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出産手当金が支給されないケースとは?覚えておきたい適用条件と受給期間

2024.07.16

産前産後休暇とは、労働基準法に定められた出産前と出産後の女性労働者に認められた休業のことだ。この産休期間中の従業員の給与を有給にするか無給にするかは、会社側で決められる。

産前産後休暇期間中の給与が無給の場合には、健康保険などから出産手当金が支給される可能性があるのだ。本記事では、出産手当金の概要やもらえないケースについて解説する。

出産手当金とは

産前休暇とは、出産の日(実際に出産した日が予定日後の場合は出産予定日)以前42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から本人が希望した場合に取得できる休暇のことである。

また、産後休暇とは、出産の翌日以後56日目まで本人が希望しなくても取得しなければならない休業期間のことである。

ただし、産後6週間を経過した場合は、医師が就労に支障がないと判断した業務に就くことが可能だ。

出産手当金とは、この産前休暇や産後休暇を取得した日に給与の支払いを受けなかった場合、健康保険から支給される給付のことである。ここでは、出産手当金の概要、出産手当金の適用条件、出産手当金の期間について解説していく。

■出産手当金の概要

出産手当金は、出産のために会社を休んだ日に健康保険から給付される手当のことである。出産手当金が支給されるには、出産のために会社を休んだ日が無給でなければならない。

産前産後休暇中に給与などの賃金が支払われるかどうかは会社の就業規則に定義されているため、働いている会社が産前産後休暇期間中を無給としている場合は、収入が減少することになる。

出産手当金とは、出産のために収入が減少する女性が出産のため休業している間であっても、生活の安定が図れるようにするための制度なのだ。

■出産手当金の適用条件

出産手当金を受けるためには、以下の条件を満たす必要がある。 

・健康保険の被保険者であること

出産手当金は健康保険の給付であるため、勤務先の健康保険の被保険者でなければならない。

・妊娠4か月(85日)以降の出産であること

健康保険では、妊娠4か月(85日)以後の出産(流産、死産、人工妊娠中絶なども含む)を「出産」と定義している。

・出産のために休業していること

出産手当金は、原則出産のために休業していて、その間に会社から給与などの賃金を受け取っていないことが条件だ。

ただし、その間に賃金を受け取っていた場合であっても、受け取った金額が産前産後休暇の前の賃金よりも少ない場合は、その差額分が出産手当金として支給される。

出産手当金は原則として健康保険の被保険者でなけれは受け取れないが、以下の要件をすべて満たしている場合は出産で退職した場合でも出産手当金を受け取ることができる。

  • 退職日から遡って継続して1年以上健康保険に加入していること
  • 退職日が出産手当金の支給期間内であること
  • 退職日に勤務していないこと

■出産手当金を受け取れる期間

出産手当金を受け取れる期間は、出産の日以前42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から、出産日の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間だ。 

実際に出産した日が出産予定日より遅れた場合は、出産予定日が起算日となり、出産予定日から実際に出産した日も出産手当金の支給対象になる。

■出産手当金の支給額

出産手当金の支給額は、以下の計算式で算出される。

1日当たりの出産手当金の金額=支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

出産手当金がもらえない3つのケース

このように、産前産後休暇により会社を休んで、かつその期間の賃金を受け取っていない場合には、出産手当金を受け取ることができる。

しかし、場合によっては出産手当金が受け取れないケースがあるのだ。ここでは、出産手当金がもらえない3つのケースについて、解説していく。

■国民健康保険の被保険者または健康保険の被扶養者であるケース

出産手当金は、会社員やパートアルバイトなどの健康保険の被保険者が受け取れる手当金である。

自営業や個人事業主などが加入する国民健康保険の被保険者は受け取ることができないため、注意が必要だ。

また、会社に勤めていても扶養の範囲内で働いていて配偶者などの扶養に入っている健康保険の被扶養者も、出産手当金を受け取ることができない。

■産前産後休暇期間中に賃金を受け取っているケース

産前産後休暇期間中の従業員に対して会社は給与を支払う必要はないが、中には福利厚生として給与を支払う会社もある。

産前産後休暇期間中に受け取った給与などの賃金の額が出産手当金の支給額よりも高ければ、出産手当金は受け取れない。

■健康保険を任意継続しているケース

健康保険の任意継続とは、一定の条件を満たしていれば退職をした後も退職前の健康保険に継続加入できる制度のことだ。

健康保険の任意継続被保険者は、出産手当金は受け取ることができない。(資格喪失後の継続給付に該当する場合を除く)

※出典:全国健康保険協会「任意継続被保険者の保険給付」

まとめ

健康保険では、産前産後休暇期間中の被保険者の生活の安定を図るため、出産手当金という給付を行っている。しかし、出産のための休暇を取得しているすべての会社員などが、出産手当金を受け取れるわけではない。

産前産後休暇を取得する時に、給与が支給されなくても困らないためにも、出産手当金がもらえるかどうかを知っておくことは大切だ。

また、情報は変更される場合もある。最新情報は会社や各健康保険組合に確認するようにしよう。

※出典:全国健康保険協会「出産手当金について」

※出典:全国健康保険協会「出産に関する給付」

文/小島 章広

信用金庫に8年、システム開発の会社に現在まで20年以上勤務。社会保険労務士・行政書士の資格を保有し、人事労務関係、社会保険関係の記事を中心に6年以上執筆活動を続けている。

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