スクウェア・エニックス・ホールディングスの成長に陰りが見え始めました。
2024年3月期の営業利益は前期比26.6%減の325億円。2期連続の営業減益となりました。しかも主要プロジェクトの開発を中止したことに伴う、コンテンツ等廃棄損220億円を計上。その影響で純利益は前期の7割減少して149億円となりました。
主力のファイナルファンタジーが低調なことが取り沙汰されています。確かにそれが業績に響いていますが、根本的な問題としてスクウェアが事業に対して積極的な投資をしないことがあるように見えます。
7年ぶりのシリーズ最新作「FINAL FANTASY XVI」が発売されたが……
発売初日に500万本だったタイトルが1週間で300万本に失速
スクウェアは2023年6月22日に超ビッグタイトルの「FINAL FANTASY XVI」をリリースしています。シリーズ16作目で、販売開始から1週間で300万本を突破しました。しかし、前作の「FINAL FANTASY XV」は発売初日で500万本に達しています。
最新作は勢いがありませんでした。
スクウェアは、ファイナルファンタジーとドラゴンクエストの2タイトルへの依存度が高くなっています。7年ぶりに主力のファイナルファンタジーの新作をリリースしたにも関わらず、2024年3月期の売上高は前期比3.8%増の3563億円。低調と呼ぶに相応しいものでした。
※決算短信より筆者作成
スクウェアは2024年3月期の期首において、売上高を3600億円と予想していました。40億円近く下回って着地しています。売上で広告宣伝費などをカバーしきることができず、営業減益という結果となりました。
2025年3月期の売上高は、前期比13.0%減の3100億円、営業利益は同23.1%増の400億円を予想しています。主力タイトルの販売が振るわないことで大幅な減収。プロジェクトの見直しを行ったことで外注費などの経費を削減し、営業増益となるのでしょう。
「FORSPOKEN」「バビロンズフォール」が不発
「FINAL FANTASY XVI」はヨーロッパの中世をモデルにした世界観で、綿密な時代考証を行ったあとが伺えます。ファンタジーの王道とも言える世界観です。
しかし、設定や世界観を複雑に作り込んだためか、ストーリーがわかりづらいなどといった声が聞こえてきます。世界観の完成度に注力し、斬新さを失った印象を受けます。
ゲームは人によって感じ方が異なるとは言え、販売本数が振るわないという現実が、評価が高くないことを物語っているでしょう。
スクウェアは特定のタイトルに依存していることを課題と捉えており、「新規IP創出への挑戦」を中期経営計画に盛り込んでいました。
2023年1月に完全新作の「FORSPOKEN」を販売するも不発。当時の社長だった松田洋祐氏自らが厳しい結果に終わったと説明しました。
同年2月には、スクウェア・エニックスがプロデュースをした新規IPの『バビロンズフォール』のサービスも終了しています。
スクウェアは人気シリーズを成功させることもできず、ヒットIPを創出することもできていないのです。