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過熱する転職市場で〝選ばれる会社〟になるために必要なキーワード「Closed to Open」とは?

2024.05.10

労働力人口の減少による人手不足、人的資本経営の推進、働く人の価値観の多様化。そして、ビジネス環境が激しく変化していく中で、企業経営の骨格とあも言える人事制度そのものの変革が求められている。

そこでリクルートは、企業で働く人事担当者5,048人(※)を対象に、人材マネジメントをテーマとした、「採用、育成、評価、賃金など人事分野別アンケート調査」を実施したので、注目のポイントをピックアップしてお伝えしよう。

人手不足を背景に変わる「若い世代の就業観」、選ばれる企業への変化が必要

転職市場は過熱しており、働く人の転職の機会やキャリアの選択肢が増えている状況にある。人手不足を背景に、労働市場(就職・転職市場)の選択権が個人側に移っていく。

そして、若い世代を中心にキャリアオーナーシップを持って、主体的に働く場所を選んでいく人が増えていくと考えられる。

今後の労働市場においては、ますます人が動いていく「人材流動化」が、企業を取り巻く大きなテーマになるだろう。従業員が会社に居続けることが前提ではなくなってきている。

そのような中で、「働く人から選ばれる」企業になるためには、これまでの雇用慣行のアップデートが必要になってくる。実際、企業側も従来のやり方を見直す必要性を感じているようだ。

人事担当者に企業の人事制度や雇用慣行を変える必要性を感じているかどうか確認したところ、6割以上の人が必要性を感じていると回答していた。

働く人から選ばれる企業へと変化するために大切となる考え方が「Closed to Open」だ。

図表5は、今回の調査結果を分析することによって見えてきた、変化対応に積極的な(人事制度を変える必要性を感じており、なおかつ変化に対応できている)企業群の特徴や取り組みをまとめたものだ。

これらの企業は、これまで内向きであった人事制度や雇用慣行を外向きに開いていき、人材のまだ使われていない、隠れている能力を解放していく取り組みを進めている。

一口に「人事制度」と言っても、採用・育成・評価など複数の分野がある中で、それらの制度ややり方を内向きから外向きに開いていく人事改革を行っている。

多様な人材に開かれた採用を行い、その人たちの主体的キャリア形成を支援し、フラットにパフォーマンスを評価し、遇すること。さらには、外部の人材や場を活用することを通じて、組織の求心力と遠心力の均衡を図る雇用の在り方。それが「Closed to Open」だ。

働く人と企業をつなぐアルムナイネットワークの効果

「アルムナイ」とは、卒業生や同窓生を指す英単語で、人事領域では「企業の離職者・退職者」という意味で使われている。

アルムナイを採用するケースが出始めたほか、アルムナイネットワークを維持して優秀な人材の採用に役立てる企業も増えている。調査結果によると、アルムナイネットワークの構築に取り組んでいると回答した人事担当者は約3割であった。

アルムナイネットワークの効果を、企業側の目線と働く人の目線でまとめたものが図表27だ。

企業にとっては、人材採用の観点での人的資本のメリットに加えて、アルムナイネットワークから得られるアドバイス・フィードバックやさまざまなリレーションといった、知的資本・関係資本のメリットが考えられる。

実際に、今回の調査結果からは、アルムナイネットワークを構築している企業の方が、従業員エンゲージメントの数値が高いという結果が出た。単純にアルムナイネットワークを構築しただけで、従業員エンゲージメントが高まるとは考えにくい。

それらの企業はアルムナイとの関係を持ち続け、彼ら彼女らの元社員としてのアドバイスや本音に耳を傾け、その声を企業経営や人材マネジメントに活用している結果として従業員エンゲージメントが高まっていると推察される。

調査概要
調査⽬的:⼈材採⽤、⼈材配置から育成・評価など、企業の⼈材マネジメント全般における制度や運⽤の実態を把握する
調査対象:企業の⼈事業務関与者。具体的には、⼈事制度の構築や運⽤・採⽤・教育に従事している⽅(2年以上の経験を有し、これらの業務の「中⼼的な⽴場」あるいは
「検討や運⽤に主体的に関わる⽴場」の⽅)
調査地域:全国
調査⽅法:インターネットリサーチ
調査期間:2023年3⽉29⽇〜3⽉31⽇
有効回答数:5,048⼈ ※ただし、従業員規模30⼈以上の企業に勤める2,761⼈を集計対象とした

解説者:リクルート HR横断リサーチ推進部 HRリサーチセンター 津田 郁氏

日本型雇用慣行が変化していく中で、企業の人事制度や雇用の在り方の現在地を把握するべく、人事担当者向けの調査を実施し、データ集としてまとめました。

日本企業の雇用慣行は、長らく「終身雇用」や「年功序列賃金制度」を中心に据えた「日本型雇用システム」が特徴でした。しかし、近年、環境の変化により、この慣例的な雇用スタイルに限界が生じています。

バブル崩壊以降、少子高齢化や機械化の進展、新興国の成長などの要因が影響し、日本企業は新たな雇用スタイルへの転換を迫られています。現在多くの企業で、人事制度や雇用スタイルを見直す動きが活発になっています。

企業の雇用慣行は、働き方・賃金に限らず、家族・住まいといった、人々の生活に大きく影響します。

今回の調査では、現代に必要な、働く人と企業のより良い関係性や雇用の在り方とは何であるかについて、主に全国の人事担当者への調査結果を用いて考察しています。

調査結果から見えてきたキーワードは、「Closed to Open」です。企業には、これまで内向きであった雇用慣行を外向きに開き、眠っていた一人ひとりの可能性や潜在能力を解放していくような変革が求められているのではないでしょうか。

関連情報
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2024/0423_14242.html

構成/Ara

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