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65歳の定年延長義務化はいつから?2025年4月の高年齢者雇用安定法改正に「労働者」が備えておくべきこと

2024.07.22

日本では急速な高齢化が進み、労働環境も大きく変化している。その中で高齢者の雇用問題も重要な課題となっている。

60歳で定年を迎えても、その後も働き続けなければ生活維持が困難な状況に置かれる人が増えているのが現状だ。社会保障制度の抜本的な見直しが求められる中、高齢者の就業支援は喫緊の課題となっている。

このような社会状況の中、高齢者の雇用に関する法律の改正が進んでいる。法改正により、労働者一人ひとりが自身のライフプランを見直し、準備をしていく必要があるだろう。

本記事では、高年齢者雇用安定法の改正ポイント、そして改正により労働者が注意すべきポイントを解説する。

65歳の定年延長の義務化とは

65歳の定年延長の義務化とはどのようなものか解説する。

■65歳の定年延長の義務化の概要

高年齢者雇用安定法第9条では、企業が65歳未満の定年制を設けている場合、従業員の65歳までの雇用を確保するため、次の3つのいずれかの措置を講じる義務を規定している。

  1. 定年年齢の引き上げ
  2. 継続雇用制度の導入
  3. 定年制の廃止

※出典:e-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」

最も重要なポイントは、「定年延長の義務化」ではなく「雇用確保措置の義務化」という点である。必ずしも定年が延長されるわけではないので注意が必要だ。

企業は従業員が希望すれば65歳までの雇用を確保しなければならないが、そのための措置として上記の3つのいずれかを選択すればいいわけだ。定年年齢の引き上げにより、65歳定年制を採用する企業もあれば、継続雇用制度を導入する企業もある。

厚生労働省の公表する令和5年の「高年齢者雇用状況等報告」によれば、雇用確保の措置別の内訳は以下の通りだ。

定年年齢の引き上げ

26.9%

継続雇用制度の導入(再雇用など)

69.2%

定年制の廃止

3.9%

これを見ると、継続雇用制度の導入措置を講じる企業が大半だとわかる。

自身の勤めている企業がどのような雇用確保措置を講じているかは、就業規則を確認する必要があるだろう。

出典:厚生労働省 令和5年「高年齢者雇用状況等報告」集計結果

■高年齢者雇用安定法の改正ポイント

高年齢者雇用安定法の雇用確保措置として規定された継続雇用制度には、その対象者を労使協定により限定できる経過措置が設けられている。この経過措置は、2025年3月末を持って終了し、2025年4月からは、希望者全員が継続雇用制度の対象となる。

ここでは、改正の影響が大きい継続雇用制度について、労働者が注意すべきポイントを解説する。

ポイント1:再雇用の場合「正社員」とは限らない

継続雇用制度には、「勤務延長制度」と「再雇用制度」の2種類がある。「勤務延長制度」は、定年を迎えても退職せずに引き続き勤務できる制度だ。退職しないため、雇用条件は定年前と変わらない。

一方、「再雇用制度」は、定年退職後に労働者が再度雇用契約を結ぶ制度である。この場合、雇用条件が変わることがある。例えば、パートタイマーや嘱託社員として再雇用されたり、労働契約の期間が1年ごとの更新になったりと、正社員とは異なる労働環境に置かれるかもしれない。

勤務延長制度と再雇用制度では、労働条件の変更が伴うか否かが大きな違いだ。自社が継続雇用制度を導入している場合、どちらの制度を採用しているかは就業規則を確認しよう。

ポイント2:賃金額が低下する可能性が高い

定年前と同様の仕事内容であれば、賃金も定年前と同じ額が支払われるのが原則だ。しかし、2023年に、定年退職後の再雇用の際に基本給を減額したことの妥当性が争われた訴訟では、最高裁が「再雇用の場合は役職に就くことも想定されないことなどから「正社員とは異なる性質や支給の目的がある」と述べている。

一般的には、再雇用される場合、仕事内容が見直され、正社員の際に支給されていた役職手当等が外され、賃金の減額が行われるケースが多い。平成24年の厚生労働省「継続雇用後の給与水準の変化」によれば、継続雇用後に給与が20%以上減少した労働者は実に約77%に上る。

出典:厚生労働省 4.高年齢者の継続雇用の現状と課題

ポイント3:高年齢雇用継続給付の縮小

定年退職後に再雇用された高齢労働者の賃金減少に備えて、「高年齢雇用継続給付金」制度がある。この制度は、再雇用時の賃金が60歳時点の75%未満に下がった場合、一定額の給付金が支給されるものだ。給付率は賃金下げ幅によって変わり、60歳から65歳まで支給される。

2025年4月からは、制度の給付率が以下の通り改正される。

従来

2025年4月以降

給付率

賃金の最大15%

賃金の最大10%

今回の改正の背景には、65歳までの雇用確保が義務化されたことで、高齢者の賃金減少幅が小さくなると見込まれていることがあげられるだろう。

継続雇用制度を選択することによって、自身がどのような利益を得られ、どのような不利益があるか、じっくりと検討してほしい。

出典:厚生労働省「高年齢雇用継続給付の見直し」

【ライフプランニング】労働者が注意すべき3つのポイント

60歳以上も働き続けることがスタンダードとなる昨今、労働者一人ひとりが自身のライフプランを考え、準備をしていく必要がある。その際、注意すべきポイントを3つ紹介する。

■健康管理の徹底

65歳まで働き続けるには、何より自身の健康状態を良好に保つことが不可欠である。定期的な健康診断の受診や、生活習慣の改善に取り組むことで、体調管理を徹底しなければならない。

ストレスケアやメンタルケアにも留意し、心身ともに健康な状態を維持することが重要だ。そのためには、常日頃から自身の健康管理に力を入れていくことが欠かせない。

■支出の見直し

60歳以降は賃金額が減少することを考慮し、無駄な出費を避けることが重要である。60歳以降の賃金は一般的に減少する傾向にあることは先に述べた。このこと念頭に置き、年金や貯蓄、保険などの資産運用を見直し、生活費の試算を行う必要がある。

具体的には、住宅ローンの返済や子どもの教育費など、これまでの大きな支出項目について、60歳以降の収入減に合わせて見直していくことだ。無理のない範囲で支出を抑え、余裕資金を確保することで、安定した生活を送れるはずである。

■世代を越えたコミュニケーション力をつける

高齢で再雇用される際、上司や同僚が若手社員となるケースが多い。年下の上司に対しては、世代間ギャップからコミュニケーションの齟齬が生じてしまう可能性は否めない。

世代を超え、円滑なコミュニケーションを図るには、双方が相手の価値観や行動様式の違いを理解し、柔軟に対応することが求められる。年下の上司に対して、年齢差を理由に先輩意識を強く押し付けたり、自身の経験を盾にして押し付けがましい言動をとるのは避けるべきだ。

まとめ

高年齢者雇用安定法の改正により、企業に65歳までの「雇用確保措置」の実施が義務付けられた。定年が一律65歳に引き上げられるわけではないが、企業は様々な形で65歳までの雇用を確保する必要がある。

多くの企業が採用しているのが、再雇用による「継続雇用制度」だ。しかし、再雇用時には賃金の減少が伴うのが実情である。

このような環境変化の中では、労働者一人ひとりが自身のライフプランを見直し、準備を進めていく必要があるだろう。健康管理や、支出の見直し、世代間コミュニケーションの強化など、様々な取り組みが求められる。

今後、企業と労働者が互いに連携しながら、より良い働き方を見出していくことがますます重要になってくるだろう。

文/ほりいともこ

事業会社の経理職として20年以上勤務。幅広い業種や企業規模の経理業務に携わる。現在も経理職として勤務しながら、ビジネス・経理分野のライターとして活動中。

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