ロイヤルカナン スペシャルインタビュー中編
ロイヤルカナン社はフランスに本社を置く、犬と猫の健康を支える世界的企業だ。毎年、世界中の獣医療関係者が集まるシンポジウムを開催し、科学的な知見を共有している。4月上旬にモンペリエで開催されたシンポジウムでは64カ国以上から550名以上が参加した。
ロイヤルカナンの本社は「キャンパス」と称され、南フランスの豊かな自然に囲まれた広大な敷地に様々な施設が点在している。ここには、犬と猫の摂食行動を研究するペットセンターがあり、38種類の犬160頭と21種類の猫210頭が生活する。
様々な品種の犬猫が生活しており、住みやすい環境を維持している。
研究開発の部門では、科学と観察に基づく栄養バランスのフードを開発しており、その開発においては、持続可能な原材料の使用と環境への配慮も重視している。
今回は、具体的な研究開発内容や今後の課題について、ロイヤルカナンの研究開発部門のグローバル・バイス・プレジデントであるデニス・エリオット氏から詳しく話を聞いた。
–まずロイヤルカナンでの役割、研究開発では何をしているのか教えてください。
「私はロイヤルカナンで、研究開発部門(R&D)を世界規模で統括している責任者です。この部門では、栄養学者、動物栄養学の専門家、そして獣医師を含む約400人のプロフェッショナルが働いています。
我々のチームは、学術機関や獣医療業界の団体と協力し、共同でプロジェクトを進めています。これらのプロジェクトは、犬や猫の健康と栄養に関する理解を深め、犬と猫の健康管理を改善する新しい方法を開発することを目指しています。
また、私たちはブリーダーの方々とも協力し、開発中のペットフードのテストを行っています。この過程では、製品の問題点を特定し、改善するための厳格なチェックを実施しています。そして、R&D活動を通じて得られた知識を外部に共有しています。ロイヤルカナンにはさまざまな役割がありますが、私はこの仕事が非常に楽しいと感じています」
–ペットフードの開発において、どのような課題を乗り越えてきましたか?
「私たちは様々な難題に直面しながら、ペットフード開発において特に解決が難しい問題に取り組んできました。これらの問題の解決には時間がかかるもので、私たちの活動の中でも特に重要で困難な部分です。
例えば、アレルギーを引き起こすリスクが少なく、栄養バランスの取れたドッグフードとキャットフードの開発に成功しました。これらの製品は、特定の病気を持つ犬或いは、猫が食べることで、その病気の治療に役立つような栄養食として設計されています。
工場内の見学ツアーの様子。工場では、厳格な管理のもとフードが製造されている。
この製品は犬と猫が喜んで食べられるのはもちろん、アレルギーを引き起こさないように注意深く作られています。開発の過程では何百回ものテストを重ね、研究開発チームは多くの難題をクリアしてきました。これは大きな挑戦でした。
私たちの研究開発は、犬と猫が健康であることを維持または増進する製品を開発することに専念しています。長年にわたり、これらの問題を解決するために多大な時間をかけて投資をしてきました」
–研究開発における情熱の源泉は何ですか?
「私は愛犬3頭と愛猫4匹への愛情が大きな情熱の源泉となっており、彼らに良い環境を提供したいという強い願いがあります。この情熱は、仕事上の苦労を乗り越える助けにもなっています。私はビジネスの世界で研究開発を統括する立場にありますが、この職務も個人的な情熱と強く結びついています。
また、私はオーストラリア出身で、大規模な農家で育ち、小さい頃から動物に囲まれて生活してきました。その経験が、私に獣医師になる夢を持たせ、最終的にこの職業への道を歩むことになりました。もし時間を戻して他の職業を選べるとしても、私は獣医師という選択を変えないでしょう」
エリオット氏の個人的な情熱と動物への愛情は日本のビジネスパーソンも見習うべきだろう。今回のインタビューを通じて、ロイヤルカナンが単なるペットフードメーカーではなく、科学に基づいたアプローチで犬と猫の健康を世界的に増進させようとしていることがわかった。
取材・文/Inoue.x.