目次
「さることながら」の言葉を聞いた時、何となくの理解したつもりで、誤った使い方をしてしまうのも少なくないだろう。
本記事では、いざ使う際に間違った使用で恥をかかないよう、注意点や例文も紹介しながら解説していく。ぜひ最後までご覧になり、自信を持って使えるように覚えていってほしい。
「さることながら」の意味とは?
「さることながら」の「さること」は「その通り」であり、「ながら」は「並行する意味」を持つ言葉である。「さることながら」を辞書で引いてみたところ、以下の通りの意味である。
ある事柄を当然の前提として、さらに追加事項を明かす、といった意味で用いる表現。それはもちろんのことであり、しかも単にそれだけではない、といった意味合い。 引用:デジタル大辞泉(小学館) |
「ある事柄」と「追加事項」は、AとBといった並列で成り立つことを意味している。どちらか一方が欠けると表現が破綻してしまう。
また、「さることながら」は、みんなが知っている事柄に対して、ほかにも価値があることを補足する際に使われる。
漢字では「然ること乍ら」と表記する。
「さることながら」の使い方と例文
「さることながら」はビジネスの場がメインになるが、ほかにもシーンはあるため早速2つの例文をチェックしていこう。
■ビジネスシーンでの例文
「営業」と「製品」に関する例文を以下に示す。
・「彼の講師としての能力もさることながら、説得力の高さは営業部も欲しがるに違いない」
・「新製品は機能性もさることながら、大幅な軽量化が何と言っても魅力的だ」
社内講師を務めた人物が営業部の人材として求められるシーンを指している。講師は人事部やその他の部署でも通用する使い方である。
新製品の例では、取引先からの導入時に機能性と軽量化を強調している。
■公演にまつわるシーンでの例文
ビジネス以外でも使用できる「さることながら」を、公演での例文を通して示す。
・「指揮者のパフォーマンスもさることながら、1人1人の演奏力も琴線に触れるほど秀逸だ」
・「彼はステージマジックの高精度もさることながら、目に焼き付けたいのは唯一無二のイリュージョンであろう」
公演のジャンルは幅広く、適切に使うことができる。ただし固い表現であるため、立場や年齢に応じて使うことが望ましい。
「さることながら」を使う際の注意点
「さることながら」を使う際には、前半と後半の要素に矛盾がないことが重要である。以下に注意点を示す。
■前半の特徴が周知されていない事柄
「さることながら」で失敗する例として、相手が知らない事柄を述べてしまうことが挙げられる。例としてハイブランド品を挙げる。
・「当ブランドの良さもさることながら、弊社の公式アンバサダーの彼女は人を惹きつける力に優れています」
ブランドの歴史や知識がない人には、この表現は伝わりにくい。
■核となる要素は後半に置くこと
「さることながら」は、2つの事柄を並列させるため、強調したい要素は後半に置くことが重要である。周知されている事柄を前半に、強調したい内容を後半に置くと効果的である。例えば、社員の外資系企業の出向先をシーンとして、「ネイティブレベル」と「万能」を事柄とする場合。
「彼のネイティブレベルの英語もさることながら、契約に漕ぎ着ける営業力が当社の自慢です」
このように使うと、本質が伝わりやすい。
「さることながら」の言い換え表現
「さることながら」はビジネスメールやプレゼンの機会が少ない業種なら、言葉を知らない人がいても不自然ではない。以下より、「当然ながら」「言うに及ばず」の言い換え表現を紹介していこう。
■当然ながら
「当然ながら」は「さることながら」と比べ、汎用性が高い理由からおすすめしたい。「当然」は「当たり前」を、「ながら」は二つの動作が並行する接続助詞だ。
例えば「1日も早い独り立ちのため、研修中は当然ながら中間管理職を同行させる」といった使い方ができる。
同じ「ながら」が付く同士だが、「さることながら」より「当然ながら」の方が馴染みもあるため、後者が一般的な使用としては適切だろう。
なお、「当然のことながら」とした表現でも全く問題はない。
■言うに及ばず
「ながら」を使用しない言い換え表現なら「言うに及ばず」も覚えておこう。「言うに及ばず」は、「言うまでもない」「もちろんのこと」が意味合いになる。
例えば「彼の実力の足元にも及ばない」といった表現なら、見聞きしたこともあるはずだ。実力に「達していない」という解釈が適切だが、「言うことには及ばない」とすれば理解も早くなるだろう。
並列での例文だと「彼は英語が万能なのは言うに及ばずだが、イタリア語とフランス語までマスターしたトリリンガルだ」という表現もできる。