権藤悠さんは「仕事ができる人とは、解像度が高い人である」と主張している。解像度が低い人は、視力が弱い人がメガネ無しで見るぼやけた世界のように、思考があいまいの状態であり、解像度が高い人は物事が細かく見えていて、鋭い洞察を持ち、難しい話を分かりやすく伝えることができると言う。
権藤さんは現在、コンサルティング会社を経営。デトロイト トーマツ コンサルティングで約3000社のコンサルティングを行い、延べ1万人以上のビジネスパーソンと仕事をしてきた経験がある。出会った多くのビジネスパーソンに共通していたのが、思考が明快で細部まできれいに明確に見えている、すなわち解像度が高い人だった。どうしたら解像度が高く、仕事ができる人になれるのか、今回は権藤さんが教えてくれる、解像度が高い人になるための3つの手法を紹介しよう。
■その1 具体化思考力を鍛えて、物事が細かく見える人になる
画像を構成する要素、すなわち画素数が多くなればなるほど、画像は精細となる。同様に物事の理解が不十分だったり、考えが粗く、具体性に欠ける人は具体化思考力を高めることで、解像度を上げることができる。
権藤さんが提唱する具体化思考を加速させるコツは、「比べて、違いを問う」訓練をすること。新刊書「「解像度が高い人」がすべてを手に入れる」(SBクリエイティブ発刊、定価1600円+税)では、具体例としてアクエリアスとポカリスエットを比較しながら具体化する訓練について紹介している。
2つの飲料の成分を比較すると、ポカリスエットはカロリーが高く、炭水化物含有量も多く、カルシウムが含まれる。一方、アクエリアスはマグネシウム含有量が2倍でイソロイシン、バリン、ロイシン(BCAAと総称される、運動時のエネルギー源となる必須アミノ酸)が表示されている。つまり、汗をかいた後の水分補給に役立つ点では二つはほぼ同じだが、ポカリスエットの成分は体調不良時の発熱による汗のものであり、アクエリアスの成分は激し運動の後の体温上昇による汗に効くということがわかる。
具体化思考は、こうした同じような事柄を比べて違いを問うことを意識することで、具体的に考える「具体化思考」が身に付く。
■その2 抽象化思考を鍛えて、ユニークで深い洞察が得られる人になる
抽象というと、「話が抽象的でわかりにくい」という悪い意味で使われることが多い言葉だが、もともとの意味を辞書で調べると、「個々の物事の本質・共通の属性を抜き出して、一般的な概念と捉えるさま」と掲載されている。
権藤さんも、抽象化とは違うもの同士の共通点を見つけることだと言う。例えば「東京都」「埼玉県」「千葉県」の共通点は何かを考えると、「関東甲信越」という答えが出てくる。次に「関東甲信越」「東北」「東海」「北海道」の共通点とは何かというと、「東日本」となる。こうして、物事を俯瞰で見て、それぞれの共通点を問うことで、抽象化思考を養うことができる。
この抽象化思考力を身に付ければ、物事の背景に隠れた成功法則を見つけ出す力が得られる。すなわち、ユニークで深い洞察が得られる人になることができると考えた。解像度が高い人はこの抽象化思考力が高い人だと言う。
新刊書で権藤さんは共通点探しトレーニングを提案して、「砂漠のオアシスと図書館の共通点は何か?」といった問題を出して読みながら解決し、抽象化力を高めることができるようにした。