どんな企業にも、エース社員がいるものです。
エース社員が他の社員の模範になってくれる様な存在であれば良いのですが、そうじゃない困ったケースもあるものです。
例えば、売上を上げている、高い技術力がある、特殊な資格を持っている、しかし、組織のルールを守ってくれない・・・。
管理者からしたら、非常に困る存在です。
そもそも、組織におけるルールとは、なぜ必要なのでしょうか?
昔と今の組織の違い
組織にルールがある様に、一人一人にも常識や当たり前、価値観、人生観と言った個人ルールが存在します。
一昔前は“常識”や“当たり前”と言った言葉で片付ける事が出来た事が、今では難しい時代になっています。
その背景は、単一民族、単一国家、島国と言う特徴から日本と国民性が明確でした。
また、家の中には三世帯が一緒に暮らしている事が通例だった為、祖父母の当たり前が、孫の代まで伝承させる事が容易でした。
しかし、現代の日本は核家族化が進み、多種多様な文化や考え方がインターネットを通じて海を渡って入って来ます。
そうなって来ると、個人のルールも様々になり、当たり前や常識が通用しない時代に突入している訳です。
そう言った、多種多様な考え方を持つ人々が集まり、組織化されているのが、今の会社組織と言えます。
会社組織は『チーム』であって『グループ』ではない
では、会社組織において、ルールは何の為に用意される必要があるのでしょうか?
ルールが必要な理由を考えましょう。
まず皆さんに考えて頂きたい事が、『チーム』と『グループ』の違いです。
両者の違いは何でしょうか?
・チーム:組織の目的達成の為に協力し合う集まり
・グループ:共通の性質を持った集まり
つまり、チームは共通の目的を持ち、それぞれが役割分担をし、機能化された組織であり、組織を勝たせる事が最上位にある集まりである事に対し、グループは個人の気分や感情を優先される集まりと言えます。
では、会社組織は『チーム』でしょうか?それとも『グループ』でしょうか?
この認識が合っていない状況で、上司と部下が向き合ってコミュニケーションを取る事自体が間違っているのです。
私は新人研修をはじめ、一般層に集合研修を行う際には、冒頭で必ずこの質問を投げ掛け、意見を貰い、受講者の皆さんが前提を合わせた上で、研修を始めております。
会社組織は『チーム』です。
『チーム』である以上は勝たなければならない
『チーム』である以上、個人は組織の勝利の為に、機能的に動く必要があります。
機能的に動く為に用意されているもの、それが『ルール』です。
多種多様な人々が集まる組織の前提や基準を整え、価値観を統一し、規律を持たせる為に、『ルール』が設定されます。
どんなに多様性をアピールされても、サッカーをしようと思っている組織に、バットを持って来られたら、一緒にサッカーを楽しむ事が出来ません。
『ルール』を守る価値
『ルール』を守ってくれると言う事は、組織の勝利にコミットして貰う事であり、組織の方向性に合わせると言う意思表示でもあります。
逆に、組織の『ルール』を守ってくれないと言う事は、組織の勝利に無関心であり、組織の方向性に合わせるつもりが無いと言う意思表示になります。
組織が大切にしようとしている事を大切にしてくれない存在を、組織は大切に出来るでしょうか?
答えはNoです。
簡単な例をお話します。
交通ルールを守っているAさんと、交通ルールを守っていないBさんが、車を運転している中で正面衝突をしました。
国から護られるのはどちらでしょう?と聞かれたら、誰もが迷わずAさんと答えるでしょう。
条件を加えます。
無職で納税していないが交通ルールを守っているAさんと、会社経営していて年間数千万の納税をしているが交通ルールを守っていないBさんが、車を運転している中で正面衝突をしました。
国から護られるのはどちらでしょう?と聞かれたら、これも答えはAさんになります。
では、新入社員で会社に貢献はこれからですが、組織のルールを守っているAさんと、ベテラン社員で会社に大きく貢献しているが、組織のルールを守っていないBさんが、業務上で事故を起こしました。
会社から護られるのはどちらでしょう?と聞かれたら、答えがAさんにならなければおかしいです。
ルールを作ると言う事は、ルールの下に全ての存在は平等でなければなりません。
ルールを守ると言う事は、組織から護られると言う事
組織に所属していないのであれば、組織のルールを守る必要性はありません。
しかし、組織に所属する以上は、組織のルールを守る必要性があります。
組織のルールとは、会社の代表や所属長、ルールの設定者が大切にしたいと思っている事です。
当然、そのルールを大切にしてくれる存在は、組織に大切にされる存在と言えます。
逆に、ルールを大切にしてくれないと言う事は、組織を大切にしてくれない存在です。
冒頭でもあった、できる社員であったとしても、ルールを守ってくれないのであれば、労働力としては優秀だが、組織の一員としては見なす事が出来ない存在と言えます。
よくある相談
コンサルをしていると、「エース社員がルールを守ってくれずに、社内に悪影響を与えている」と相談を受ける事も多いです。
問題は、エース社員のパフォーマンスに依存せざるを得ない状況にある為、次のエース社員の育成を急ぐ事を提言します。
組織のルールに合わせてくれるエース社員が誕生すれば、当然、組織の模範になって貰いたいと思う所です。
そうなると、いよいよ、問題社員のパフォーマンスを落としても支障がなくなる為、管理を強める行動が取れる様になります。
しかしながら、どんな管理者も、部下をぞんざいに扱いたいと思っている方などいらっしゃいません。
出来ることなら、共に組織の勝利の為にコミットし、前進して行きたいと願っているはずです。
まとめ
今回は、できる部下はルールを破ってもいいのか?と言うテーマでしたが、本心としては、できる部下ほど、ルールを遵守して貰いたい所です。
組織で大切にしてくれる事を大切にしてくれおり、ハイパフォーマーな方は、組織は絶対に放ってはおきません。
いずれ、来るべき時に引っ張り上げられ、更に自分の影響力を組織に注ぐ立場になられる事でしょう。
是非とも、組織のルールに合わせて足並みを整え、他の社員の皆さん達の模範になる事で、組織の外部からの評価を上げる事に貢献して頂ければ幸いです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
文/尾崎幸一朗
この記事はマネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」による寄稿記事です