菅原由一税理士がわかりやすく解説 〜「定額減税4万円って何?」
6月から実施される定額減税では、1人あたり4万円が減税される。ただし、この定額減税は仕組みが複雑であるため、「難しくてわかりにくい」という声が多いようだ。そこで、今回は、どのように減税されるのかなど、定額減税の仕組みをシンプルにわかりやすく解説したい。
■定額減税の仕組み
定額減税では、対象者1名当たり所得税が3万円、住民税が1万円減税される。対象となるのは、同一生計配偶者または扶養親族(以下、「扶養家族」と記載)になる。ただし、給与が2000万円を超える人は対象外。
ここでは単身で扶養家族のいない、月給30万円の給与所得者Aさんを例に説明する。
月給30万円のAさんのひと月当たりの社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料など)は4万4250円、所得税は5950円、住民税は1万2741円掛かり、手取りは23万7059円だ。
定額減税実施後の月給は(図1)のようになる。
(図1)
7月から10月の手取りは6月より下がったが、基本より上がった。11月は5700円の所得税がかかっているので、所得税の定額減税は11月で終わることがわかる。
12月は年末調整があり、所得税の金額は人によって異なるため、手取り金額は不明となる
■定額減税の流れ
では、なぜ上記(図1)のような流れになるのか。
所得税の3万円は毎月の源泉所得税5950円から減税される。6月から10月の5か月間で2万9750円が減税された。3万円のうち2万9750円が減税されたので、まだ250円減税できる。
11月の所得税は本来5950円だが、残りの減税額250円を引いた5700円となる。ここで3万円すべて減税となった。
これは、ボーナス(賞与)なしの月給だけで計算したが、夏のボーナスがある場合は、ボーナスの所得税からも減税できるため、定額減税が早く終わる可能性もある。
住民税の計算は所得税と異なる。国は、今年の6月は定額減税の影響で住民税を徴収しないと決定(※1)。
そのため、7月以降の住民税は、(図1)の計算により1万2990円となる。
※1 住民税は原則6月から翌年5月までの12か月間給与から徴収するが、今年は定額減税の影響で7月から翌年5月までの11か月間となる。
これらの計算はすべて扶養家族のいない単身者が対象。一方、扶養家族がいる場合、所得税は本人の3万円の他、扶養家族1人につき3万円、住民税は本人の1万円の他、扶養家族1人につき1万円減税される。
例えば、専業主婦の奥さんと子供が2人の世帯は、定額減税も所得税は12万円(4万円×4人)、住民税は4万円(1万円×4人)の合計16万円になる。
所得税の場合は6月から12月までの間に12万円減税しなければならないが、単身者の3万円でも11月までかかったことを考慮すると困難だ。
定額減税がしきれないと見込まれる人に対しては、「調整給付」という形で、おおよその差額が個人住民税を課税する市区町村から給付される。手続等に関しては、居住する市区町村によって異なっている。
※試算などは2024年4月時点の情報を元に作成。
調査概要
調査期間/2024年5月7日~8日
調査手法/インターネット調査
調査対象/25歳以上60歳未満で年収2000万円未満の会社員(正社員)の男女全国
有効回答者数/929人(20代:276人、30代:365人、40代:191人、50代:97人)
調査機関/Freeasy
構成/清水眞希