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領収書の上様について、読み方や意味を理解していない人は少なくない。
また、使用シーンが曖昧になっていることも多々見られる。
そこで本記事では、領収書の上様の意味や、使用不可のケースを事例ごとに紹介していく。さらに宛名や但し書きの正確な記載方法、厳禁となるパターンも挙げていくので、ぜひ参考にしてみてほしい。
領収書における「上様」の意味や由来
まず読み方を確認しておこう。上様は「うえさま」と呼ぶのが一般的である。
そもそも上様とは、あて名の代わりに書く敬称のこと。言葉自体には、対象となる人を尊敬して呼ぶ語としての意味がある。
由来については様々な説がある。1つ目は、江戸時代に将軍に敬意を払うため、直接の名前ではなく上様と呼んだことを始まりとする説だ。2つ目は時代劇で殿様を上様と呼称することが由来となっているケース。3つ目は、実社会で上位の顧客を上様と略したことが始まりとされる説である。
したがって、ここでは尊敬の意を込めたものが由来だと理解しておこう。
領収書の上様はNG?使える場合と使えない場合
領収書に上様と記載されていると「NGではないのか」という疑問があるようだ。しかし全てが厳禁にはなるとは限らないため、上様の使用可能・不可能なシーンをそれぞれ確認していこう。
■上様が使えるシーン
上様の利用には、消費税法が大きく関与することを覚えておきたい。消費税法第30条9項1号に領収書には「発行者」「日時」「取引内容」「金額」「受取人」の記載が必要と定められている。「受取人」の項目が「上様」では認められないと考えられるだろう。
しかし、以下の業種では例外として認められるケースもある。
・飲食業
・小売業
・旅行業
・旅客運送業(バス、鉄道、航空会社等)
・駐車場業
なぜこれらが例外とされているかだが、ポイントのひとつとして会社支出として経費で落とせるかどうか、がある。例えば飲食店の場合、接待で使われたのなら上様と書かれている領収書に接待伺いを付ければ会社における支出と証明できる。
■上様が使えないシーン
個人の支出を会社経費として計上することは認められないので要注意だ。もし無理に経費として計上するならば、不正経費としてお咎めを受けるリスクもある。
また、そもそも宛名や発行者住所の記載がない領収書は、認められない可能性が高いため、使用を控えるべきだと考えておきたい。
領収書の宛名や但し書きの注意点
領収書の上様を使う際は、宛名や但し書きの注意点も守らなくてはならない。間違いを起こさないよう、事例をチェックしていこう。
■宛名には正式名称を記載する
宛名には、略称を用いることなく正式名称を記載したい。例えば、山田太郎株式会社なら「山田太郎(株)」ではなく、「山田太郎株式会社」と記載するよう注意しよう。ちなみに、略称を使用してはいけないのは、学校法人などの法人格も全て同様だ。
ほかにも、「山田太郎株式会社」と「株式会社山田太郎」のように、「株式会社」の位置にも注意したい。会社の正式名称に合わせて、適切に記載することが求められる。
■但し書きは詳しく記載する
但し書きも詳しい記載を心がけよう。失念していると、自身や経理担当者が困ることにもなる。
仮に「品代」とだけ書かれていたらどうだろうか?何に使われたかわからないため、経理担当者に迷惑をかけてしまう。
また使途不明金になるため、税務調査があった場合に不正を疑われても不思議ではない。
■自分で修正を行うのは避ける
受け取った領収書に間違った情報が書かれていることもある。
金額のミスがあったとしても、自身で修正しないようにしよう。もし、のちに税務調査があったなら、金額修正は最もリスキーな行為になる。過大申告だった場合、水増しの疑いから刑法159条の私文書偽造罪に問われる可能性も含むからだ。
また水増しが悪質と判定された場合は、重加算税という身の毛がよだつ後悔にも繋がりかねない。
なお、領収書には日付・宛名・但し書き・金額・発行者の住所名称が記載事項だが、自分での修正は誤魔化しを疑われやすい。誤りを見つけたら、発行者から新たに発行してもらうようにしよう。
領収書の上様は原則として使用しないのがベター
領収書の上様は、飲食・小売・旅客運送業など、一部の例外を除いて使用しないのが正解だ。オフィスの規模が大きければ経理の負担増、一方で税務調査でも弁明できない危険性を含むだろう。
楽といえども修正作業がのし掛かると、結果として膨大な労力や損も受けかねない。日付・宛て名・金額などの正確な記載を遵守し、習慣化させて手間と感じないよう思考を柔軟にしていこう。
文/shiro