『名探偵コナン』担当編集者に聞く思い出深いトリック
石川昌彦さんの場合
山形県のスキー場で起こった事件を、当時中学生だった工藤新一と服部平次が推理合戦する「平次の思い出」シリーズ。ふたりは顔を合わせないまま事件が進む。「途中まではスムーズだったのに、バッグのピックアップ方法が見つからず時間がかかって、長時間打ち合わせしました。出来上がってみると、かなりすごいトリックになりました。トリックではないですが、赤井がジンをスコープに捉えて『やっと会えたな…愛しい愛しい…宿敵さん?』というセリフは、青山先生のお気に入りでした」
近藤秀峰さんの場合
同級生から、アパートに住む不審な人物を調べてほしいと頼まれたコナンと少年探偵団たち。しかし、アパートの火事で同級生は火傷を負い、その父は大火傷で”虫の息”に。日記に残された「赤い人」「白い人」「黄色い人」を頼りに捜査を進める「赤白黄色と探偵団/W暗号ミステリー」シリーズ。「目撃者が子供なため、意図せずに大人にはわからない暗号になっています。いつもは推理短編やSF小説などから拾ったネタを自信のある順に何個も出して、次々にボツとなる。けれど、この時は一発採用でした」
舟本りあるさんの場合
長野県と群馬県の県境のライン上に、他殺体が奇妙なポーズで横たわっていた「秘密基地のメッセージ」シリーズ。容疑者が浮かび上がるものの、肝心の凶器は見つからない……。「私が昔バレエをやっていた経験から、凶器とヘアグッズの形が似ていることに気づき、先生に伝えたところ、気に入ってもらえたことを覚えています。先生や男性編集者には、なかなか思いつかない発想だったので、おもしろいと感じてもらえたのかなと思いました」
堂本強介さんの場合
怪盗キッドが盗みに入った展示室には遺体が! 殺人の疑いがかけられたキッドが新一に扮し、コナンと事件を捜査する。「人を簡単に運ぶ方法として提案した〝ファイヤーマンズキャリー〟は『それだ! 名前もカッコよくていい!』と言われて採用されました。僕が勝手に思う青山先生の〝いいトリック〟の基準は『シンプルでわかりやすく説明できる』『意外性がある』『名前がカッコいいなど見栄えがいい』『コナンが気づく余地がある』です」
取材・文/内野智子 撮影/小倉雄一郎
DIME6月号は読みごたえたっぷりの「名探偵コナン」50ページ大特集
DIME6月号は今年連載30周年を迎えた「名探偵コナン」を約50ページにわたって大特集! 全世界累計部数は2.7億冊を突破、昨年公開の映画『名探偵コナン黒鉄の魚影(サブマリン)』は初めて興収100億を突破するなど進化を続ける超人気作品の魅力を徹底取材!
連載30年の歩み、愛され続ける理由、コナン沼にハマった著名人インタビュー、担当編集が明かす制作の舞台裏、コナンで身につくビジネススキルなどあらゆる角度からコナンの魅力を紐解きます。