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クーデターから3年が経過したミャンマーで開催されたW杯予選、現地の異様な雰囲気をレポート

2024.06.12

試合当日のスタジアムは厳重な警備。多くの記者がネット問題に直面

 ネットに関しては、スタジアムでも苦労の連続だった。購入したSIMのテザリングが全くできず、スタジアムのWiFiにつないでいたが、試合前日は利用者が増えた途端に使用不能に。当日は複数のネットワークが用意されたが、試合直前までつながらずに困り果てていた。

 それでも、カメラマンが一斉にピッチに出たタイミングを見計らって再ログインにトライしたところ、奇跡的に接続。しかも高速で、VPNを通してミャンマー戦ライブ配信を記者席で見ることができた。記者仲間には日本から持参したレンタルWiFiが一切つながらず、パソコンに打った記事をスマホからLINEで送信した人もいたが、筆者は幸運に恵まれたようだ。

 この日のトゥウンナ・スタジアムは、キックオフ数時間前から厳重な警備体制が敷かれ、物々しい雰囲気が漂った。個別の荷物検査もあり、「傘の持ち込みはダメ」と言われたが、「これがないと、帰る時にびしょ濡れになる」と強引に主張すると「じゃあOK」と態度が軟化。過去の滞在時にも感じたことだが、ミャンマー人は本当に優しいのだ。

試合に向かう観客たち(筆者撮影)

 実は取材初日の4日にICレコーダーを忘れ、諦め半分に翌日スタッフに聞くと、「ここにあるよ」と事務室まで連れていってくれて、笑顔で返却してくれた。こういったケースは欧州や南米などではあり得ない。ヤンゴン市内では夜間に窃盗事件が頻発しているというが、基本的には親切な人ばかりなのだ。こういう国民が軍事クーデターの渦中にいるとは本当に信じがたい。早く解決に向かってほしいと願うばかりだった。

 スタンドの観客は7割程度の入り。3万2000人収容ということだから、2万2000~3000人くらいが入ったことになる。日本からのサポーターも駆けつけていた。

 ただ、MMFのゾーゾー会長が国軍に近い政商と言われ、「この一戦を軍のプロパガンダとして利用する」という見方もあったことから、来場したのは意向を受けた公務員や軍関係者が多かったのかもしれない。多くの市民は国軍への反発心からか、あまり興味関心を示さなかった様子。それはスポーツに携わる者としては非常に残念だったが、最後まで混乱することなく、無事に試合は終わった。

ミャンマー対日本戦の告知看板。田中碧は残念ながら試合に出なかった(筆者撮影)

空港に向かう途中で検問。国軍支配を実感

 翌7日の昼過ぎには帰国の途に着くため空港に向かった。途中で検問が実施されており、警察官から「パスポートを見せろ」と言われた。しかし、我々が日本人だと分かると「ノープロブラム」とアッサリしたもの。運転手だけは免許証を預けさせられたが、3日間の滞在期間を通して国軍支配の恐怖を実感したシーンはこの時くらい。普段以上に気を付けて行動したことも大きかったのだろうが、ミャンマーに対する印象は過去2回と変わらなかった。

 世界各地で公式戦が行われるサッカーに携わっていると、普段は行けないような国や環境に赴く機会も少なくない。クーデター後の国軍の弾圧下にあるミャンマーでは、人々が今、懸命に平穏な生活を維持しようとしている。その姿を今一度、しっかりと脳裏に焼き付けたいものである。

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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