ゲーム会社のコーエーテクモホールディングスは、2024年3月期の営業利益が前期の3割減となりました。しかし、経常利益は前期を上回り、純利益は前期の1割増で着地しています。
襟川恵子会長による資産運用が好調で、営業外収支が経営統合以来最高となったのです。
営業利益の6割に相当する運用益を叩き出す
コーエーは代表取締役社長の襟川陽一氏が『信長の野望』を大ヒットさせて成長の足掛かりとし、その後も『三國無双』や『デッド オア アライブ』などのヒット作を生み出し続けて国内を代表するゲーム会社の一つとなりました。
しかしそのかたわらで、妻の恵子氏が資産運用を担い、それが会社に巨額の利益をもたらしているという一風変わった会社でもあります。決算期を迎えるごとに、本業以外の営業外利益にも必ず注目が集まります。
2024年3月期の営業利益は284億9400万円でした。株式の売却益などで得られた営業外収益は357億2600万円で、投資損などの営業外費用は184億7900万円。差し引き172億4700万円の営業外利益を得ています。
この営業外利益は大部分が資産運用で得られたものです。
※決算短信より筆者作成
2023年3月期の営業外利益はわずか7億6600万円。このとき、アメリカが急速なインフレを背景に利上げを強行。株式市場は大荒れとなりました。更にコーエーは、クレディ・スイスのAT1債で41億円もの損失を出してしまいます。
AT1債とは債券と株式の中間的な性格を持つ証券。2023年3月にクレディ・スイスがUBSに買収される際、2兆2600億円相当のAT1債を無価値化することを決定しました。AT1債は破綻すれば株主の取り分がゼロになるという特性があります。アメリカの大手資産運用会社が被害を受けたと言われていますが、まさかのコーエーも打撃を受けることとなったのです。