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【ヒット商品開発秘話】累計22万本も売れたアダストリア「LAKOLE」のペットボトルホルダー

2024.06.06

■連載/ヒット商品開発秘話

 暑くなってくると冷たいペットボトル飲料を持ち歩く機会が増える。ただ、そのうちぬるくなってしまったり、ペットボトルの表面に結露が発生しカバンの中のものを濡らしてしまったりすることがある。

 こうしたことを防ぐのがペットボトルホルダー。高い人気を誇っているのが、ライフスタイルブランド『LAKOLE(ラコレ)』から発売されているもの。2024年3月末時点で累計22万本以上が売れている。

 2021年4月に発売されたLAKOLEのペットボトルホルダーは、保冷と結露防止だけではなく保温効果もあり、1年を通して使うことができる。500~650mlまで対応し、ストラップ付きと折りたたみハンドルを装備した2種をラインアップ。500~700mlまで対応するBigペットボトルホルダーも用意されている。

ハンドルタイプ。グレー、ブラック、アイボリー、カーキ、イエローの全5色をラインアップしている。イエローは2024年2月、カーキは4月に店頭展開が始まったばかり。価格は1100円(税込)

デザインにこだわった大人のおしゃれアイテム

『LAKOLE』を展開しているのは『GLOBAL WORK(グローバルワーク)』や『niko and …(ニコアンド)』『LOWRYS FARM(ローリーズファーム)』などを展開するアダストリア。

ペットボトルホルダーとBigペットボトルホルダーは全国82店舗(2024年5月末時点)のほか、アダストリアの公式ウェブストア『.st(ドットエスティ)』を始めとしたECサイトでも販売されている。

 ペットボトルホルダーが企画されたのは2020年の春から夏にかけて。猛暑が続いたことなどから、似たようなものが発売され始めた頃だった。

 ラコレ営業部 マネジャーでMDの川目秀紀さんは、ペットボトルホルダーの企画理由を次のように明かす。

「夏に飲みたくなる炭酸飲料など水筒に入れられないものもありますし、冷たい飲み物は冷たいまま最後まで飲み切りたいという声も多いです。また、カバンに冷たい飲み物を入れると結露によって中のものが濡れてしまうことを何とかしたいこともあり企画しました。つくるに当たり、デザインにこだわることにしました」

 デザインを重視することにしたのは、大人がおしゃれアイテムとして持てるものにしたかったため。当時市場に出回っていたペットボトルホルダーの中には、ショッキングピンクや蛍光色といった派手な色使いをしたものも見受けられた。LAKOLEの商品は基本的に、モノトーンやおとなし目の色使いをするので、こうした色使いをすれば大人のおしゃれアイテムとして使ってもらえると判断した。

市販ペットボトル飲料の95%に対応

 ペットボトルホルダーのカラーとして着目したのが、全体的にくすみがかったニュアンスカラー。市場にはまだなかったことが理由になった。

 全体のデザインは、シンプルそのものを心がけた。「男女問わず誰でも使えるよう、主張はあまり強くないけど、ペットボトルホルダーだということがわかるものにすることにしました」と川目さん。まず考案したのがストラップ付きだった。

 開発・製造を担ったメーカーが市販のペットボトル飲料とのフィット感にこだわって開発。金型を繰り返し修正することになったが、最後は金型が破損しつくり直したほどだった。

「当時市販されていたペットボトル飲料の95%は対応できるようにしました。どんなペットボトルにもほぼ対応できるようにしたのは、一緒にものづくりをしているメーカーとこだわったところです」

 このように明かす川目さん。当時市販されていたペットボトル飲料がピッタリはまるサイズ感にしたことに加え、上から閉めたフタでグッと押さえるようにしたことで、中でペットボトル飲料がグラつかないようにした。

 上から押さえられるようになっているのは、ペットボトルの首回りに熱可塑性エラストマー製のパッキンが触れるため。フタの素材はポリプロピレンだが、熱可塑性エラストマーはポリプロピレンより柔らかい。柔らかいのでペットボトルの首にフィットしやすいことから、閉め込んだ時の力によって上からグッと押さえ込まれ、ペットボトルの形状や高さが変わってもしっかりホールドされる。

フタを裏から見たところ。中央にはめ込まれているリング状のパーツが、熱可塑性エラストマーでできたパッキンになる

 上からガッチリ押さえ込んでホールドすることのメリットを、ラコレ営業部 バイヤーの西澤円香さんは次のように話す。

「聞いた話になりますが、他社のペットボルダーの中にはホールド力が弱く飲む時に中から取り出さないと飲めないものがあるそうです。しかしこれは、上からガッチリ押さえるのでペットボトルがしっかりホールドされますから、開けて取り出すことなく飲むことができます」

アダストリア
ラコレ営業部 マネジャー/MD 川目秀紀さん
ラコレ営業部 バイヤー 西澤円香さん

 結露が発生しないのは、魔法瓶やマグボトルと同じ真空断熱二重構造を採用したため。内側と外側の間に設けられた真空層が外気温を遮断するので、結露が発生しない。魔法瓶やマグボトルと構造が同じだから、保冷と保温ができる。

テレビ番組で保冷効果を実証

 川目さんはペットボトルホルダーを便利だとは思いつつも「本当に売れるのだろうか?」と疑っていた面があった。500mlぐらいであれば冷えているうちに飲みきってしまい、使ってもらえるイメージがわかなかったためである。

「発売初年度は1万本売れればいいと思っていました」と振り返る川目さんだが、2021年の販売実績は約2万本。猛暑により飛ぶように売れ、計画を大幅に上回った。

2021年4月に発売されたストラップ付き。カラーはグレー、ブラック、ピンク、アイボリーの4色で、現在は『.st』をはじめとしたECサイトでのみ販売されている。価格は1100円(税込)

 売れ行きから手応えを得たことで、翌年からは増産。2022年は約6万本、23年は10万本つくったが、どちらも猛暑などにより完売した。23年は3万本追加生産し最終的には13万本つくったが、追加生産分も売り切った。

 メーカーと調整し需給のコントロールを担っていた西澤さんは次のように明かす。

「2023年は夏が長引いたので、9月になっても需要がありました。当初計画は達成し全部売りきることができましたが、8月には全部売り切ってしまい9月以降の需要には対応できませんでした」

 2023年は、7月に約6万本、8月に2万7000本売れている。この年の年間販売実績の大半を、この2か月で挙げている。

 これほどの好成績を2023年に残せたのは、猛暑以外にも2つの要因がある。

 1つが7月にテレビの情報番組で取り上げられたこと。TBS系列で放送されている朝の情報番組『THE TIME,』などで取り上げられた。

『THE TIME,』では実際に検証を行ない、ペットボトルホルダーに入れて6時間後も冷たいことを実証。取材を受けた店舗では放送当日、普段は訪れることがない40代、50代の人たちが買い求めに訪れたほどだった。

 もう1つがハンドルタイプの発売。同年3月に発売されたハンドルタイプは、水筒でもハンドル付きのタイプが増え始めたことなどから開発。ハンドルが折りたためるのが特徴だ。

 ハンドルを折りたためるようにしたのは、収納性を良くするため。折りたためばバッグに入れやすくなるうえに、他の荷物が入れやすくなる。また、ストラップ付きに「ちょっと重い」といった声があったことから、少し軽量化した。

 テレビで紹介してもらった以外にも、インフルエンサーを起用してSNSで紹介してもらうこともした。しかし、SNSに関しては2022年頃から、起用したインフルエンサーもさることながら、依頼していないインフルエンサーやユーザーが自発的に紹介するケースが目立った。意図しない形で、SNSで知名度が広がっていった。

断熱効果を落とすことなく薄くつくったBigペットボトルホルダー

 そして2024年2月に、Bigペットボトルホルダーが発売される。

Bigペットボトルホルダー。カラーラインアップはハンドルタイプに同じ。価格は1650円(税込)

 企画されたのは2022年。ペットボトル飲料の大容量化が進んだことからつくることになった。川目さんは次のよう話す。

「猛暑や地球温暖化などから、市販のペットボトル飲料の容量が増えてきました。大手の清涼飲料メーカーからは700mlが登場するなど、ペットボトル飲料の大容量化がこの2年ほどで進んでいます」

 その結果、市販のペットボトル飲料の95%は対応できたペットボトルホルダーでも対応できないものが増加。対応するものが70%程度にまで下がってしまった。

 Bigペットボトルホルダーの機能はペットボトルホルダーと同じ。大きくなるので普通につくると重くなってしまうことから、胴を薄くした。断熱効果を落とすことなく薄くつくることが開発で苦心したところだった。

ペットボトルホルダー (左)とBigペットボトルホルダーの胴体比較。直径が異なるのは目視ではっきりわかるが、よく観察するとBigペットボトルホルダーはペットボトルホルダーよりやや薄くつくられていることがわかる

 また、Bigペットボトルホルダーにはスペーサーが付属。本体に入れると、背の低い500ml入りペットボトル飲料でも使えるようになる。

Bigペットボトルホルダーに付属しているスペーサー

取材からわかったペットボトルホルダーのヒット要因3

1.使い勝手がいい

 入れたまま飲むことができる、バッグに入れる時ハンドルが折りたためる、といった普段使う際に便利な工夫が盛り込まれている。同種の他の商品と比べ使い勝手が良く支持を集めることができた。

2.高見えする割に安価

 価格は税込1100円(Bigペットボトルホルダーは1650円)ながら、結露しない、保冷と保温ができると機能性が高いことに加え、大人が持っていても違和感がないデザインを採用。もっと高くても不思議ではないのに安価に抑えられている。

3.年齢性別関係なく広く使ってもらえる

 誰もが買い求めるペットボトル飲料と一緒に使うものなので、特定の層が使うものではない。機能やデザインも特定のターゲットを想定したものではなく広く使ってもらえるものになっている。

 気象庁が発表した2024年6月~8月の3か月予報によると、気温は全国的に平年より高く、例年以上に厳しい暑さが予想されている。熱中症を予防するマメな水分補給のためにも、外出先のコンビニで冷たいペットボトル飲料を買う機会も多くなるだろう。

 2024年の販売計画は21万本。6月には季節限定色のライトブルーが発売になる。猛暑が予想されているので、順調に売れることが予想される。

ペットボトルホルダーのハンドルタイプとBigペットボトルホルダーに追加される季節限定色のライトブルー

製品情報
https://www.dot-st.com/lakole/disp/itemlist/?dispNo=002005006

文/大沢裕司

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