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「当面の間」は少しの間なのか、あるいは約1週間といった期間になるのか、認識が曖昧なことも少なくない。
便利な言葉として見られることも多いが、理解が完全でなければ誤った使い方をしている可能性もある。
本記事では「当面の間」に関する疑問を、意味や期間を含めて例文を用いて解説する。注意点として使い分けるべきシーンも補足するので、正確に覚えていこう。
「当面の間」は正しい表現?
■「当面」の意味からひも説く「当面の間」の議論
「当面の間」は、しばらくの間という意味合いを持つ言葉だ。しかし、間違っていないかという疑問もある。理由について、「当面」のみを辞書で引いた結果を参考にしてほしい。
(副詞的にも用いる)さし迫っていること。さしあたり。「—の急務」「—問題はない」 →当座[用法] 引用:デジタル大辞泉(小学館) |
上記の「さしあたり」も、しばらくの間といった意味になる。したがって、重複表現になるのではないかという疑問がある。
しかし、全国紙やマスコミのニュース記事でも、「当面の間」を記載した文章は当たり前に見られている。
つまり現代においては、使う当事者の解釈次第であることを念頭に置いておこう。
■「当面の間」の期間はどのくらい?
「当面の間」の「間」が、いつまでの期間を指しているのかは気になる点だろう。しかし、「間」の期間には明確な定義がない。
ならば、どのようなニュアンスで用いているかが重要だが、話し手は期間を曖昧にして使う。
「当面の間は復旧作業にあたるため」といった表現なら、原状復帰させるためには仕方がないと受け取る側が解釈する。
「当面の間」の使い方
「当面の間」はビジネスをはじめ、災害や公共交通機関のトラブルなど多岐にわたる。
最も使いやすいのがビジネスシーンなので、以下の2つの例文を見ていこう。
■ビジネスシーンにおける例文
「当面の間」を、「控える」「延期」で活用した例文は以下の通り。
・求人広告も経費がかさんでしまう。中途採用を控える方針は、当面の間変更もないだろう。
・先月に発案したプロジェクトは、当面の間延期の決定としました。
上記の例文に共通するのは、ネガティブなシーンに適している点だ。ただし、後ろ向きの状態でも「苦境を打破するために、方針は当面の間変更せずに尽力しよう」といったポジティブな思いも込められる。
■サービスを提供する側が使う際の例文
「当面の間」で、自らがサービスを提供する際の例文は以下の通り。
・体調不良で検査入院になったため、当面の間休業いたします。
・円安の影響で仕入れが困難になり、当面の間は在庫切れが続くことをご了承下さい。
天変地異による中断で「当面の間」を使うのも良いが、体調の悪化などで都合が悪い時にも使える。
また自営業や店舗の責任者が使うことも可能なので、当面の間の使い勝手は良いといえるだろう。
「当面の間」を使う際の注意点
「当面の間」は、期間を定めない時に適した言葉だ。用法を間違えると指摘を受ける可能性があるため、以下に紹介する2つの注意点を覚えていこう。
■期間が想定できる際は使わない
「当面の間」は「しばらく」といった、期間に定めがない表現だ。何日・何週間など、数字が含まれていない点に注意したい。
仮に一次情報を得ずに「当面の間」を使うと、誤解を招き、指摘を受ける可能性がある。例えば、本当は1週間で終わるというデータがあるのに「当面の間」を用いると、発言に誠意がないと言われても仕方がないからだ。
■シチュエーション想定を誤らない
「当面の間」は、シチュエーションを的確に判断したうえで使わなければならない。マイナスの意味を込めて使われやすい「当面の間」は、反対にポジティブな言葉として使うと首を傾げられることも珍しくはない。
例えば「当面の間は直行直帰させてください」といった軽率な伝え方をすると、「言葉に頼って偉そうにしている」という悪印象を与えるかもしれないからだ。
あくまでも予測できない事態に対して使うのが用法になるため、安易に公言しないことを念頭に置いておこう。
「当面の間」の類義語
「当面の間」に違和感を覚えるのなら、いくつもある類義語も把握しておくと良い。以下では3つの類義語を紹介していくので、早速見ていこう。
■当分の間
「当面の間」の類義語として、最も代替案になるのが「当分の間」といえるだろう。漢字が一字違うだけで覚えやすく、意味も全く同じだ。
「当分」には「ここしばらく」や「さしあたり」の意味があり、「当面の間」と一致している。
また、一般的には「当面」よりも「当分」の方が、口頭でも文面でも違和感なく受け入れられやすい。
■暫定的
「当面の間」と一緒に覚えておきたいのが「暫定的」だ。「暫定的」とは、確定までの間、一時的にそうしておくさまという意味合いを持つ。
確定するまでの定めが明確ではないため、「当面の間」と共通する類義語として使えるわけだ。
また、ビジネスでも「今回の会議での決定は、暫定的に続けていく」という使い方ができる。
■当座
意外性のある類義語としておすすめしたいのが、「当面の間」と同じ意味を持つ「当座」だ。当座と聞けば、真っ先に「当座預金」が脳裏に浮かんでもおかしくはない。
しかし、実は「当座」には「しばらくの間、一時」の意味も持っている。また当座預金は定期預金と違い「期間の定めがない決済用預金」でもあるため、時期を確定しない「当面の間」と同様といえるわけだ。
「当座の目標は前年比を3%以上上回ることとする」といった活用ができる。