非常食の実際に使えない備え方・使える備え方
平時から非常食を準備してはいたものの、実際に地震が起きたときに食べられなかった、もしくは何らかの失敗に見舞われたといった事態になれば、ひもじい思いをするばかりか、命の危険もある。
防災士や防災備蓄収納1級プランナーなどの資格を持ち、おもしろ防災アドバイザーとして活躍する南 あきこ氏は、非常食のNGな備え方について次のように話す。
●非常食のNGな備え方
「非常食を準備しなければと焦り、とりあえず何か買ってみようと、カンパンと缶詰とカップ麺を大量に買ってきたとします。いざ被災したときにカンパンは普段、食べ慣れていないので、食べたいと思わず、結局、少ししか食べなかったというのはよくある話です。また缶詰だけでは塩辛くて食べづらかったり、カップ麺はお湯の準備ができず食べられなかったりすることもあります」
●正しい非常食の備え方
では、正しい非常食の備え方を教えてもらおう。
「失敗の原因は、『自分に合った備蓄』を選べていないことにあります。『いざというときは、いつもの延長』です。いつも食べているもの、好きなもの、調理に必要なものまでセットで準備できているかどうかは大切なポイント。また予算の中で、偏ったものを一括購入するのではなく、幅広い種類のものを何回かに分けて購入しましょう。なぜなら、揃えている途中でいざというときが来たら、偏ったものしかない状態になるからです」
南氏によれば、失敗を防ぐ、おすすめの備え方があるという。
「ローリングストックがおすすめです。普段、自分がよく食べているものを選びましょう。ローリングストックとは、普段の食品を少し多めに買い置きしておき、賞味期限の古いものから食べていき、食べた分を順次、買い足す手法です。
普段食べている食品でよいのですから、缶詰やカップ麺である必要はありません。塩分や糖分、脂分が過多にならず、不足しがちなビタミン・ミネラル、たんぱく質を意識しつつ、アレルギーなどにも配慮したラインナップを考えてみましょう。とはいえ、自分が好きで、食べたいと思うものを選ぶことがポイント。
予算を決めたら、幅広い種類を少しずつ何回かに分けて購入します。棚の奥にしまい込むことなく、その都度、使いながら入れ替えることで、期限管理が楽になり『買ったのを忘れていた、期限が切れていた』などの失敗も防げます。収納場所も最小限で済むようになるメリットもありますよ」
●おすすめの非常食の選び方
具体的には、どんな非常食がおすすめだろうか。
「いつも行くスーパーやホームセンター、ドラッグストアで充分、そろいます。常温保存ができるもの、できれば常温で食べられるものなら尚良いですね。保存性が高いほうが良いのはもちろんのこと、災害時に停電すると冷蔵庫が使えなくなることもあるからです。
ローリングストックでどんどん新鮮で美味しいものを入れ替えれば、賞味期限や消費期限は半年くらいあればOK。もし消費しきれないものがあれば、いざというときにも食べない『備蓄に向かないもの』と考えましょう。先述の通り栄養も大切ですが、好きなもの、食べたいものに囲まれた楽しい備蓄をすることで、被災時にもお腹だけでなく心も満たしてくれます。ですから、お菓子でもOKなのです」
非常食は、まず「食べたい」と思うことが大前提。その上で、日常的に備えていくことがポイントとなるようだ。
つっぱり棒や非常食の備えは、どうしても後回しにしがち。面倒で中途半端に備えてしまい、結局、意味がなかったと後悔することになる。備えるのであれば、有効な方法で備えるのが賢いといえそうだ。
【取材協力】
竹内 香予子氏
平安伸銅工業株式会社 代表取締役 兼 つっぱり棒博士
平安伸銅工業の3代目代表取締役。父(2代目社長)の後継として2010年に入社、2015年に代表取締役に就任。つっぱり棒の企画開発で培ったノウハウを活かし、新ブランドの開発を行っている。さらに、防災士の資格も保有しており、家の中での“つっぱり棒”の正しい防災対策・活用術など、さまざまなメディアでの情報発信も行っている。
「突っ張り棒で地震対策!耐震ポールを正しく使って、家具の転倒を防ごう」
南 あきこ氏
おもしろ防災アドバイザー
大阪府出身、滋賀県在住。防災士、防災備蓄収納1級プランナー、災害備蓄管理士、ペット防災指導員など、防災にまつわる資格や整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーターなど住まいにまつわる資格等も所有。防災をもっとわかりやすく、楽しく伝える活気あるおもしろ防災講座が好評。自身の備蓄は農林水産省のホームページにも採用されている。NHKや雑誌STORY、読売新聞、毎日新聞などメディアにも多数出演。
https://aiyume-sakura.com/
文/石原亜香利