子育ての終了、役職定年、親の介護、健康不安……。自分の「これから」に向き合うきっかけは、人それぞれ。連載【セカステReal】では、自分らしい生き方を模索し、セカンドステージに歩を進めたワーキングウーマンたちの奮闘、葛藤、感動のリアルストーリーに迫ります。
【セカステReal #01】後編
カフェ運営で、ご近所ネット―ワークをさらに育む(Tさん・68歳)
profile
1955年生まれ、東京在住。大学卒業後、編集プロダクションに勤務し、食の編集者として活躍。50歳代から町内の「まちづくりの会」に参加。退職後、2017 年から地域のコミュニティスペースの提供と「まちづくりの会」の活動資金を確保するため、自宅を開放してカフェをオープンし、現在に至る。趣味はご主人とのサイクリング。ジムに通いつつ体力をキープ。旅に出るのも意欲的に行っている。
カフェと「まちづくりの会」が程よくリンクする
東京都練馬区在住のTさんは、現在68歳。食関連の編集プロダクションに勤務していた50代のころから、地元住民で立ち上げた‶まちづくりの会〟に参加。その活動がきっかけとなって、現在は自宅を開放して会のメンバーたちと、月6~7回、カフェを開いています。それ以外の日々は、Tさんと同じくセカンドステージに立つご主人と旅行をしたり、お孫さんの面倒をみたりと充実した日々。後編では、カフェを現在まで運営できた秘訣や、カフェの運営から得られた喜びについて伺います。
――開店からすでに7年続いているのはすばらしいことだと思います。
T:途中、コロナ禍などもあったので丸々7年間というわけではありませんが、なんとか続いていますね。開店当初は、ご近所の方たちの利用が少なくて、近くにあった会社の方たちがランチで利用してくださったので大いに助かりました。でも、現在はお客様のほとんどが地域住民の方々で、うれしいことにリピーターの方が多いんですよね。
カフェがこれまで継続できたのは、「まちづくりの会」が主催する定期イベントが大きく影響していると思います。カフェで夏に行う「縁日」や春先の「おもちつき」には、子ども連れのパパやママたちが気軽に来てくれまして、そうした方たちがカフェにも足を運んでくれるようになって、贔屓にしてくれているんですよね。ココがどんな場所なのか、どんな人たちが運営しているのかがわかると、皆さん安心なさるみたいなんです。
店員は私を含めて祖父母世代ばかりですので、子どもが来店すると、まるで孫の面倒をみている状態(笑)。いっしょに遊んだり、あやしたりすることがほとんどで、ワンオペで子育てをしているママからは「ここだとゆっくり食事ができてうれしい」と言ってくださる方もいます。
また、お子さんたちも私たちの顔を覚えてくれていて、道端で会ったとき、ニコッと笑って挨拶をしてくれるんです。それが、この活動をしてきてよかったと、何より思う瞬間です。
夏の「まあるの縁日」。子どもは参加費100円。赤字はカフェの売上から補填している。
住民同士のネットワークが続くことを願う日々
――これまでの道のりを振り返って、現在のお気持ちを聞かせてください。
T:今後、カフェをいつまで続けていくのかが気になっているところですね。店員の中では私がいちばん若いんですよ(笑)。自宅を開放しているので、私たち夫婦が老いたら閉めざるを得ないかもと思っています。でも、ここまで住民の方々と絆ができたので、それが途絶えてしまうと残念だと思うんですよね。
「まちづくりの会」には参加してよかったと本当に思っています。会のメンバーとの絆ができたことはもちろんですが、会の活動をすることで、地元で多くの知己を得られたことにとても満足しています。例えば、昔、子育てをしていたときPTA活動でつながりがあった方と再会したり、通常では知り合えないような方と顔見知りになれたりとか、人間関係が豊かになったんですよね。
カフェを訪れたお子さんが、同じく来店していたおじいちゃんと知り合いになって、「おじさんも君と同じ学校へ通っていたんだよ」なんていう会話を聞くと、いいなあと思うんですよね。このふつうの「くらし」をずっと続けていけたら幸せですね。