「ナッジ」を活用する際の注意点
ナッジを正しく使えば、期待以上の効果がもたらされますが、正しく使えない場合は意図せぬ結果を招きます。ナッジを活用する上で注意すべき点を解説します。
■正確なデータを参照する
ナッジでは、データの利用が欠かせません。例えば、がん検診の受診率を上げたいとき、『〇〇区の住民の2人に1人ががん検診を受けています』と情報を発信することは有効です。
ただし、使用するデータが間違っており、実際は4人に1人だったとすれば、うその情報で人々を操作していると思われかねません。
ナッジを活用するに当たっては、 IoTやAIといった最新のITツールを導入し、データの収集・分析・活用が正しく行える環境を整える必要があります。
■悪いナッジに陥らないようにする
世の中には、賢い意思決定を妨げる『悪いナッジ』も存在します。人々を不利な選択肢に誘導するナッジは、『sludge(スラッジ)』と呼ばれ、社会から一掃する対策が進められています。いくつか例を挙げましょう。
- サブスクリプションサービスの解約手続きを複雑にする
- 苦情の申請フォームに多くの設問を設ける
- サービスの退会ページで、退会するデメリットを何度も表示させる
スラッジを行う企業は、社会的な信用を失うだけでなく、法的な制裁を受ける恐れがあります。ビジネスの戦略としてナッジを活用する際は、対象者の利益を損なっていないかどうかをよく確認しましょう。
「ナッジ」をビジネスシーンで活用しよう
ナッジは、罰則や金銭的なインセンティブを使わずに、人々を賢い選択へと導く手法です。公共政策の実効性を高める目的で使われるケースが多いですが、ビジネスシーンでも応用できます。正しく使えば、顧客にも自社にも多くのメリットがもたらされるでしょう。
一方で、データを正しく活用できない限り、ナッジの実践は困難を極めます。自社の利益を追求しすぎれば、ナッジがスラッジになりかねません。ビジネスシーンで活用したい人は、ナッジのテクニックやフレームワークを学ぶことをおすすめします。
構成/編集部