日々目にする国際ニュースだが、日本に住んでいる我々が入手できるのはその一部でしかない。実際にその国に在住している、もしくは長年研究をしている識者だから知っている〝国策〟とそれらを担う企業を聞いた。
インドネシア
人口世界第4位の〝新興大国〟は国営企業がGXと食品産業を推進
インドネシア総合研究所
代表取締役社長
アルベルトゥス・プラセティオ・ヘル・ヌグロホさん
2000年に来日。2011年にインドネシアへの進出を検討する日本企業に市場・消費者調査やコンサルなど支援を行なう、同社を創業。
GXの推進で国内全域に充電設備の整備を図る
2024年10月、インドネシアでプラボウォ新大統領の政権が発足する。
インドネシアといえば石油、石炭、天然ガスといった天然資源が豊富。しかし、豊富な天然資源の採掘と輸出に頼らず、産業を育成しようとしている。中でも力を入れて育成しているのがグリーンエネルギー産業。GX(グリーントランスフォーメーション)の推進が国の指針だ。
インドネシアの市場調査やマーケティングなどを手がけるインドネシア総合研究所代表取締役社長のアルベルトゥス・プラセティオ・ヘル・ヌグロホさんが挙げる、グリーンエネルギー産業の有力企業が国営電力会社のプルサハアン・リストリック・ネガラ社(PLN)。同社で注目すべきは、充電設備の整備にあるという。
「EVや電動バイクの普及など新たなモビリティーに対応するため、都市部には充電設備が設けられています。フル充電したバッテリーに交換すると同時に回収したバッテリーに充電するところが徐々にできていますが、国内全域への整備はこれからです」
充電設備の整備は、世界第4位という人口増に伴って社会問題になっている住宅不足の解消とリンクさせることができる。
「インドネシアでは現在、1300万戸の住宅が不足しており、毎年100万戸の住宅建設が計画されています。住宅開発と一緒に充電設備を整備することで効率的に進められています」
不動産開発はリッポーグループやシナルマス・グループなどといった大財閥が手がけている。
求められる食料の安定調達。カギを握るのは国営農園
インドネシアは人口が多いこともあり、食料安全保障の観点から食品産業の育成も意識されている。輸出できる農産物がパームオイルしかなく、残りは輸入に頼っているのが現状。開墾して田畑をつくり、食料自給率の向上を図ろうとしている。
増産だけではなく調達も重要なインドネシアの食品産業において、調達面で大きな役割を果たしているのが、国営のラジャワリ・ヌサンタラ・インドネシア(RNI)。国営農園だが輸入も担当し、食料以外にも肥料など農業資材といったものも輸入している。
また、食品で忘れてならないのが、同国最大の食品企業、インドフードグループだ。
「大財閥サリムグループの企業で『インドミー』ブランドの即席麺でおなじみです。国内だけではなくアフリカや中央アジアにも輸出され、広く親しまれています」
GXと食品産業を担うインドネシア企業
国のインフラをすべて担う国営企業|PLN(プルサハアン・リストリック・ネガラ)
国営電力会社で、インドネシア全土の電力供給を担う。2022年の純利益は14.4兆ルピア(約1382億円)で、前年比約10%増と業績は右肩上がり。また、政府と共同でカーボンニュートラルを進める。
農業、製薬、流通を牛耳る国営農園|RNI(ラジャワリ・ヌサンタラ・インドネシア)
新首都のヌサンタラに本拠地を構える国営農園。医薬品事業や砂糖生産、飲料水製造・販売などを行なっている。子会社を多く有し、不動産や流通などグループで多岐にわたる事業を展開する。
人口増加で食品需要は増大|インドフード
インドネシアを代表する財閥のサリムグループの中核企業で、即席麺『インドミー』の年間生産能力は340億食にのぼる。ほかにも製粉やアブラヤシのプランテーションなども手がける。
取材・文/大澤裕司
※掲載している情報は4月25日時点のものです。
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