開始早々アプリで不具合を起こしたVポイントの行方
房野氏:三井住友グループの「Vポイント」と、TSUTAYAなどのCCC系による「Tポイント」が統合して、新しいVポイントになりました。
法林氏:新聞や雑誌のVポイントの記事を読んだらスゴい騒ぎ立ててるんだけど、そんなにすごいことかな? と思った。Vポイントは出遅れた人たちの集まりだと思うんだけど、そんなに騒ぎ立てることかな、みたいな。
石川氏:結局、会員数の比較表でしかなくて、そういうことじゃなくない? って思う。
法林氏:必要な部分で全然評価されていない。かつ、ユーザーはみんな、お店や貯めるポイントによって使い分けていると思う。Tポイントは単に、かなり以前からあって、今はあまり使われなくなったけど、やめていない会員が大量にいるから会員数が一番多いだけの話でしかないと思う。
石川氏:他のポイントもそれぞれ1億とか9000万会員ぐらいいるじゃないですか。みんな複数のポイントカードを持っているし、使っていないカードもたくさんある。単なる会員数じゃなくて、どれだけアクティブに使っているかを本当は見なくてはいけないと思う。
法林氏:そこが評価されてないんだよね。
石川氏:やっぱり、毎月毎月携帯電話の通信料を払っているので、そこに対するポイントが入ってくるキャリアのポイントが強い。「auマネ活プラン」に入ったら、1000ポイント近く入ってくるし。
石野氏:ソフトバンクの「ペイトク」も4000ポイントとかガッと入ってくる。あれが大きい。Vポイントはそれがないというか。
法林氏:Vポイントは厳しいと思うな。さっき、話に出た旧Amazon Mastercardゴールドは、管理が三井住友のVpassなんですよ。なのに、何もアナウンスがなく、かつAmazonがdポイントと組んだことを考えると、うーん……。さすがにVポイントは厳しいんじゃないかなと。スタートからしてダメじゃないって感じがする。Amazon Mastercardも、ようやく「新ポイント誕生記念!ID連携キャンペーン」っていうバナーが入るぐらいで、どこにもVポイントの話が出てこない。
石野氏:ひどいのが、TポイントとVポイントを連携するのは、どうぞ勝手にやってくださいという感じなんですけど、サービス開始直後の不具合の巻き添えをくらって、Vポイントアプリは起動しないわ、Vpassアプリは立ち上がらないわ、VポイントPayアプリは立ち上がらないわ。2日目になってもそうだった。
法林氏:TポイントはもともとTSUTAYAのカードから始まって、みんな大抵持っていて、ソフトバンクのポイントと連携するようになった。楽天は楽天市場があり、ドコモはdポイントで、auはau WALLET ポイントからPontaポイントになった。Vポイントはなんというか、これを持っているからVポイントを貯めるよねっていうようなものが思いつかない。「Olive」はあると思いますけど。
房野氏:Vポイントは今までクレジットカードを使わないと貯まらなかったんですよね。
法林氏:そう。Vポイントって何で貯まるの? って思っちゃう。海外でカード決済すると貯まるのはわかったけど、でも、「ここで使えば」とか「これを持っているからVポイントなんですよ」っていうネタがない。
石野氏:コンビニでスマホのタッチ決済を使うと7%還元ですね。
石川氏:ポイントって、決済で貯まるポイントと、お店で提示すると貯まるポイントがある。Vポイントはオープンな仕組みがなかったけれど、旧Tポイントと組むことで、お店で提示してポイントもらうことができるようになった。ただ、以前もこの座談会で言ったけど、Tポイントはポイントがメインのビジネスモデルなので、やたらめったらお金がかかる。そこを加盟店が嫌がった。ビジネスモデルとして、いろいろ厳しい。
法林氏:現状のVポイントは、クレジットカードを作ってない人にとっては、何もない状況。クレジットカードも三井住友カードじゃないと貯まらない。でも、三井住友カードを新たに作るきっかけって、あまりないと思う。
石野氏:ANAカードだとポイントを自動でマイルに変換させることができるので、Vポイントの存在感が薄いんですよね。
法林氏:僕もJCBカードのポイントを自動的にマイルへ変えるようにしているので、Oki Dokiポイントはほとんど貯まらない。それでも、ボーナスポイントとかがちょっと貯まるんだよね。ボーナスポイントをマイルに換えようとすると変換率が悪いので、Amazonで使ったり、AppleのiTunesカードに使ったりとか、他サービスの残高に交換できるので、それで使ったりする。いずれにせよ、クレジットカードは何かと組まないと厳しい気がするなぁ。
房野氏:三井住友カードは、以前はステータス性が高い印象もあったんですけどね。
法林氏:ナンバーレスは先駆けてやったけど、今は他社もやるようになって珍しくなくなった。
石野氏:昔はプロパーの三井住友カードはちょっとステータスがあったんですけど……。
房野氏:Oliveをやり始めた頃に、会費無料の大盤振る舞いをしたんですよね。
法林氏:結局、そこじゃないですか? 大盤振る舞いするけど、いずれやめる運命っていうのは、みんなわかっている。だから、もらうだけもらってやめましょう、みたいになっている。
石川氏:そう考えると、やっぱりキャリア4社、通信があって銀行があって証券があって、それにクレジットカードがあって、ポイントが回って行くところに、みんな集約していくのかなと思います。
法林氏:結局、毎月支払いがあって、毎月ポイントが入ることの大きさは、今回のVポイントの件で実感した。こんなに差があるのかと。三井住友銀行に口座を持っていて、Oliveで決済とかを全部やっている人はいいだろうけど、そうじゃないと何も興味が湧かないというか。
石川氏:三井住友カードを持っている人も携帯電話を持っているので、結局キャリア優位になっていく。
……続く!
次回は、新型Nothing Phoneについて会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
文/房野麻子