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評価は個人や組織の成長を測るための重要な手段であり、その手法には絶対評価と相対評価がある。
この記事では、絶対評価と相対評価の違い、学校教育や企業人事におけるそれぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説する。どちらが適しているのか、そしてどのように活用すべきかをみていこう。
絶対評価と相対評価
絶対評価と相対評価は、個人の成果や能力を評価する際の基本的なアプローチとして広く利用されている。
それぞれの評価方法には独自の特徴と利点、欠点が存在し、評価の目的や状況に応じて適切に選択することが重要である。
■絶対評価とは
絶対評価とは、特定の基準に基づいて個人の成果や能力を評価する方法である。
これは、事前に設定された目標や基準に対してどれだけ達成したかを測るものであり、他者の成績には左右されない。例えば、試験において80点以上が「A」、60点以上80点未満が「B」といった具合に、明確な基準が存在する。この評価方法は、達成度が具体的に示されるため、個々の成績が明確に理解できるという利点がある。
絶対評価の具体例としては、資格試験や国家試験が挙げられる。これらの試験では、合格ラインが明確に設定されており、その基準を満たすことで合格となる。また、企業における目標管理制度(MBO:Management by Objectives)も絶対評価の一例であり、個人の目標達成度に基づいて評価が行われる。
■相対評価とは
相対評価とは、個人の成果や能力を他者と比較して評価する方法である。
この評価方法では、全体の中での相対的な位置に基づいて評価が行われる。例えば、試験の得点がクラスの上位10%に入れば「A」、次の20%が「B」といった具合に、全体の成績分布に基づいて評価が決まる。相対評価は、他者との比較により評価がなされるため、競争が生まれやすいという特徴がある。
相対評価の具体例としては、学校の成績評価や企業内のパフォーマンス評価がある。学校では、成績の上位から順にランク付けされることが多く、企業では、従業員の成果が他の従業員と比較されることで評価が行われる。
■絶対評価と相対評価の違い
絶対評価と相対評価の主な違いは、評価の基準が絶対的か相対的かにある。絶対評価は、事前に設定された基準に対して個人の達成度を測るものであり、他者の成績には影響されない。そのため、評価基準が明確であり、公平性が保たれやすい。
一方、相対評価は、他者との比較に基づいて評価が行われるため、全体の中での位置が重要となる。これにより、競争が生まれ、個々のパフォーマンスが相対的に評価される。例えば、ある企業で業績評価を行う場合、絶対評価では設定された売上目標を達成したかどうかが評価の基準となる。一方、相対評価では、同僚と比較してどれだけの売上を上げたかが評価の基準となる。
それぞれの評価方法には利点と欠点があり、目的や状況に応じて適切に使い分けることが重要である。絶対評価は、目標達成度を明確に示すことができ、透明性が高いが、基準の設定が難しい。一方、相対評価は、競争心を促進し、柔軟な評価が可能であるが、過度な競争や評価の不透明性が問題となることがある。
学校教育における絶対評価と相対評価
■学校教育における絶対評価と相対評価とは
学校教育では、生徒の学習成果を評価するために絶対評価と相対評価が用いられる。
絶対評価は、生徒が特定の学習目標や基準をどれだけ達成したかを評価する方法であり、相対評価は、生徒の成績を他の生徒と比較して評価する方法である。
■学校教育における絶対評価のメリット・デメリット
メリット
・透明性の確保:絶対評価は事前に設定された基準に基づいて評価が行われるため、生徒や保護者にとって評価の基準が明確である。これにより、評価結果が納得しやすく、公平性が高い。
・目標達成のモチベーション:生徒は明確な目標に向かって努力することができるため、学習意欲が高まる。特に、自分のペースで学習を進めることができる点が大きな利点である。
デメリット
・基準設定の難しさ:絶対評価の基準を設定することは難しく、教師間での基準のばらつきが生じる可能性がある。これにより、評価の公平性が損なわれることがある。
・競争心の欠如:相対評価に比べて競争心が生まれにくいため、上位の生徒がより高い目標を持ちにくい。生徒間の競争が少ないことで、全体の学習意欲が低下することもある。
学校教育における相対評価のメリット・デメリット
メリット
・競争心の促進:生徒同士の競争が生まれるため、より高い成績を目指して努力する動機付けが強くなる。競争が学習意欲を高め、全体の成績向上に寄与することが期待される。
・全体の中での位置把握:生徒は自分がクラスの中でどの程度の位置にいるかを把握しやすい。これにより、自分の学力レベルを客観的に理解することができる。
デメリット
・過度な競争のリスク:競争が過熱し、生徒間の対立やストレスが増える可能性がある。特に、下位の生徒が自己肯定感を失い、学習意欲を喪失するリスクがある。
・一部の生徒のモチベーション低下:下位の生徒が自分の位置に絶望してしまい、学習意欲を失うリスクがある。これにより、学習格差が広がることが懸念される。
企業人事における絶対評価と相対評価
■企業人事における絶対評価と相対評価とは
企業人事において、従業員のパフォーマンス評価は重要な課題であり、その手法として絶対評価と相対評価が用いられる。
絶対評価は、従業員が設定された業績目標をどれだけ達成したかを評価する方法であり、相対評価は、他の従業員と比較してどの程度のパフォーマンスを発揮しているかを評価する方法である。
■企業人事における絶対評価のメリット・デメリット
メリット
・公平性の確保:絶対評価は事前に設定された基準に基づいて評価が行われるため、評価の基準が明確であり、従業員にとっても納得しやすい。
・目標達成の明確化:従業員は明確な目標に向かって努力することができるため、業績向上が期待できる。個々の目標達成度が評価されるため、自己成長を実感しやすい。
デメリット
・基準の設定が難しい:絶対評価の基準を設定することは難しく、評価者間での基準のばらつきが生じる可能性がある。これにより、公平性が損なわれるリスクがある。
・柔軟性の欠如:絶対評価は固定された基準に基づいているため、状況の変化に対応しにくい。特に市場環境や業務内容の変化に対応するのが難しい。
■企業人事における相対評価のメリット・デメリット
メリット
・競争力の向上:従業員同士の競争が生まれるため、より高いパフォーマンスを目指して努力する動機付けが強くなる。これにより、組織全体の業績向上が期待できる。
・柔軟性の確保:相対評価は全体の中での位置に基づいて評価が行われるため、状況の変化に対応しやすい。特定の業績指標だけでなく、総合的な評価が可能である。
・全体の中での位置把握:従業員は自分が組織の中でどの程度の位置にいるかを把握しやすく、自身のパフォーマンスを客観的に理解することができる。
デメリット
・過度な競争のリスク:競争が過熱し、従業員間の対立やストレスが増える可能性がある。特にチームワークが求められる職場では、協力関係が損なわれるリスクがある。
・評価の不透明性:相対評価は他者との比較によって評価が行われるため、評価基準が不透明になりやすい。従業員にとって評価結果が納得しにくく、不公平感を抱くことがある。
・モチベーション低下のリスク:下位の従業員が自分の位置に絶望し、やる気を失うリスクがある。これにより、組織全体の士気が低下する可能性がある。
企業における評価方法の選択は、組織の文化や目的に応じて慎重に行う必要がある。絶対評価と相対評価の特性を理解し、適切に組み合わせることで、効果的な人事評価を実現することが求められる。
まとめ
絶対評価と相対評価にはそれぞれのメリットとデメリットがある。学校教育や企業人事において、どちらの評価方法が適しているかは状況によって異なる。重要なのは、評価の目的とそれに適した評価方法を選択することだ。
評価方法を適切に活用することで、個人や組織の成長を促進し、より良い成果を得ることができる。絶対評価と相対評価の違いを理解し、それぞれの特性を活かした評価方法を導入することが求められるだろう。
文/諏訪光(すわひかる)
大手ネット系企業にて10数年に渡りプログラマー〜プロダクトマネージャーまでを幅広く経験。新規事業から企業再生に至るまで様々な案件の開発に携わる。大企業のDX推進者や起業経験を経て現在はフリーランスの新規事業、DX、デジタルマーケのコンサル等を行う。