この1年でアルバイト・パートの時給相場は、どれくらい上下動したのだろうか?
リクルートの調査研究機関「ジョブズリサーチセンター(JBRC)」はこのほど、「2023年度(2023年4月~2024年3月)アルバイト・パート募集時平均時給調査 年間まとめ」を発表した。
過去最大の上げ幅となった最低賃金の改定や、春闘の影響で上昇傾向が続いた1年
2023年度(2023年4月~2024年3月)の年間における募集時平均時給(全国)は、2022年度(2022年4月~2023年3月)と比較して30円増加の1,125円(増減率+2.7%)となった。2021年度(2021年4月~2022年3月)から2022年度にかけては、一時的に平均時給が低下した月があるものの、全体としては上昇傾向にあった。
2023年度においても上昇傾向が続いており、コロナ禍前の水準を大きく超えている。全国加重平均で前年度+43円の引き上げとなった2023年10月の最低賃金改定や春闘も影響し、2024年2月度には過去最高額を更新する1,151円(前年同月比+4.5%)となった。
人材不足が進む中、企業側が人材を新たに確保するためには、賃金の見直しだけではなく働き手に寄り添った多様な働き方を用意する工夫が必要となってきている。例えば主婦・主夫、シニア、学生など、働き手によって希望する勤務時間や勤務日数などは大きく異なる。
そのため、働き手に合わせて業務を切り出し2~3時間の仕事を作るといった工夫や、「アクティブに働きたい」「黙々と作業したい」などの個人の希望に合わせて、担当してもらう業務を変える取り組みなども効果的だ。
また、既存従業員の定着率向上も重要。長期的な就労を見据え、主婦・主夫が子供の成長に合わせて勤務時間を変えることのできる仕組みを作ったことで、離職率が改善した事例などもある。このように長く活躍できる仕組み作りが今後ますます求められるだろう。
解説/ジョブズリサーチセンター長・宇佐川邦子氏
2023年度募集時平均時給(全国)の上昇要因
販売・サービス系:インバウンド需要の回復により空港や宿泊関連業務の動きが活発化、時給も上昇
フード系:慢性的な人材不足の影響により、繁忙月以外でも継続して求人募集が行われ時給も上昇
製造・物流・清掃系:ホテル清掃など需要の高い職種で人材不足感が高まり時給も上昇
事務系:出社回帰による受付需要の増加なども影響し、わずかに時給も上昇
営業系:唯一平均時給が低下※営業系は個別企業の動向により変動しやすいため留意が必要
専門職系:比較的平均時給が高い看護師や塾講師などでも、さらに時給が上昇