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「法定休日に出勤したはずが、普通残業扱いになっていた」といった経験をしたことがないだろうか。また、シフト制勤務のビジネスパーソンの場合、そもそも法定休日に対する意識が薄い人も少なくないだろう。
休日には法律で保障された「法定休日」と会社の独自規定「法定外休日」があり、法定外休日に出勤した場合は休日労働にならない。また、シフト制勤務の場合は、法定休日が平日になることも多いのだ。
この記事では、法定休日について、割増賃金との関係、シフト制勤務のポイントなどを解説する。
法定休日とは
まずは、法定休日とはどんな休日なのか、その定義から見ていこう。
■法定休日の定義
「法定休日」とは、労働基準法で定められている休日で、会社は従業員に必ず与える必要がある。なお、1週間に1日、あるいは4週間に4日付与すればOKとされている。
■法定休日は土日祝日ではない
土曜日と日曜日、国民の祝日が法定休日だと思われがちだが、実は法律ではそこまで規定されていない。そのため、サービス業などのシフト制勤務で平日が休みという場合は、平日が法定休日となることを覚えておこう。
■法定休日と労働基準法
ちなみに労働基準法では、次のように定められている。
「使用者(会社)は、労働者に対して、毎週少なくとも1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」(労働基準法第35条) |
なお、違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。(労働基準法第119条)
■法定休日の判断方法はあるの?
具体的な法定休日は法律だけでは規定されていない。ビジネスパーソンが自社の法定休日を判断するには就業規則を確認するのが最も確実な方法だ。
土日が休日の完全週休二日制の場合、就業規則で「法定休日は毎週日曜日とする」と規定していることがある。記載がない場合でも、日曜日を法定休日としている会社も多い。
一方、シフト制勤務の場合は、就業規則を確認しても、「休日は勤務シフト表において定める」とし、具体的な日程の言及はない。この場合の判断方法はシフトの「起算日」である。
厚生労働省は、会社に対して、シフト制勤務など4週4休を採用する場合は、4週の起算日を決めておくことを薦めている。そのため、就業規則に4週の起算日が「月の初日」と記載されているなら、その月の休日のうち4日が法定休日だ。毎月、最後の4日を法定休日としているケースもある。
困るのが、具体的な曜日や4週の起算日の記載がないなど、法定休日が特定できないときだ。過去、裁判で争われたこともあり、現在は、「歴週」の最後の日が法定休日とされている。歴週は日曜日始まりなので、この場合は、土曜日が法定休日となる。
法定外休日・所定休日とは
ところで、休日には「法定外休日」や「所定休日」もある。法定休日とどんな違いがあるのだろうか。
■法定休日と法定外休日とは
これまで見てきたように、法定休日は法律に規定された最低限の休日だが、法定外休日とは、会社が独自に定めた法律を上回る休日をいう。週休二日制の会社であれば、2日のうち1日は法定外休日ということになる。
出勤した場合は、同じく休日出勤となる。一方、法定休日と法定外休日では割増賃金について次のような違いがある。
■法定休日・法定外休日と割増賃金
まず割増賃金の種類は以下の通りだ。
種類 |
条件 |
割増率 |
---|---|---|
時間外労働 |
法定労働時間を超えたときなど※ |
25%以上 |
休日労働 |
法定休日に働いたとき |
35%以上 |
深夜労働 |
22時から5時までの間に働いたとき |
25%以上 |
※「法定労働時間」=原則1日8時間、1週40時間
このように、法定休日に出勤すると休日労働になり、通常の賃金の35%上乗せとなる。時給1,000円なら1,350円だ。一方、法定外休日の場合は基本的に35%の割増賃金はつかない。
しかし、上の表のように、その日に働くことによって週40時間の法定労働時間を超えた場合は、時間外労働になり25%以上の割増賃金がつく。時給1,000円なら1,250円の計算だ。割増賃金は、重複して付与されるものがある。次のケースとなる。
・時間外労働+深夜労働 25%+25%=50%以上
・休日労働+深夜労働 35%+25%=60%以上
例えば、9時から18時まで休憩1時間で勤務した後、23時まで残業したとする。このとき、実働8時間を超えた18時から22時までの4時間は25%、22時から23時までの1時間は、50%以上の割増率となる。
同じように、休日労働の場合は、22時以降は割増率が60%以上となる。それでは、休日労働が8時間を超えた場合はどうなるだろうか。やはり時間外労働の25%が上乗せされるかというと、そうではない。休日には法定労働時間(8時間)の概念がないので、時間外労働の問題にならないのだ。
出典:厚生労働省「法定労働時間と割増賃金について教えてください。」
■法定休日と所定休日とは
ちなみに、「所定休日」は、法定外休日と同じ意味で、こちらも会社独自の休日だ。そのため、所定休日の日数や種類は、会社ごとに異なる。
シフト制勤務の法定休日のポイント
ここからは、シフト制勤務の法定休日のポイントを、わかりやすく解説する。
■労働契約書などで休日が明示されているか
採用時や契約更新の際には、会社は従業員に契約期間や賃金、休日などの労働条件を書面で明示しなければならない。労働契約書や労働条件通知書を渡されたら、4週の起算日も確認しよう。
■休日の「振替」には要注意
シフト制勤務では、業務の繁忙のため、休日が急きょ出勤になり、別の日が休みになるといったシフト変更も多いだろう。しかし、この場合は、注意が必要だ。仮に法定休日に出勤になっても、事前に別日に休みが設定されていれば、休日出勤にならず、割増賃金はつかないからだ。
このように、あらかじめ休日を出勤日とし、そのかわり他の出勤日を休日とすることを「休日の振替」という。あらかじめ休日を変更することで、もとの休日は休日ではなくなり、労働日となるので、その日に勤務したとしても休日労働の割増率にはならない。
ただし、休日の振替は、就業規則等に休日の振替の規定があることが実施条件だ。さらに、振替休日が翌週に設定され、その結果、週40時間の法定労働時間を超えたときは、超えた時間に対して時間外労働の割増賃金の対象になることもある。
休日の振替を打診された場合は、規定の有無や、週をまたいで振替休日が設定されていないかなど、しっかりチェックしておこう。
なお、振替とよく似た制度に「代休」があるが、こちらは、休日労働をした後で、その日以降の出勤日を休みにすることをいう。この場合は、あらかじめ休日を出勤日に変更したことにならず、法定休日に出勤した場合は休日労働となる。
※出典:厚生労働省「「シフト制」で働くにあたって知っておきたい留意事項」
まとめ
法定休日とは、法律で保障された週に1日、または4週に4日の休日である。また、土日祝日に限定されるものではなく、平日の場合もある。さらに、休日労働の割増率も、35%以上と手厚い。
決して日数が多いとはいえない法定休日。貴重だからこそ確実に把握し、適切に活用していきたい。
文/木戸史(きどふみ)
立命館大学文学部卒業後、営業、事務職、編集アシスタントなどを経て、社会保険労務士事務所で社労士として勤務。現在はライターとして活動しており、社労士として多くの中小企業に携わった経験を生かし、ビジネスマンに役立つ法律知識をできるだけわかりやすく発信している。