国や地域での紛争が増え、世界は今、重要な分岐点に立っている。この先、新興国の急成長やGAFAMに対抗する企業の台頭など様々な展開が待ち受ける中で、各業界の覇権を握るのは、どこの国のどの企業か。識者の取材を通じ、意外な答えが見えてきた。
経済状態は安定しているが各地で暗雲が立ち込める
世界全体の経済状況を表わすデータを見ると、意外にも安定的だ。4月16日に国際通貨基金(IMF)が発表した、2024年と25年の経済成長率の見通しはいずれも+3.2%。世界のインフレ率は、24年は+5.9%、25年は+4.5%と鈍化傾向。一般にインフレ率が高止まりし、物価上昇が過度に進むと消費者の消費意欲が下がり、景気後退の懸念が生まれる。だが今回は、インフレ率が鈍化傾向にあるのでその心配はなさそうだ。
しかし、景気が下振れる可能性がないわけではない。それが〝地政学リスク〟だ。長引くロシア・ウクライナ問題に、イスラエルとハマスの武力衝突、「台湾有事」の懸念、アメリカ大統領選でのトランプ氏が当選した場合の影響……。これらの不測の要因がエネルギー価格の高騰や地域経済の混乱を引き起こし、世界全体として景気後退に陥る可能性はある。
2大産業の半導体とGXは各国が政策として注力する
産業別で注目すべきは、NVIDIAがけん引する半導体市場と世界的に緊迫の課題となっているGXの2つだ。特に注目は半導体市場だ。生成AIや電気自動車(EV)の普及拡大、宇宙ビジネスの躍進など、それらを担うIT機器に半導体は欠かせないため、今後も多くの需要が見込まれる。
世界半導体市場統計(WSTS)によれば、2024年の半導体市場予測は、前年比+13.1%増の5884億米ドル(約88兆円)、30年にはその倍の1兆米ドルを目指して拡大を続けていく。また、過熱する半導体市場では、自国の安全保障のための規制合戦が起きている。最近では、2023年8月に中国が半導体材料のレアメタル輸出を規制。同10月には米国が半導体製造装置の中国輸出を規制強化するなど、〝半導体戦争〟とも揶揄されるほどだ。
他方、GXの観点では世界全体の9割以上の国や地域がカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量が実質ゼロ)を表明し、国を挙げて取り組んでいる。例えば、米国ではこの先10年間で50兆円、ドイツでは4年間で33兆円のGX投資を行なうと表明。市場は盛り上がりを見せている。
そのほか、この先成長する可能性がある産業の動向を以下にまとめた。次ページからはNVIDIAが躍進した理由、そして次の急成長企業がどこかを各分野、各国の識者に話を聞き、解明していく。
2024年世界経済TOPICS
【政治・経済】
相次ぐ重要選挙
今年は米国大統領選をはじめ、EU議会選やインド総選挙など「選挙イヤー」だ。選挙の公正さへの疑義など民主主義の根幹を揺るがす課題や国際秩序への影響は見逃せない。
世界経済成長動向
経済成長は安定して続く予想だが、米国の金利動向で再利上げの可能性が出ると株価には不安要素に。EU圏では成長率が下方修正され、エネルギー価格の高騰も落ち着く兆しが。
【地政学リスク】
米中対立
半導体産業での競争が目立つが、軍事・安全保障から経済関係まで対立論点は多い。今年11月に行なわれる米大統領選も、今後の対立緩和または関係悪化を左右する重要なイベントになるだろう。
スウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)加盟
ロシア・ウクライナ問題を契機に、スウェーデンは中立政策を転換し、世界最大の軍事同盟NATOに加盟した。これにより北欧諸国での防衛力や各国の間での協力関係が深まっている。
G20とグローバルサウス
欧米諸国と対比した途上国を表わす「グローバルサウス」。今年のG20ではインドが代表で、途上国の課題を投げ込む。また東西の国とも別の「第三世界」の意味もあり、世界分断の新たな視点でもある。
【産業・業界動向】
半導体・生成AI
一大ブームになった生成AIが半導体市場をけん引する構図。また自動車産業からの手堅いニーズが継続し、各国とも設備投資を伸ばす見込みだ。
GX・クリーンエネルギー
二酸化炭素排出削減など地球環境への負荷を抑える政策に加え、エネルギーの地産地消や循環利用を目指した動きが、世界的に進んでいる。
宇宙ビジネス
2040年代には世界全体で100兆円以上の市場になる見込み。ビジネスでの宇宙空間の利活用や、安全保障での宇宙システムの利用など多岐にわたる。
モビリティー
乗り物やこれらの輸送サービスも含まれ、サービスだけでも2030年に約400億米ドル(約6兆円)の市場へと成長し、新たな社会インフラへの期待がある。
デカコーン企業
ユニコーン企業の10倍となる100億ドル以上の価値がある企業の総称で、フィンテックやITなどのスタートアップ市場が盛り上がりを見せる。
パリ五輪
2024年7月に開幕するパリ五輪の経済効果は約100億ユーロ(約1.4兆円)と試算されており、開催国フランスを中心に大きな経済効果をもたらす。
取材・文/久我吉史
※掲載している情報は4月25日時点のものです。
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