■連載/阿部純子のトレンド探検隊
日用品、自動車部品、衣料品、食品にいたるまで器用につかむロボットハンド
ブリヂストンの社内ベンチャー「ソフトロボティクス ベンチャーズ」は、タイヤやホースの開発・生産におけるノウハウを活用したゴムの人工筋肉(ラバーアクチュエーター)を用いて、人の手のように器用にものをつかんだり、運んだりするハンド型ロボット「TETOTE」を開発。ゴムの力を活かして人に寄り添い、人と共存できるロボットを目指したソフトロボティクス事業に取り組んでいる。
今年の1月にラスベガスで開催された世界最大規模のテクノロジーの国際見本「CES 24」と、5月にシカゴで開催された北米最大級の自動化関連展示会「Automate」にてDoosan Roboticsとコラボレーションして好評を博した展示が、東京ビッグサイトで開催された「FOOMA JAPAN 2024」に登場した。
お披露目された「Mix Master Moodie」(以下、Moodie)とは、「TETOTE no NAKAMA」(TETOTEと組み合わせることでTETOTEの価値を増幅するパートナーの商品やソリューションの総称)であるDoosan RoboticsのAIカクテルバー。
Doosan Roboticsの協働ロボット(Collaborative Robot)は汎用性が高く、人間の手にあたる部分のアタッチメントを換えることで、様々な作業ができる。
Moodieは、シェイカーを扱うプロ型とトッピングとカクテルのサーブを担うやわらかで親しみのある器用型の2つの手を持ち、日常に違和感なくなじむサービスロボットとしてデザインされている。
最初にタッチパネルで客の気分をリサーチして、カメラで表情を撮影、その時の客のムードに合わせたカクテルを提案する。
筆者の気分を基にAIがチョイスしたカクテルは“Joyful Twist”。プロ型ロボットが材料を入れてシェイクまで終わると、ブリヂストンのTETOTEを使った器用型ロボットに渡して、カクテルのトッピングと客への提供を行う。
「TETOTEの内部にはゴムの人工筋肉が入っています。ゴムの人工筋肉はゴムのチューブと外側の繊維で構成されており、空気を入れると電車のパンタグラフのように曲がり、空気を抜くとまっすぐ伸びるといったエアの力だけで動くシンプルな構造です。
ゴムなので本体自体もとても軽く、2~3kgの重量のものをひとつのハンドで持つことができます。太さと圧力に比例してパワーが出るので、もっと太いゴムの人工筋肉をつければタイヤなど、さらに大きく重いものを持つことも可能です。
つかむ力も自在に変えることができ、お菓子のようなかなり小さいものでも、つぶさずにつかむことができます。
物流分野や工場でのピッキング作業での使用を想定していまして、ECサイトの倉庫で出荷する際に商品をピッキングする、工場での組立て前に必要なパーツを組み合わせてセットする作業など、人がパーツや商品を取りに行くピッキング作業の代わりをTETOTEが担います。
以前、ロボットアームで人工筋肉を開発したこともありましたが、当時は速さや強さを求められていて、時代に合わずに断念しました。今回は曲がるゴムの人工筋肉を開発し、手の動きをするロボットハンドに着眼しました。
TETOTEは人の手のようにやさしくモノを持てますし、やわらかいロボットですので、万が一その場で一緒に作業している人に当たってしまっても安心・安全です。人と共存できるやわらかいロボットは今の時代にもマッチしていると思います」(ソフトロボティクス ベンチャーズ ソフトロボティクス製品開発推進課 課長 坂本勝也氏)