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ビジネスにおいて「バーンアウト症候群」という言葉を、一度は耳にしたことがあるだろう。しかし、聞いたことはあっても何を意味するかを正しく理解している人は少ないように感じる。
バーンアウト症候群とは、別名「燃え尽き症候群」とも呼ばれる。これはどんな人もなり得る状態だが、気づかずに過ごしていたり苦しんでいたりするかもしれない。
そこで本記事では、バーンアウト症候群の症状や特徴、予防策を解説していこう。
バーンアウト症候群(燃え尽き症候群)とは
はじめに、バーンアウト症候群の定義について確認しよう。
■バーンアウト症候群の定義
独立行政法人労働政策研究・研修機構によると、「バーンアウト症候群」とは、仕事にエネルギーを使い果たした人に心身の極度の疲労や感情の枯渇、自己嫌悪や仕事嫌悪、思いやりの喪失などが表れることだと定義されている。
つまり、今まで人一倍仕事に専念していた人がなにかのきっかけで燃え尽きたように意欲を失ってしまい、場合によっては休職や退職に至るケースもある。
バーンアウト症候群は、看護師や教員、ヘルパーなどヒューマンサービスを職業としている人に多くみられる状態である。この職業は、対象となる人のあらゆる課題に対し正面から関わり、対象を理解し、問題解決に努めようとする特性がある。そのためこのような職業を続けていくには、多大なエネルギーが必要であり、日々の積み重ねで疲弊し、いつしか燃え尽きてしまうという状態がうまれるのだ。
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「バーンアウト(燃え尽き症候群)」
バーンアウト症候群(燃え尽き症候群)の代表的な症状と原因
ここでは、バーンアウト症候群になると表れる症状と原因について解説していく。
■バーンアウト症候群の症状
バーンアウト症候群の症状は主に3つにわけられる。
・情緒的消耗感
仕事を通じて情緒的に力を使い果たし、消耗した状態のことをいう。次第に仕事に対して楽しさを感じられなくなり、やる気や集中力が低下し常に疲れを感じる状態となる。
・脱人格化
職場などで上司やクライアントなどに対して、人格を無視した思いやりのない対応をとってしまう状態をいう。仕事に対する意味が見出せず、熱意が失われ、やるべきことだけこなし相手のことは一切考えず対応するため、クライアントにも冷淡な態度をとってしまう。
・個人的達成感の低下
独立行政法人労働政策研究・研修機構によると「個人的達成感」とは、職務に関わる有能感、達成感と定義される。つまり実績や成績の低下が仕事に対する自信を喪失させ、仕事がうまくいかないことで自分を責めてしまい、自分の仕事に意味を見出せなくなる。
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「バーンアウト(燃え尽き症候群)」
■バーンアウト症候群の原因
原因はストレスといわれており、個人的な要因と環境的要因の2種類にわかれる。
個人的要因には、「責任感が強く完璧主義な人」「自分に自信がなく自分の意見を言えない人」「ワークライフバランスが保てていない人」「頑張りすぎてしまう人」などが挙げられる。
また、環境的要因には、「仕事量が多い」「責任が重い」「長時間労働」「人間関係が悪い」などが挙げられる。
これらの要因が長く続くほど、心身ともに疲弊し燃え尽きてしまう可能性は高くなる。さらにこの状態が持続すると症状は悪化しうつ病へと移行するリスクもあるため、注意する必要がある。
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「バーンアウト(燃え尽き症候群)」
バーンアウト症候群になりやすい人と予防法
ここではバーンアウト症候群になりやすい人の特徴と予防方法を解説していく。
■バーンアウト症候群になりやすい人の特徴
バーンアウト症候群になりやすい人には、以下のような特徴がある。
個人要因には責任感が強く、真面目で周りの評価を気にしてしまう人や自己犠牲を払う人、結果を求めすぎてしまう人、協調性が高く意見をあまりいわない人、仕事に高い理想を持っている人がなりやすいといわれている。
環境要因は、長時間労働やプライベートな時間がない、業務量が多い、職場の人間関係・雰囲気が悪いなどが原因となる。
その他にも、社会的孤立や精神疾患が原因で起こってしまう場合もある。
バーンアウト症候群にかかる人は知らぬ間に自分を追い詰めていたり、自分のことをしっかりみていないためにかかってしまう。気づいた時にはすでに自分ではどうしようもなくなっていることもあるため受診し、自分を認めてあげること、無理しすぎないようにしていくことが重要となる。
■バーンアウト症候群の予防法
バーンアウト症候群の予防方法は、以下のとおりである。
・ストレスを溜めない(自分で行える予防法)
気分転換をはかる、栄養バランスの良い食事をとる、質の良い睡眠をとる、相談できる人に話を聞いてもらうなどすることで、ストレスの緩和に努めていく。
・休息をとる
仕事を頑張りすぎてしまう人が多いため、適度な休息や気分転換をはかっていくことが重要だ。
・精神面のフォローをする(周りが行う予防法)
定期的に面談などの場を設け、どのような心理状態にあるのか、無理をしすぎていないかを確認していく。
例えば、職場における新人で考えるとわかりやすいだろう。新人は、入職したら環境の変化に適応することや仕事内容を覚えることなど多くの初めてを経験し、それに慣れようと頑張る。しかし容量も人それぞれであり、その人に会ったスピードで慣れていくため焦らず一つ一つ丁寧に進めていくことが重要である。
新人の立場では、はやく一人前になりたいと焦るため、上司や先輩がフォローしていくことが求められる。さらに話し合いの場を設けることで思いを発散する場ができ、より安心して業務に取り組むことができる。
・労働環境を見直す
能力にあった業務内容であるか確認していくことが重要である。基準は人それぞれだが、仕事のやりがいにもつながるようにしていく必要があるため、業務内容の質と一人一人の容量をみて判断していくことが求められる。
責任感の強い人や頑張りすぎてしまう人はバーンアウト症候群に注意しよう
バーンアウト症候群とは、なんらかのきっかけで燃え尽きたような状態に陥ってしまう状態である。責任感の強い人や妥協できずやりすぎてしまう人に多くみられ、やる気や集中力の低下、人格の変化、自信の喪失などの症状が表れてくる。
予防していくには、ストレスを溜め込まないことや適度な休息をとることが重要である。職場側も社員がバーンアウト症候群にならないための対策を講じることが求められてくる。
バーンアウト症候群になってしまうと、一人で元の状態に戻すことは難しいため、まずは病院を受診すること、周りを頼ることから始めていこう。
文/太田 佳祐(おおた けいすけ)
人材系企業にて求人広告の営業や人材紹介部署の立ち上げやマネジメントを経験。転職し、新規事業部門にて新事業の立ち上げや採用業務に従事したのちに独立。2021年に政治分野のハラスメント対策を行う法人を立ち上げ、2023年にフリーランスの事業を法人化。プロスポーツチームや自治体、企業や個人の目標達成を伴走型でしながら、ライターとしての執筆や講演活動も行っている。国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、採用コンサルタント、アンガーマネジメントファシリテーターなどを所有。