有給休暇は、出勤率が一定以上の労働者に対して付与されます。
育児休業期間中は仕事を休んでいるので、育休明けにすぐ有給休暇を取得することはできないのでしょうか?
実は、育休明けにすぐ有給休暇を取得できるケースは比較的多いです。どのような状況であれば有給休暇を取得できるのか、ご自身の状況に照らして確認してみましょう。
本記事では、育休明けにすぐ有給休暇を取得することはできるかどうかについて解説します。
1. 有給休暇が付与されるための条件
労働者に対して有給休暇が付与されるのは、以下の基準期間における全労働日の8割以上出勤した場合です。
基準期間における出勤率が8割以上のフルタイム労働者に対しては、付与時点における継続勤務期間に応じて、以下の日数の有給休暇が付与されます。
また、フルタイムでない労働者(パート・アルバイトなど)にも、基準期間における出勤率が8割以上であれば、継続勤務期間と所定労働日数に応じた日数の有給休暇が付与されます。
2. 育休期間は出勤したものとみなされる|育休明け直後でも有給休暇は付与される
有給休暇が付与されるかどうかを判定する出勤率の計算においては、育児休業期間は出勤したものとみなされます(労働基準法39条10項)。
これは、育休明けの労働者も有給休暇を取得できるようにして、仕事と育児を両立する負担を軽減するとともに、育休の取得を奨励することを目的とした規定です。
したがって、基準期間に育休期間が含まれているときは、育休期間中の労働日についてはすべて出勤したものとみなして出勤率を計算します。
その結果、出勤率が8割を超えていれば、育休明け直後の付与日において有給休暇が付与されます。
3. 育休前に付与された有給休暇は、付与日から2年後まで取得できる
育休に入る前の段階で付与された有給休暇は、付与日から2年間が経過するまで取得できます(労働基準法115条)。
したがって、育休明けの段階で2年前以降に付与された有給休暇の日数が残っている場合は、その有給休暇をすぐに取得することが可能です。
4. 育休明けにすぐ有給休暇を取得できないケース
有給休暇は、必ずしも育休明けに合わせて付与されるわけではありません。有給休暇が付与されるのは、出勤率の計算対象となる基準期間が満了した時です。
したがってほとんどのケースでは、育休明けにすぐ有給休暇を取得するには、育休に入る前の段階で、2年前以降に付与された有給休暇が残っている必要があります。
有給休暇が残っていない場合は、次の有給休暇が付与されるタイミングまで待たなければ、有給休暇は取得できません。この場合、欠勤すると原則として無給扱いになるのでご注意ください。
5. まとめ
育休が明けても子どもはまだ小さいので、突発的な病気などを理由に仕事を休まざるを得ないこともあるでしょう。そのような場合には、有給休暇を取得できないかどうかご検討ください。
育休に入る前に付与された有給休暇が残っていれば、育休明け直後から有給休暇を取得できます。人事担当者などに残っている日数を確認して、有給休暇の取得を申請しましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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