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不動産バブル崩壊で後退した中国経済は半導体とEVにより起死回生となるか?

2024.07.04

日々目にする国際ニュースだが、日本に住んでいる我々が入手できるのはその一部でしかない。実際にその国に在住している、もしくは長年研究をしている識者だから知っている〝国策〟とそれらを担う企業を聞いた。

中国

中国 不動産バブル崩壊で景気後退。半導体とEVで起死回生を図る

中国

柯 隆さん東京財団政策研究所 
主席研究員
柯 隆さん
中国経済を専門とするエコノミスト。1963年、南京市生まれ。88年に来日し、94年に名古屋大学修士(経済学)。富士通総研などを経て2018年から現職。

ファーウェイは中国政府にとって特別な存在

 不動産バブルの崩壊、若年層の失業率増加など、中国経済の状況は思わしくない。そんな中、中国政府は日米欧の先進国と肩を並べられる可能性のあるデジタル産業を育成したいと考えている。

 この分野で政府にとって特別な存在といってもいい企業がファーウェイ。IT関連の高い基礎技術を有し、サーバー、システム、ソフトウェアの開発だけではなく、半導体の製造・調達も可能だ。

 中国経済に詳しい東京財団政策研究所主席研究員の柯隆(か・りゅう)さんは次のように話す。

「中国政府にはファーウェイを通じてIT産業の底上げを図りたいという意思があります」

 ファーウェイは民間企業でありながら、普通の民間企業ではないと思われるところがある。それは、2018年にカナダで同社の孟晩舟・副会長兼CFOが逮捕された際の中国政府の対応にも表われた。

「中国政府はこの時、カナダ人2名を拘束し、CFOの保釈と同時に拘束していた2人を解放しています。カナダにチャーター機を派遣してCFOを迎えに行ったほど。政府にとってファーウェイは普通の民間企業ではないことを示しています」

作れないはずの半導体を作ったSMICの技術力

 半導体でもSMICという有望企業が登場している。柯隆さんは「SMICは今後の中国の半導体産業のカギを握っています。政府は何が何でもSMICを育てるつもりです」と指摘する。

 SMICはファーウェイが2023年9月に発表した5G対応スマートフォン『Mate 60 Pro』のプロセッサーで話題になった。

「カナダの調査会社が分解したところ、中国企業が作れるはずがない7nm(ナノメートル)のプロセッサーが搭載されていました。しかも、日本やアメリカ、台湾が作ったものでもありません。どこが作ったものかを調べたところ、SMICでした」

 また、中国ではEVの普及がめざましく輸出も活発だ。最近日本にも上陸を果たしたBYDを筆頭に、EVで世界をリードすることを目指している。

「中国でEVが普及したのは政府の支援が手厚いことが大きいです。その方法は単純な資金援助だけでなく、販売補助金の支給のほか、新規参入を認めない、政府が優先的に調達するなど幅広い。この先も政府の支援は続くでしょう」

 ただ、EVの技術はまだ成熟していない。中国国内では報道されていないが、バッテリーの発火事故なども起こっている。

「少しずつタクシーなどの商用車がEVに代わり始めていますが、中国でEVが自動車の主流になるのは、まだ先のことでしょう」

中国経済の主軸3大企業

国内5Gの早期実現を目指す|「HUAWEI」

広東省深圳市に本社を置く通信機器大手メーカー。毎年、売上高の10%以上を継続して研究開発に投資するなど、先端技術開発への投資が旺盛な企業としても知られている。

「HUAWEI」

4つの新工場建設を進行中|「SMIC」

中華人民共和国上海市に本社を置く半導体ファウンドリー企業。現在時点で北京、天津、上海、深センで新工場の建設を進めており、その額は約1兆1300億円規模だという。

「SMIC」

国内のEV市場をけん引する|「BYD」

1995年に設立され、世界有数のリチウムイオン電池のメーカーとして成長。2003年に自動車事業に参入した。現在は日本や欧州を含む世界70か国以上でEVの販売網を展開している。

「BYD」

取材・文/大澤裕司

※掲載している情報は4月25日時点のものです。

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