大手玩具メーカーのタカラトミーが快進撃を続けています。
2024年3月期は期首予想を大きく上回る2桁増収で着地しました。今期も1割増収を予想しており、4期連続で2桁成長する公算が高まりました。
好業績の立役者となっているのが連結子会社タカラトミーアーツ。カプセルトイの「ガチャ」で成長をけん引しています。
ただし、カプセルトイ市場は過熱していることも事実。次なる成長に期待をかけているのが海外です。特にベイブレードのアメリカ攻略がカギとなるでしょう。
不調の海外を日本エリアがカバーする構図鮮明に
タカラトミーの2024年3月期の売上高は、前期比11.2%増の2083億円。期首予想は同4.1%増の1950億円でしたが、見込みを大きく上回っての着地となりました。
2025年3月期の売上高は前期比10.4%増の2300億円を予想。タカラトミーは保守的な予想を出すことが多く、過去3期に渡って売上高の上方修正を行っています。
従来通りであれば、期首予想を上回る可能性が高いといえます。
利益面でも堅調。2024年3月期の営業利益は前期比18.1%増の98億円。営業利益率は4.7%で、前期から0.3ポイント高まりました。
※決算短信より筆者作成
タカラトミーはアメリカとヨーロッパ圏で苦戦しており、両エリアで利益が出ていません。2023年3月期の営業利益は前期比8.8%減の83億円でしたが、これは主に海外において物流費高騰などの影響を受けて赤字へと転落したため。
2024年3月期も2エリアは赤字でした。それにも関わらず利益率を高めたのは、主力の日本で増収効果が大きく働き、それに伴った増益効果を得られたためです。
2024年3月期の日本エリアの売上高は前期比14.8%増の1700億円、営業利益は同35.1%増の222億円でした。
推し活で急拡大するカプセルトイ市場
タカラトミーは長らく停滞していました。2008年3月期の売上高は1924億円。売上高は中期的な下降曲線を辿り、コロナ禍を迎える前の2019年3月期は1768億円でした。
救世主となったのがタカラトミーアーツでした。この会社はカプセルトイ、食玩などを手掛けています。
2008年3月期と2024年3月期の売上を比較すると、主力のタカラトミーは12%の増加に過ぎません。しかし、タカラトミーアーツグループ全体の売上高は3倍以上に拡大しています。
※決算説明資料より
国内のカプセルトイの市場拡大は目覚ましいものがあります。日本カプセルトイ協会によると(「カプセルトイ市場動向調査 令和5年度(2023年)結果報告」)、2023年の市場規模は1150億円。2022年比で実に1.6倍に拡大しています。
市場拡大の背景の一つに“推し活”と呼ばれる日本独自の文化形成があるでしょう。
キャラクターグッズなどを手掛けるハピネットはカプセルトイに関連する、20代から60代の消費者調査を行っています(「カプセルトイの大人需要実態調査」)。それによると、全年齢平均で3割以上が大人になってからカプセルトイ購入経験ありと回答しており、幅広い年齢で支持されていることがわかります。
好きなカプセルトイに対する回答では、キャラクターが65.0%でトップ。次いでフィギュアが34.1%となっています。子供が好む乗り物は15.0%で高くはありません。
カプセルトイは子供への需要が底堅くありますが、その上に大人の推し活要素が加わって市場が急拡大したと見ることができます。
タカラトミーアーツは女性に人気の「ハイキュー!!」のカプセルトイを手掛けています。子供向けのトミカ、アニア、シンカリオンなどに、大人向けのキャラクターグッズを加えたことにより、市場拡大の波に乗ることができました。