ぎず周りと調和をしていたい――そういった若いZ世代の特徴をくみ取って‶つぶあん世代〟というのはどうでしょう。

井田:すごい! これ以上ない回答な気がします。

私は先ほどZ世代が起こすムーブメントに乗っかればいいと言いましたが、もしかしたら少し違ったかもしれません。

彼らが発信する背景は「気が強い」とか「気にしない」のではなく、SNSを通して「心理的安全性」を他のどの世代よりも賢く、柔軟に学んできたからな気がします。それは私たちにとっても大事なことで、ただ乗っかるのではなく、彼らのいいところは上の世代の私たちも積極的に学び、真似していきたいですね。

天野:おっしゃる通りですね。

SNSで発信することが当たり前になり、ある種のアウティングは活発化する傾向です。その結果、社会の透明性が上がり、進退繰り返しながら公正な世の中に近づいていく可能性が高いと思っています。

井田:今後、〝つぶあん世代〟もどんどん社会に出てきてくれます。新しい世代に任せるのではなく私たちも、もっと学んでいかないといけないですね。

天野:Z世代任せにするのではなく、ミレニアル以降の世代にとっても大事なことですね。

取材・文/峯亮佑 撮影/木村圭司

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