セダンの人気が下降傾向にある今、セダンの存在意義が問われている。今回は、クルマ造りの基本が詰まっているといわれるセダンのお手本のような2台をピックアップ。どこまで進化しているのか、確かめてみた。
最近、世界中の自動車メーカーがモデルチェンジを発表するたびに、4ドアセダンが姿を消していることにお気づきだろうか。理由を聞くと「売れないから」という声が多い。今やファミリーカーの中心はSUV。造っても売れないセダンを開発するより、売れるSUVに注力したいというわけだ。
だが、昔から「乗用車の基本は4ドアセダンにある」といわれてきた。シャーシやボディーなどクルマの基本構造は4ドアセダンがベースになっている。ここが完成してからほかの車種を開発するというのがこれまでの常套手段だった。
メルセデス・ベンツとBMWは、2023年の後半から2024年前半にかけて主力車種の『Eクラス』と『5シリーズ』をフルモデルチェンジ。車種展開を見ても4ドアセダンを中心に、忠実に造り込んできたことがわかる。今回はこの2台を乗り比べてみた。
先に発表したのはBMW。2023年7月に発表したが、デリバリー開始は2023年後半から。バリエーションは、2Lのガソリンとディーゼルターボのそれぞれに48Vマイルドハイブリッド、100%電気のEV。ステーションワゴンは今年2月に発表された。
メルセデス・ベンツ『Eクラス』は今年1月にセダンとステーションワゴンを同時に発表し、2月から発売された。セダンのラインアップは、2Lのガソリン、ディーゼルターボ、2Lガソリン+プラグインハイブリッド。ガソリンとディーゼルは、エンジンと変速機の間に電気モーターを配し、短時間ブーストが可能なマイルドハイブリッドシステムを備えている。
『5シリーズ』に乗ってみると、2Lのエンジンは2000回転あたりからトルクが太くなり6000回転まで上昇。Sモードに設定して走ると、重めの操舵力とタイトなコーナーでの回頭性の良さが印象的だった。0→100km/hの加速は8秒台前半。圧倒的なパワーというより運転を楽しませるセッティングだ。
『Eクラス』は先進性を感じさせるインテリアが新鮮だが、ATのシフトレバーはこれまでどおりコラムにあるなど、新旧の装備が混在している印象を受けた。ただ、きめ細かい設定ができる先進安全装備は初心者や運転に不慣れな人には便利なはず。運転しやすく、安心して乗れるクルマに仕上がっている。
長距離ドライブに適したスポーティーなセダン
BMW『523i』
Specification
■全長×全幅×全高:5060×1900×1515mm
■ホイールベース:2995mm
■車両重量:1760kg
■排気量:1998cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHCガソリンターボ
■最高出力:190PS/5000rpm
■最大トルク:310Nm/1500〜4000rpm
■変速機:8速AT
■燃費:17.0km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:798万円
※「Exclusive」
ツインヘッドライトは縦長のデイタイムランプを採用。キドニーグリルも垂直方向に拡大し、左右のグリルがクローム枠で一体化した。グリルはライトアップ機能を備えている。
全長は『Eクラス』より100mm長く、ホイールベースは35mm長い。ロングノーズ、ショートデッキという往年のスポーツカーのようなバランスを感じさせるプロポーションだ。
左右に分かれた細長いテールライトはキープコンセプトでBMW車の特徴でもあるL字形に点灯するライトを採用。リバースライトはバンパー内側に配置されている。