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首都圏の賃貸物件において敷金は減額傾向、礼金は?

2024.05.25

【礼金】の動向について

(1)「礼金0物件」割合の推移:直近は全賃料帯で減少。10万円未満の物件でも半数を割る

LIFULL HOME’Sに掲載された賃貸物件のうち、礼金0(ゼロ)の物件の割合を賃料帯別に出した。敷金0物件の割合は全ての賃料帯において増加傾向だったのに対し、礼金0物件は直近全てが減少となった。15万円以上の物件では2022年までは増加傾向だったものの2023年に減少に転じており、15万円未満の物件は一時的な停滞もありながらも5年間を通じて減少傾向となっている。

(2)礼金の平均値の推移: 直近は全賃料帯において増額

LIFULL HOME’Sに掲載された「礼金あり」物件の平均を賃料帯別に算出したところ、全賃料帯において直近は増額傾向となった。賃料10万円未満の物件に関しては2020年、10万円以上20万円未満の物件は2021年、20万円以上の物件は2022年を境に増額に転じている。

LIFULL HOME’S総研チーフアナリスト 中山登志朗氏 考察

円安を背景としたエネルギー価格、食糧価格の高騰が続き、消費者物価指数(CPI)の上昇が止まりません。日銀のマイナス金利政策が解除されたことで、日本は賃金上昇を伴う本格的な景気拡大局面を迎えたとの見方もできますが、生活者目線では好景気を実感する機会は少なく、生活コストの負担増が重くのしかかっています。トータルの賃貸コストがどれくらい発生するのかについて考慮し、よりコスパの良い賃貸物件を見つけられるように意識したいものです。

敷金は賃貸住宅を借りる際に貸主に預ける保証金(原則として賃料債務の担保)で、契約終了時に賃借人の責に寄る原状回復費用として活用されることもあります(経年劣化など通常使用の範囲であれば原状回復の対象外)。その使用については“修繕費トラブル”として注目されることもあり、賃貸人(大家)からすると使いにくいお金となっていることから、賃料の相場に関わらず契約時に敷金の負担を求めない“敷金ゼロ物件”が増え続けており、特に賃料水準が月額10万円未満の物件では2023年に53.2%と過半を超える状況です。

これは契約時の負担を減らして少しでも貸しやすくしたいという賃貸人の意向がそのまま反映しているものと見ることができます。同様に“敷金あり”の賃貸物件でも10年ほど前は月額賃料の2か月分を設定しているケースが圧倒的多数だったのですが、ここ数年は1か月に設定する物件が増え、現状では大多数の物件で敷金1か月となっています。

一方、礼金は名称の通り賃貸人に物件を貸してもらうお礼の意味で渡されるものですから、契約終了時に返還されません。この礼金については、対照的に2020~2022年にかけてコロナ禍でも借りてもらいやすくするために“礼金ゼロ物件”のシェアがどの賃料帯でも拡大しましたが、コロナ後の2023年に入ると、賃借人の増加に伴って各賃料帯で2~3ポイント減少しています。

また、“礼金あり”の物件はコロナ禍でも賃料収入の代わりに2020年および2021年を底として徐々に金額を引き上げており、いずれの賃料帯でも1か月分を超える水準に増額されていることが分かります。

なお、敷金は減額もしくは敷金ゼロとするケースが増えているのですが、最近は敷金の代わりに“クリーニング代”として賃貸物件退去時の費用を契約時に求めるケースが急増しています。物件の原状回復については、故意過失および通常使用の範囲を超えた原因がある場合は賃借人の負担となるルールがありますが、クリーニング代はその基準が不明確で、国民生活センターへの問合せも増えていることから、今後新たな“預り金トラブル”とならないように予め確認する必要があります。

<調査概要>
・対象エリア:一都三県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)
・対象物件:LIFULL HOME’Sに掲載された居住用賃貸物件
・対象期間: 2018年1月~2023年12月

出典:LIFULL HOME’S

構成/こじへい

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