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京セラのアニメプロジェクトから考える、 B2B企業が若者コミュニケーションに取り組む合理的な理由【PR】

2024.06.10PR

京セラは、若者が主人公のオリジナルアニメ制作を2021年にスタートしました。このプロジェクトは、「顔が見えづらいBtoB企業が、自社のフィロソフィ(哲学)を伝えながら、いかに若者とコミュニケーションを図るか」という課題に対するアクションの一つです。

アニメは2022年から3作品を公開しました(京セラ発オリジナルアニメサイトは、こちら)。「京セラは新しいことに挑戦している企業」というイメージが若者に浸透しつつあり、新卒採用への応募は1.4倍に増加。社内にも良い影響を与えています。

本記事では、アニメプロジェクトをサポートしている電通若者研究部(以下、電通ワカモン)の湊康明氏が、京セラ広報室長の吉川英里氏に話を聞きます。

湊 康明さん
株式会社 電通 第7マーケティング局 プロジェクト・プランナー
入社以来、メディアプランニング、ビッグデータ解析、事業開発・インナー活性コンサルティングに携わりながら、自身の学生起業経験を生かし、「電通若者研究部」(https://dentsu-wakamon.com)にも所属。幅広い知識を生かしたプロジェクト起案を得意領域とし、クライアントのビジネストランスフォーメーションに貢献している。受賞歴にD&AD award ブランディング部門Yellow Pencilなど。滋賀大学データサイエンス学部インダストリアルアドバイザーなど社外活動にも従事。

吉川 英里さん
京セラ 株式会社 執行役員/広報室長 兼 ダイバーシティ推進室長
大学卒業後、家業のデザイン事務所手伝い、英語講師、ロンドンでの日本大使館ならびにホテル勤務を経て、2001年に京セラに入社し、海外に向けた広報宣伝を担当。2005年より一般財団法人経済広報センター出向。2007年帰任後、2016年から広報室長に就任し、国内外全体の広報宣伝活動を通じ京セラの認知度・ブランド力の向上に尽力する。その後、2019年からはダイバーシティ推進室長も兼務し、全従業員にとって働きやすい環境づくりにも力を注ぐ。 

顔が見えづらいBtoB企業、京セラの課題とは?

湊:今日は、ウェブ電通報の読者に向けて、改めてこのプロジェクトの意図や反響などについて吉川さんにお話しいただきたいと思います。初めに自己紹介をお願いします。

吉川:私は、2001年に入社してから、海外への広報宣伝を担当してきました。その後、広報室長となり、今は海外だけでなく国内へも京セラという企業をどう伝えていくか考えています。さらに、2019年からはダイバーシティ推進室長も兼務しています。

湊:ダイバーシティ推進室ではどのようなことに取り組んでいますか?

吉川:全従業員が多様性を受け入れて、一人一人が活躍できる働きやすい環境を整えていくことに努めています。最近では、若手とベテラン社員の世代間ギャップを解消すること、これを私たちは「Age Diversity」と呼んでいますが、このことにも力を入れています。

湊:2021年にアニメプロジェクトを立ち上げられて以降、私たち電通も企画を提案させていただきながら一緒にアニメを作ってきました。そもそもアニメプロジェクトを始めたきっかけは何でしょうか? 

吉川:世の中の若年層とのコミュニケーション不足を感じていたからです。これは当社に限らず多くのBtoB企業に共通した悩みだと思いますが。当社に関するいろいろなブランド調査の結果、特に若年層のブランド認知が低いことが分かりました。

湊:若年層の認知度が低いと経営全体にどのような影響がありますか?

吉川:これからの京セラを作っていくのは、当社に入ってくる若い世代です。その世代が京セラについて知らないという状況は、会社の未来を考えるうえで大きなリスクです。それでなくても若年層の人材獲得競争は近年激しさを増しています。私たちと一緒に会社を発展させてくれる情熱を持った若者を集めたく、広報室として何か手を打てないかと考えていました。

湊:若年層の認知度が低い理由をどのようにお考えですか?

吉川:そもそもBtoB企業は、「何をしているのか」「どんな会社か」といったことが生活者に見えにくい。特に京セラは、祖業はセラミック部品の製造でしたが、今はさまざまな分野にセラミック技術を活用した部品を提供することに加え、太陽光発電システムや通信端末、人工関節などの医療用製品、さらにはキッチン用品やジュエリーの製造まで、事業が多角化しています。これが広報泣かせでして……。特定の製品やサービスを取り上げても、生活者に京セラがどんな会社なのかを伝えることはとても難しいのです。

そのような状況の中で、広報室がここ数年意識しているのは、製品やサービスを提供するベースとなっている経営理念やフィロソフィを伝えていくことです。その方が京セラの顔が見えやすくなると考えています。

湊:若者とのコミュニケーションの方法として、なぜアニメを選ばれたのでしょうか?

吉川:いろいろなアイデアが出ましたが、広報室の若い世代からは「アニメをやりたい」という声が圧倒的でした。理由を聞くと、子どもの頃からアニメをとても身近に感じていて、情報の伝達手段として有効である、と。しかも彼らには、施策を行った場合、どんな効果があるかも見えているようでしたので、アニメ制作に懸けてみようと思いました。

アニメを選択したのは、他のBtoB企業と差別化できることも理由の一つです。アニメを使ったコミュニケーションは、他企業や行政でも珍しくありませんが、BtoB企業でシリーズ化するほどアニメに力を入れているところは少ないのではないでしょうか。

オリジナルアニメで、京セラのフィロソフィ「利他の心」を伝える

湊:これまでに公開されたアニメ3作品について、それぞれの内容を教えてください。

吉川:アニメは2022年から毎年1作品ずつ公開しています。いずれも社会へ羽ばたく前の若者が主人公です。主人公はそれぞれ、若者ならではの悩みや不安を抱えていて、その悩みや不安に寄り添う内容になっています。

第1弾アニメ「『あなたを一言で表してください』の質問が苦手だ。」は、自分が何者か分からず悩む若者に、自分の心が動く方へ行動することの大切さを伝えました。第2弾アニメ「私のハッシュタグが映えなくて。」は、周りからの評価を気にする若者に向けて、自分が挑戦したいことにまっすぐ取り組んでみようという想いを込めました。そして、第3弾アニメ「今は将来に入りますか。」は、先が見えず不安を感じている若者に、今できることの積み重ねが未来を開いていくことを伝えています。

湊:アニメシリーズ全体を通して伝えたいことは何でしょうか?

吉川:京セラのフィロソフィにある「利他の心」です。京セラは、事業を行う上で自分たちだけが利益を得るのではなく、商売相手をはじめとした、さまざまなステークホルダーが幸せになり、利益を得られるように努めています。そのような「他を思いやる心」をずっと大切にしていることを伝えたかったのです。

アニメでは、物語のポイント部分に「誰かのために」という言葉が出てきます。将来に対する不安や心の葛藤があるけれど、自ら一歩踏み出すことが誰かのためになるというメッセージを込めています。

湊:シリーズを通して、キャストや音楽にもこだわりましたね。

吉川:これは電通グループの制作チームのみなさんの力を大いにお借りしました。人気の声優さんを起用し、音楽にも力を入れています。例えば第3弾アニメでは、人気バンドのヨルシカのsuis(スイ)さんに主題歌を担当していただきました。suisさんは声優としても本作品にご参加いただいています。

InstagramやXなどSNSには、アニメのクリエイティブや声優さんなどについてのコメントを多数いただいています。特に第3弾は音楽に関するコメントが非常にたくさんありました。声優さんや音楽、それぞれの世界を支持している人々に響くように作品が設計されていて、とても効果的でした。

湊:今の若者を取り巻く環境は情報量が大変多く、コンテンツを作ってもなかなか彼らに入っていかない状況です。そこで、一つのアニメの中にみんなが好きなものがいろいろ入っているという構造が、若者とコミュニケーションをする上で有効だと考えました。最初は、声優やアーティストに興味を持ってもらい、アニメを見たらストーリーが心に響き、ストーリーの根底にある京セラのフィロソフィが伝わる、という狙いです。

吉川:湊さんからは、「直接的に『京セラはこういう会社です』とアピールしない方がいい」というアドバイスもいただきましたね。

湊:例えば、生活者にコーヒーを買ってもらいたい場合、「コーヒーを買ってください」とお願いするようなコミュニケーションでは拒絶されてしまいます。普段から、電通ワカモンはクライアントのみなさんに「情報のインプット・アウトプットのコツ」についての知見をよくお伝えしています。

例えば、インプット(生活者のファーストコンタクト)の部分は、今回のアニメ制作であれば、若者が興味を持っていることや人を取り上げる。そしてアウトプット(コンテンツ)は、京セラが伝えたいものを出すという構造にすると受け入れられやすくなります。今は本当に情報があふれすぎて、自分の興味がある情報以外はあまり見ない時代です。ですから、コミュニケーションは「自社が、自社が」とならず、生活者に寄り添う姿勢をより意識する必要があります。

吉川:おっしゃる通りですね。アニメ制作を通して、「押し付けがましくない形で共感を得る」ということを学びました。

湊:アニメシリーズの反響はいかがでしたか? 

吉川:アニメ第1弾から、社内の若い世代には総じて好意的に受け入れられました。その一方で、上の世代の中には、「これで京セラが伝わるの?」という人もいて物議を醸したこともあります。でも、制作を重ねていくにつれて、世間からの反響も大きくなり、新卒採用への応募が1.4倍になるなど、入社希望者が大幅に増えました。具体的に成果が目に見えて現れたことでアニメプロジェクトを社内に理解してもらえるようになりました。

湊:京セラのイメージも伝わり始めていますよね。プロジェクト開始当初の若者への調査では、「会社の色が分からない」という声がとても多かった。しかし、最近の調査では、「チャレンジングなことを行っている企業」「活発な企業」というイメージがついてきていることが分かりました。「京セラの色」というのが、少しずつ若者に見え始めていると私たちも感じています。

「これだから今の若者は」というフレーズをポジティブに捉えた電車内広告を展開

湊:第3弾アニメ制作の過程では、御社と電通ワカモンが共同で「世代間ギャップ調査」を行いましたね。その結果、「実は若者にはすごいところがあると思っている」と答えた大人(35歳以上)は74.6%に上りました。一方で、「大人は自分の世代が好きじゃなさそう」と答えた若者(35歳未満)は68.3%でした。この結果をどう捉えていますか?

※調査概要……調査期間:2023年12月、サンプル数:1000ss、調査対象:10~60代男女、調査方法:インターネット調査

吉川:若者も大人も分かり合いたいと思っているものの、お互いのコミュニケーション不足でギャップが生まれているように感じます。もっとフランクにコミュニケーションができれば、誤解が解けて関係が深まるのではないでしょうか。

湊:大人と若者のすれ違いのような状況は御社の中にもありますか?

吉川:よくあるのは、「一緒に食事に行こう。飲みに行こう」と誘いたいけど、「若者は自分たちの世代をうっとうしいと思っているんじゃないか」とちゅうちょしてしまうことですね。若者も大人もお互いに「嫌われてるんじゃないか」と思っているのかもしれません。

最初に申し上げた「Age Diversity」は、当社にとって本当に大きなテーマです。将来は定年が延長されてシニア層がさらに増えていくでしょう。実際、当社では再雇用を希望するシニア層は9割にも上ります。若い世代と一緒に働く上の世代の年齢はますます上がっていく。そのとき世代間のコミュニケーションギャップがあると、とても困ります。他の企業と話していても、「Age Diversity」は、みなさん関心が高いテーマです。

湊:調査の結果をもとに第3弾アニメのPRも兼ねて、トレインジャック施策を実施しましたね。若者と大人の隔たりを象徴する「これだから今の若者は、」というフレーズをベースに電車内広告を制作しました。

吉川:ネガティブな文脈で使われがちな「これだから今の若者は、」というフレーズをポジティブに捉え、アニメと同じ世界観で、若者の背中を押すコピーが開発されたことが印象的でした。このトレインジャック施策の根底にあるものも、京セラのフィロソフィにある「利他の心」です。企業として「若者に寄り添っていきたい」と声を上げることが若者へのエールになり、他の世代に気づきを与え、世代間ギャップを解消する一つのきっかけになってほしい、そんな願いを込めました。

世代間ギャップを解消するためには、カテゴリーにとらわれない視点も必要

湊:今後、若者とのコミュニケーションをどのように図っていきたいですか?

吉川:アニメもトレインジャック施策も、京セラにとって新たなトライでした。時代が変わっていますから、一定の批判があることも覚悟で京セラという企業を伝える手法を工夫していかないといけません。新しい表現には今後もチャレンジし続ける必要があると考えています。

同時にアニメを一つのきっかけとして、社内で世代を超えたコミュニケーションが活発になれば、と考えています。実際、社長自ら若手社員への理解を深めようといろいろなイベントを企画したり、部署単位でもトップが音頭を取って積極的にコミュニケーションを図ろうとしたりする動きがあります。

湊:世間に向けてはアニメのようにフィロソフィを打ち出すコミュニケーションを続け、社内では世代間ギャップ解消のための環境を作るということでしょうか。

吉川:おっしゃる通り、私たちの最終目標は世代間ギャップの解消です。そのためには、属性にあまりとらわれすぎてもいけないと考えています。今回の電車内広告の中に「Z世代のZって、なんだよ」というコピーがありましたが、Z世代、シニア層などとカテゴリーに分けて考えすぎるのもよくないなと。

湊:今回の世代間ギャップ調査でも、自分たちをZ世代と呼ばれることに違和感を覚える若年層はかなり多かったですね。

吉川:これは日本人の特性かもしれませんが、血液型など、カテゴリーに分けたがりますよね。しかし、Z世代にもいろいろな人がいます。あまり属性にとらわれずに一人の人間として見つめ、尊重して、仲間として一緒に働いていくという考えに持っていければ、より働きやすい環境が作れると思います。

湊:御社の取り組みが、自社に好影響を与えるだけでなく、他のBtoB企業が生活者とコミュニケーションを図ったり、世代間ギャップを解消するための一つのヒントになれば、それも「誰かのために」なりますよね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

***

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※こちらの記事はウェブ電通報からの転載記事になります

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