大企業の人材や資産を活用し、様々な可能性に挑戦するベンチャーが急増中。社内で事業を熟成させたり、独立してさらなるステップアップを目指したり……。手法は違えど新たな起業の形に成長のヒントあり?
社内ベンチャー
ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ From ブリヂストン
ゴム人工筋肉の実用化を目指す!
ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズCEO
音山哲一さん
2001年、ブリヂストンに中途入社、技術開発部門でF1向けタイヤ材料開発を担当。その後、技術戦略部門を経て、2023年、同社を設立。
ブリヂストンのコア技術をもとに社会&顧客価値の両立を目指す
ブリヂストン初の社内ベンチャーである同社。ブリヂストンのゴム人工筋肉(ラバーアクチュエーター)を発展させたソフトロボティクスの事業化がミッションだ。核となるソフトロボットハンド「TETOTE」は、人の手でもロボットの手でもない〝第3の手〟として、様々な形、重さ、硬さのモノを「いい感じ」につかむのが特徴。
「このロボットハンドは人の手に触れることもできるし、物を壊さずやさしくつかむこともできる。その〝やわらかさ〟が人や物との距離をゼロにするんです。これまで産業ロボットは隔離されていることが多かったのですが、人とロボットの関係性を変えてくれるのが、ソフトロボティクスだと思っています」(CEO・音山哲一さん)
直近では外部企業との共創により、事業化を加速。「TETOTE」は工場や物流施設で活用され始め、従業員の負担軽減や生産性向上に役立っている。
「企業の持つ技術資産や人脈をフル活用できるのも社内ベンチャーの強み。他業種との共創もスムーズですし、意思決定と行動に移すまでのスピード感も違います」(音山さん)
今後は製造業やウェルビーイング分野での活用も視野に入れている。
「将来的にはソフトロボティクスが当たり前にある幸福度の高い社会を実現していきたいですね」(音山さん)
ゴム人工筋肉(ラバーアクチュエーター)の仕組み
タイヤや油圧ホースの技術を使ったゴムチューブと高強度繊維のスリーブで構成。チューブに空気や油を注入して圧力を加えることで、人の筋肉のように収縮するという。
他業界との共創もカギ
商品のピッキングに必要な目と頭脳のAIソリューションを持つアセントロボティクスとの業務提携で開発を加速させる。
新たなロボットを創造
「触れ合いを通じ、人の心を動かすロボット」のプロトタイプ「umaru」。ソフトロボティクス技術の可能性はここにも。
〈DIMEの読み〉〝やわらかいロボット〟の着眼が新鮮。これからのロボットと人の関係を変える可能性も秘め、様々な製品への応用に期待が集まる。