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勤務先から懲戒解雇の処分を受けると、絶望的な気持ちになる。今後の再就職で不利になってしまわないか、失業保険を受け取るうえで不利な取り扱いを受けないかなど、不安に感じる要素は多くあるだろう。
しかし、懲戒解雇処分を受けても人生が終了するわけではない。問題なく再就職できるうえに失業保険も受け取れるため、立て直すことは可能だ。本記事では、懲戒解雇になり得る具体的なケースや、失業保険・退職金への影響について解説する。
懲戒解雇とは
懲戒解雇とは、社内で重大な問題やトラブルを起こした従業員の雇用契約を解除することだ。以下で、懲戒解雇の定義や内容について解説する。
■懲戒解雇の定義
懲戒解雇とは、使用者が従業員との労働契約を一方的に解除する処分だ。犯罪を起こした従業員や度重なるハラスメントを行っている従業員など、重大な職場規律違反・企業秩序違反を犯した際に実施されるのが一般的だ。
解雇には「普通解雇」「諭旨解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」があるが、懲戒解雇は懲戒処分の一環として行われる。
法令はもちろん、職場内における就業規則に違反した場合も懲戒解雇の対象となり得る。最終的には裁判所による個別具体的な判断が求められるケースもあるが、法令違反や度重なる問題行為を行ったときに、懲戒処分を受ける可能性がある点に留意しよう。
■懲戒解雇と諭旨解雇の違い
「諭旨解雇」も、懲戒解雇と同じく法令違反や問題行動を起こした社員を解雇するときに行われる。
一般的に、諭旨解雇は懲戒解雇に次ぐ重い処分として扱われており、解雇予告手当や退職金を支払ったうえで解雇する流れとなるのが一般的だ。
また、従業員の不祥事や非行があったときにその行為を諭したうえで、従業員の意思により辞表を提出させることも諭旨解雇にあたる。懲戒解雇は即座に解雇する重い処分である一方で、諭旨解雇は自発的な退職を促す点に違いがある。
なお、懲戒解雇の可能性が高い事例としては、以下が挙げられる。
- 重大な経済的損失を会社に与える不正行為や横領を行った場合
- 職場でのセクハラや差別行為を繰り返し行った場合
- 会社の機密情報を無断で外部に漏洩した場合
- 職務怠慢により重大な事故や問題を引き起こした場合
- 会社の方針や指示に反する行為を繰り返し、改善が見られない場合
- 職場での暴力行為や脅迫行為を行った場合
- 会社の名誉や信用を著しく傷つける行為を行った場合
- 法令違反や犯罪行為を行い、会社の信頼を損なった場合
特に問題の度合いが大きい場合は、諭旨退職ではなく懲戒解雇が行われる可能性が高いといえるだろう。
懲戒解雇だと退職金・失業保険はどうなる?
懲戒解雇になると、退職金や失業保険にも影響する。いずれもお金が絡んでくる問題なので、気になる人もいるだろう。
具体的に、どのような影響があるのか解説する。
■懲戒解雇で退職金を受け取れる?
懲戒解雇を受けた場合、退職金を受け取れるかどうかは勤務先の就業規則による。
ただし、一般的に企業では就業規則や労働協約で「懲戒解雇処分を受けた従業員に関しては、退職金を不支給とする(減額する)」旨の定めをしている。
そのため、懲戒処分を受けると退職金を受け取れない可能性がある点には留意すべきだ。勤続年数にもよるが、退職金は数百万円以上になるケースもあるため、経済的な打撃は大きいといえるだろう。
■懲戒解雇で失業保険はもらえる?
懲戒解雇で失業した場合でも、失業保険はもらえる。離職理由が懲戒解雇の場合は、自己都合退職と同じ取り扱いとなる。
つまり、ハローワークで手続きをした日から起算して7日間の待期期間を経たあと、2カ月間の給付制限が付く。通常の解雇の場合は2カ月間の給付制限がないため、失業保険を受け取れるタイミングに違いがある。
ほかにも、通常の解雇と懲戒解雇を比較すると、失業保険を受給できる日数でも差がある。通常の解雇の場合、離職時の年齢や雇用保険加入期間にもよるが、最長で330日分の失業保険を受け取れる。
一方で、懲戒解雇の場合は受給できる失業保険の日数は最長でも150日だ。このように、懲戒解雇では失業保険を受給する際に不利な取り扱いを受ける点に注意しよう。
懲戒解雇されると人生終了?
懲戒解雇されると人生が終了するわけではないが、一般的にネガティブな印象を持たれてしまう点は否めない。
例えば、転職・再就職する際に不利になる可能性が考えられる。再就職する際には履歴書や職務経歴書を提出するケースが多いが、前職の離職理由について尋ねられる可能性があるだろう。
書類選考や面接の場で、経歴を詐称することは許されない。選考の場で虚偽の受け答えをして採用されたあと、何らかの理由で虚偽が発覚すると懲戒解雇を受けるリスクがある。書面では「〇〇株式会社 退職」とだけ記載し、面接の場で離職理由について追及されなければ、結果的に懲戒解雇を受けたことによる不利益は受けない。
しかし、質問されたときに虚偽の受け答えをすると、その後に発覚したとき問題となるリスクがある点は押さえておこう。
文/柴田充輝
厚生労働省にて5年勤務したあと、保険業界へ転職。労働保険全般の事務や助成金関係の事務に携わった経験を持つ。社会保険労務士とFP1級資格を活かして、人事・転職関係や金融関係の記事執筆を行っている。