今年2024年、もうすぐ乗れるかもしれない夢のような電動アシスト自転車が『スマートEバイク』だ。
何が凄いのかと言うと、電気の力でペダルを漕ぐ力をサポートするだけでなく約2年間も充電なしで走り続けられるという。その技術にはトヨタグループなど大手企業からも革新的な技術との評価を受け、さらに世界も注目している。
開発したのは、熊本のベンチャー企業ハロースペース。代表取締役の岩下卓利さんは「さまざまな乗り物に大変革が起きる」と、その技術、そして前代未聞の自転車に期待を込める。
最初に構想したのは『超電導自動車』?
果たして、歴史を変えるかもしれない自転車はどのようにして生まれたのか?開発秘話と展望を聞いた。
――スマートEバイク開発のきっかけを教えてください。
「アメリカにMBA留学していた際に新エネルギーについて学ぶ機会があり、その面白さと可能性に魅了されたことが開発のきっかけでした。というのも、幼い頃から宇宙に憧れを抱いていたのですが、今の技術では燃料を積んだ分しか宇宙を推進できず、せいぜい辿り着けるのは月や火星が精一杯。我々人類が自然エネルギーをもっと効率よく使えるようになれば、燃料なしでどこまでも宇宙を推進することができるかもしれない。そのためにはまず、新エネルギー技術を開発し、イノベーションを起こすことが必要だと思ったんです」
遥かなる宇宙への憧れから、エネルギー産業に従事した岩下代表。そして、あの出来事が人生を変えることに。
「10数年前、経営企画や新規事業開発などの仕事に取り組んでいましたが、2011年3月の東日本大震災で尋常でない体験をし、それを機に新エネルギーでサステナブルな社会をつくっていきたいと強く思うようになりました。スマートEバイクに繋がる、新エネルギーをテーマにした会社を立ち上げたのもそれがきっかけです」
岩下代表が立ち上げたハロースペースは2018年創業。化石燃料・原発へのエネルギー依存社会からの脱却を目指し、超電導技術や磁石を利用した新エネルギー技術や自立式次世代モビリティの研究開発に取り組んでいる。その中で生まれたのが、加速中も発電できる世界初の技術だった。
「実は最初から加速中に発電できる技術を開発しようとしたのではなくて、新エネルギー全般について古今東西あらゆる情報を調べていたんです。その中で特に興味深いと感じたのは、『磁力』『重力』『量子』『共振』『水素』『超電導』『ニコラ・テスラ』でした。
それらを元に様々な専門家に助言を頂きながら、リニアモーターカーの新技術を独自にトランスフォームした、『超電導自動車』の構想を2年ほどかけてブラッシュアップしていきました。
超電導自動車実現の過程で、チーフエンジニアに構想を伝えたところ、それを簡素化した『自家発電型のEバイクを作らないか?』と提案されたんです。当初は4輪から開発しようとしていたのですが、まずは完全な超電導ではなく、その技術の一部を使用した半超電導の自家発電型Eバイクを開発することにしました」
自家発電を実現した世界初の技術とは?
こうして始まった“自転車革命“。スマートEバイクで注目されたのは、世界初の技術と言われる“回生ドライブシステム”だ。
「現在、ほとんどのEV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド自動車)に搭載されている回生ブレーキシステムはご存知でしょうか?これは、減速時にモーターを発電機として機能させる技術で1世紀以上前からあったんですが、加速中は発電できないんです。しかし、当社の新技術『回生ドライブシステム』は加速中及び、惰性走行中も発電可能で回生ブレーキシステムとの併用も可能です」
「誤解を避けるために明言しておきますが、これは永久機関ではありません。既存の物理学で説明できる範囲の技術ですが、詳細は今のところ企業秘密です」
ハロースペースが生み出した「回生ドライブシステム」は、あらゆる電動モビリティやハイブリッドモビリティに応用可能な技術だという。
「現状、スマートEバイク用の回生ドライブシステムを開発中ですが、この技術を完全に超電導化できればモーターバイク、自動車、船舶、航空機、スペースシップと様々な乗り物がクリーンモビリティとして普及していくと思っています。
これが普及することで、EV全般の価格低下も期待できますし、バッテリー容量の大幅削減も見込める。ガソリン車からEVへのシフトも飛躍的に進んでいくかもしれません」
そんな世界初の技術を備えたスマートEバイクだが、他にもこんな魅力がある。
『運動エネルギーから電気と仮想通貨を創出可能な生成型パーソナルモビリティ』
カーボンクレジットと紐づいたブロックチェーンとIoTデバイス、センサー、回生ドライブシステムがコネクトし、環境と健康にコミットしながら電気とお金をつくることができる。
『無人運転機能搭載型も開発中』
無人運転でユーザーのもとに移動し、ユーザーがどこで乗り捨てても近くのステーションまで無人で帰還可能。デリバリーモビリティとしても応用できる。