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「めんどくさい仕事はしない。出社もしたくない」サイボウズ代表取締役・青野慶久さんに聞く『kintone』を生んだ〝ものぐさ習慣〟

2024.06.09

どんな意見や批判も聞いて前向きに議論する

──会社の仲間との関わり方に、何か気をつけていることはありますか?

「公明正大であること」ですね。

例えば当社では、経営戦略会議や取締役会から毎週のミーティングまで、すべて議事録をクラウドにアップして、オープンにしています。「このサービス、何でこうなの?」と思えば、誰でも当時の議論を読むことができ、自由に意見を出せます。その代わり「陰で愚痴ったりするのはよくないよ」とも言っています。

 面倒に見えますが、それが一番効率がいいんです。こうしておけば、仮にサイボウズがおかしな方向に進み始めたり、サービスに物足りない部分があったりしたら、多くの社員が批判してくれるはずです。当社のグループウェアには「青野への依頼スレッド」があるのですが、私がXで議論を呼ぶような発言をした時には、社員100人対私1人で90分も詰められました(笑)。

──落ち込んだりしませんか?

 いえ、「これでこそ、サイボウズがおかしな会社にならずに済む」とうれしく思いながら聞いていました。さらに、「批判や意見はしっかり生かすために聞く」とも決めています。難しい依頼も、まずは〝実現しよう〟と思って聞くんです。例えば「副業したい」と言われた時、頭ごなしに「まずはうちで実績を出すのが先でしょ?」などと言っていたら二度と意見は来ないでしょう。仮に実現できない提案があったとしても、前向きにしっかり議論して、その結果として「今は難しい」となったなら、意見を口にした側も納得してくれるはずです。

──社長になってからずっとそうしているんですか?

 いえ、最近の話です。実は創業してしばらくはトップダウン型の組織でした。だから批判がこなくて、私は事業の買収に失敗し、業績も伸びず、離職率も非常に高かった。そこで、社員の意見を聞き、仕事を人に任せてみたら、離職率が低下し、業績も伸び始めました。「あ、このほうが断然よかったんだな」と気づきました。

 私はこれからは〝公明正大な会社が勝っていく〟と思っています。議論は常にオープンで、全員が今何をしているか全員が知ることができ、気づいたことは口にできる。そんな会社のほうが効率的だし、社員がどんどんアイデアを出してくれるからサービスも進化していくはずです。

──製品の開発にはどう生かされているのでしょうか?

 常に、使う方たちがカスタマイズできるように心がけています。

 起業当初は「どんな企業でも最高に使いやすいものを作ろう」と考えていました。でも実際は、100社あれば100通りの使い方がある。ならカスタマイズしやすくして、皆さんが自社にとって最高に使いやすいものを作るほうがいい、と考えました。

 また、多様性も大切にしています。本来、私は人に干渉するのも干渉されるのも好きではありません。当社のグループウェアも同じで、我々が「これが究極のグループウェア」と決めるべきじゃなかったんです。ただし、この境地に至るまで創業から15年かかりました(笑)。

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