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次のNVIDIAは日本から生まれる?日本が生成AI開発で目指すべきは「AI版トヨタ」

2024.07.05

世界産業のビッグトレンドである生成AIと半導体。OpenAIの「ChatGPT」やNVIDIAなど米国を中心に盛り上がっているように感じられるが、実は日本でもフロントランナーの1か国として気鋭の企業が続々と生まれている!

日本は生成AI開発に向いている目指すべきは「AI版トヨタ」

松原 仁さん元東京大学大学院教授、
現京都橘大学教授
松原 仁さん
1959年東京都生まれ。AI研究に従事し、コンピューター将棋などでその進化にアプローチ。『AIに心は宿るのか』(集英社インターナショナル)など著書多数。

技術力でも他国に劣らない日本が巻き返すチャンス

「生成AIの登場は、馬車に代わって自動車が登場した時と同じくらい大きなインパクトがあります。使えば圧倒的に移動が楽になるように、人がこれまで行なっていたことを代替できます」(松原仁教授)

 例えば長蛇の列になりがちな駅の切符売り場で考えてみると……。

「AIに希望を伝えて切符を買うくらいなら技術的に今でも可能です。ChatGPTのような何を聞いても答えてくれる汎用AIと違い、切符売り場だけで使うAIなら認識すべき語彙も少しで済みます」

 こうした生成AIの可能性をふまえ、今年2月に経産省は生成AIの開発力強化に向けたプロジェクト「GENIAC」を開始。計算資源(多数のGPU)の確保や開発者同士の知見の共有など支援を行なう。松原教授は辛口ながら、これを歓迎する。

「米国や中国では1社に1兆円規模の補助金が出ていますが、日本は数百億円を数社で割る程度。今の日本の立ち位置を痛感しますが、政府の『国産AIを育てよう!』という危機感は伝わってきます」

 なぜ国産にこだわるのだろうか。

「ChatGPTやGPT-4は日本語を英語に翻訳して処理しますが、日本語で入力・処理するほうが精度は高まります。また海外製に頼ったら安全保障分野でも利用しにくく、もし突然『今後は1問当たり5万円です』などと言われたら民間企業も大打撃を受けてしまいます」

 最後に松原教授に今後伸びる企業と未来への展望を聞いた。

先述の切符売り場のAIのように範囲が限られたAIを創る会社が伸びると思います。また、日本はAI開発に向いた風土があります。著作権法上、データを作った人に許可を得ず無報酬で機械学習に利用してよく、技術力でも他国に劣らない。しかも日本人はAIに対して前向きなイメージを持つ人が多く、普及しやすいはず。このチャンスを生かし後発ながらも世界のトップとなったトヨタの〝AI版企業〟が育つといいですね」

NVIDIA、Googleから資本を受ける
若き英才が見据える世界

岡田陽介さん株式会社ABEJA
代表取締役CEO
岡田陽介さん
1988年生まれ、高校でCGを専攻し文部科学大臣賞を受賞。2012年にABEJAを起業し、23年に東京証券取引所グロース市場上場。政府有識者委員会も歴任。

ABEJA独自のAIプラットフォーム「ABEJA Platform」を基盤に300社以上に上る顧客企業のDXを支援。2023年には生成AIのひとつ、大規模言語モデルを「ABEJA LLM Series」として商用化。

AIと生きる未来を日本から創り出す

 上で紹介した経産省の生成AI支援「GENIAC」。採択された企業の中で期待を集めるのが、2012年に米国・シリコンバレーから帰国し、世に先駆けAIの社会実装に奔走してきた岡田陽介社長率いるABEJAだ。同社は早い段階からディープラーニングを用いた店舗解析プラットフォームを提供し、デパートやコンビニなどの売り上げ向上やコスト削減を可能にした実績を持つ。

今は業界に先駆け、ミッションクリティカルな分野=間違いを起こせない分野にも実装を進めています。例えば三菱ガス化学さんのプラントの保全業務です。配管の写真を保安員の方が目視で確認するのですが、先にAIが明らかに『問題ない/ある』と判断できる画像を除き、残りを人間が確認することで作業量を激減させています

 生成AIのひとつ、大規模言語モデルについても、18年にグーグルが『BERT』(※)を発表した時から「商用ニーズが中期的に高まる」と考え、研究開発を進めてきた。

22年には日本語に特化したモデルをプライバシー保護や情報漏洩リスクにも対応させ、提供しています。仮に医療の現場であれば、LINEで症状や体温を伝えればAIが『この病気かも』とスクリーニングする、といったことも可能になります。すでに業務の一部を代替する取り組みも始まっています

 さらにロボットが進化すれば、社会は一変するという。

「言語を理解するため、飲食店の料理を運ぶロボットに『お箸ちょうだい』と言えば持ってきてくれる、といった変化が起きます。建築現場や小売店など多くの産業も激変するはず。我々はそんな未来が必ず来ると考えています」

(※)BERT:「Bidirectional Encoder Representations from Transformers」の略称。Googleが2018年に公開した自然言語処理のモデルで、2019年にGoogle検索エンジンのアルゴリズムに採用され、大きな話題となった。

国家プロジェクトでの支援を受ける代表企業

半導体支援

経産省は21~23年度で計4兆円の補助金を確保、長期支援の構えを見せる。現在の半導体工場の誘致・新設ラッシュは目覚ましい。

半導体支援

GENIAC

経産省主導のプロジェクト。「Generative AI Accelerator Challenge」の略。国産生成AIの基盤モデル開発を支援。左テーマを採択。

GENIAC

取材・文/夏目幸明

※掲載している情報は4月25日時点のものです。

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