帝国データバンクが実施した2024年度の業績見通しに関する調査では、業績の下振れ要因として「人手不足の深刻化」をあげる割合がトップとなり、多くの企業が懸念している実態が明らかとなった。
実際に、2023年度の人手不足に起因する倒産件数は313件となり、過去最多を記録し前年度から倍増となるなど、事業継続の可否を決める大きな要因の一つといえる。
そこで同社では今後の業績維持・拡大を大きく左右する企業の人手不足の状況について、調査を実施。結果をグラフと図表にまとめて発表した。
本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。
人手不足割合は正社員で51.0%と高止まり、非正社員でも同様の傾向
2024年4月時点における全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感じている企業の割合は51.0%だった。毎年4月は新卒新入社員が入社することで人手不足が緩和される傾向があるが、前年同月比でもわずか0.4ポイントの低下にとどまり、高止まりが続いている。
また、非正社員では30.1%だった。前年同月から0.6ポイント低下し、正社員と同様の傾向がみられた。
■正社員・業種別ではITエンジニア不足の「情報サービス」が71.7%でトップ
正社員の人手不足割合を業種別にみると、主にIT企業を指す「情報サービス」が71.7%でトップとなった。18か月連続で7割以上と高水準が続いている。
当業種の企業からは「AIブームのなかで人材が確保できず、自社での開発を断念するなど案件数が一時に比べると減少傾向にある」(千葉県)や「開発案件は多く出てきているが、開発案件に対応できるスキルマッチした要員が不足しており受注に至らない」(新潟県)などの厳しい声が聞かれている。
また、活況なインバウンド需要がみられるなかで「旅館・ホテル」も71.1%で深刻な人手不足がみられる。その他、「建設」(68.0%)、「自動車・同部品小売」(64.9%)など6業種が6割台となった。
■非正社員・業種別では「飲食店」が74.8%でトップ、個人向け業種が上位に並ぶ
非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」が74.8%となった。引き続き高水準は変わらないものの、前年同月から10.4ポイント低下と人手不足の緩和がみられた。次いで「旅館・ホテル」(63.8%)も高水準で続いたが、「飲食店」と同様の傾向で大幅に低下している。
以下、「各種商品小売」(60.8%)など、小売・サービス業を中心に個人向け業種が上位に並んだ。
■「旅館・ホテル」「飲食店」の人手不足割合は低下、特に非正社員では従業員数の増加が背景
2024年3月には訪日外国人が初の300万人を突破するなど、行動制限のない「ポストコロナ」が到来してから1年が経過し、旅行需要は活況だ。
そうしたなか、「旅館・ホテル」は正社員において71.1%の企業が人手不足となり、深刻な状況が続いている一方で、8割に迫る水準まで上昇していた人手不足割合は2023年と比較して低下しており、2024年以降は7割前後で推移している。
引き続き他業種と比較して高水準であることに変わりはないが、低下傾向に転じた。
「飲食店」においても非正社員では74.8%と引き続き高水準ではあるものの、8割を上回っていた2023年から低下しており、「旅館・ホテル」と同様の傾向がみられた。
両業種ともに低下したものの、人手不足を感じている企業のなかで従業員数の変化をみると傾向はさまざまで、正社員が増加した割合はいずれも2割台にとどまった。一方で、非正社員の方が増加した割合が高く、特に飲食店では40.0%となった。こうした従業員数の増加が、両業種の非正社員における人手不足割合が前年同月から10ポイント以上低下した背景にあるといえるだろう。