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「やりがい搾取」に陥りやすい職種と業種の代表例

2024.07.04

やりがい搾取とは、労働者にやりがいを意識させることで、長時間労働や無賃労働に従事させる行為だ。やりがいは仕事をするにあたって重要なモチベーションとなるが、それを利用して不当な労働を行わせることは違法行為となりかねない。

この記事では、やりがい搾取の何が悪いのか、職業別の代表的な事例、ボランティアとの違いなどについて解説していく。

やりがい搾取とは

まずは、やりがい搾取の意味について理解しておこう。ボランティアとの違いや、やりがい搾取によって働く側にどのようなデメリットがあるのかについても説明する。

■やりがい搾取の意味

やりがい搾取とは、労働者の仕事に対する「やりがい」を利用して、長時間労働や低賃金で労働させ、利益を搾取することだ。やりがいとは、仕事を通して得られる充実感や手応えのことを指す。本来はポジティブな意味合いの言葉だが、労働者がやりがいを強く意識させられることによって、不当に労働力を搾取されてしまうのが、やりがい搾取の問題点だ。

やりがい搾取の意味が理解できたところで、ボランティアとはどう違うのか、という疑問が出てくるだろう。ボランティアとは、自発的な申し出により役務に従事することを指し、ここに報酬の有無の概念はない。

雇用者と労働者という関係ではなく、ボランティアとはあくまで個人の意思による活動であり、参加や離脱が自由に認められるという点がやりがい搾取と異なる。

■やりがい搾取の「働く側」のデメリット

やりがいを持って働きたいというのは、労働者の多くが望むことであろう。これは、心理学の概念では「内発的動機づけ」と呼ばれるもので、給料などの報酬ではなく、活動そのものへの興味や充実感のために行動することである。

しかし、ひとたび内発的動機が悪用され、やりがい搾取が起きると、働く側にはさまざまなデメリットが生じる。例えば、長時間労働による心身の健康被害、ワークライフバランスの悪化、キャリアアップの機会の損失、モチベーションの低下などだ。

ひとたびやりがい搾取に陥ると、そこから抜け出すのは容易ではない。しかるべき機関に相談する、思い切って休みを取るなどの対策を早めにとり、デメリットが生じないようにすることが望ましい。

職種・業種別のやりがい搾取の代表例

やりがい搾取に陥りやすい職種や業種には、一定の傾向が見られる。ここでは、やりがい搾取が起きやすい代表的な職種や業種を3つ紹介していく。

■医療業界

やりがい搾取が起きやすい職業の1つ目は、医療業界だ。医療業界は人命を預かる仕事であり、使命感を感じやすい。使命が達成できることに喜びを感じると、「患者のため」という意識で時間外労働や無賃労働を行ってしまい、やりがい搾取に陥りやすいのである。

また、医療技術は日進月歩であるため、医療従事者は新たな治療法や治療薬などについて、日々勉強する必要がある。そのような自己研鑽に費やす時間を労働時間に含めるかの基準があいまいになりやすいことも、医療業界がやりがい搾取に陥りやすい理由のひとつだ。

■営業職

やりがい搾取が起きやすい職業の2つ目は、営業職だ。営業職はノルマが課されることが多く、目標を達成することにやりがいを感じやすい。それゆえに、ノルマを達成するために長時間労働や残業をしても、営業成績という結果にさえ繋がれば納得してしまう傾向にある。

逆に、ノルマが達成できなければ自分の実力が足りないからだと考え、低賃金でも我慢してしまうこともある。このように、営業職はノルマが評価要素になりがちであるため、やりがい搾取に陥りやすい。

■クリエイター

やりがい搾取が起きやすい職業の3つ目は、クリエイターだ。Webデザイナーやアニメクリエイターなどのクリエイター業は人気の職業であり、好きなことを仕事にしているという人も多い業界である。

憧れの仕事に就けているという意識から、長時間労働や薄給であっても納得して働き続けてしまう人が多く、やりがい搾取に陥りやすい。また、そのような労働環境であっても働きたいという人が絶えないため、結果的にやりがい搾取が起きているケースも多い。

ひとつでも当てはまったら要注意!?やりがい搾取企業のチェックポイント

実際にやりがい搾取の企業を見極めるポイントはあるのだろうか。やりがい搾取企業のチェックポイントについて説明していこう。

■残業代(割増賃金)の支払いがない

労働基準法では1日8時間以内、1週間で40時間以内という労働時間が定められており、これを超えると雇用主は労働者に時間外労働などの割増賃金を支払う必要がある。また、最低賃金法によって都道府県ごとの最低賃金も定められている。

しかし、やりがい搾取が起きている企業では、割増賃金が適正に支払われていなかったり、最低賃金を下回る賃金設定となっていたりする。特に基本給に手当や残業代が組み込まれているケースでは、それが適正であるのかの見極めが必要だ。

■有給休暇などを取得させてもらえない

有給休暇は、6ヶ月以上継続勤務し、かつ契約した労働日の8割以上の出勤がある労働者には、10日以上付与しなければならないと労働基準法で定められている。

このように、有給は労働者に与えられる権利である。だが、やりがい搾取をしている企業は、有給の取得を認めてもらえなかったり、繁忙を理由に取得しづらい雰囲気があったりなど、実際には有給が取得できないケースが見受けられる。

■インセンティブの有無はやりがい搾取に直結しない?

報酬や休暇が正当に支給されないことはやりがい搾取であるといえるが、インセンティブがないことはやりがい搾取に相当するのだろうか。インセンティブとは、労働者のモチベーションを高め、業績向上を促すために与えられる報酬のことだ。

したがって、インセンティブがない仕事であっても、労働者が仕事内容にやりがいを感じ、現状の報酬に納得しているのであれば、やりがい搾取に直結するとは限らない。

しかし、インセンティブの目標が不当に高く設定されていたりすると、目標達成のために時間外労働を強いられるといった事態も発生しうる。このようなケースはやりがい搾取に相当するため要注意だ。

まとめ

この記事では、やりがい搾取とは何が悪いのか、職種別の代表的な事例やボランティアとの違いなどについて解説した。

やりがい搾取は、労働者にとって、心身の健康被害や、キャリアパスの阻害などの深刻な問題となりうる。やりがい搾取されていると感じたら、早めの対策を心がけ、自らの労働力を搾取されないように注意すべきである。

文/羽守ゆき

慶應義塾大学を卒業後、大手IT企業に就職。システム開発、営業を経て、企業のデータ活用を支援するITコンサルタントとして10年超のキャリアを積む。官公庁、金融、メディア、メーカー、小売など携わったプロジェクトは多岐にわたる。現在もITコンサルタントに従事するかたわら、ライターとして活動中。

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