「推理と将棋ってかなり似ていると思います」
『名探偵コナン』に登場する将棋棋士、羽田秀吉。七冠を達成した将棋界の天才として描かれ、その卓越した頭脳でコナンの推理に協力することも。兄はFBI所属のスナイパー・赤井秀一で、赤井ファミリーとして多くの話に登場する。
作者の青山先生によれば、この秀吉のモデルは将棋棋士の羽生善治さんだという。作品のファンである羽生さんに話を聞いた。
「『名探偵コナン』はうちの子供が幼い頃から大好きで、家族で一緒にアニメや映画を長年見てきました。子供が単行本を全巻持っていて、私も借りて読んでいます」
羽田秀吉については、お子さんから指摘されたとか。
「子供に、『なんかこれ、お父さんに似てるんじゃない?』って(笑)。名前が似てるので、そうかなと」
寝癖をつけたまま将棋を指し、対局中にショートケーキを爆食い──。秀吉のそれらのエピソードは、28年前、史上初の七冠を達成した頃の羽生さんの姿をそのままマンガにしたものだと、過去の対談で青山先生が明かしている(※1)。
「将棋を題材にしたお話もたくさん出てきます。青山先生が将棋のことをとても丁寧に調べてくださったんだなと、ありがたいですね」
羽生さんも驚く青山先生のリサーチ力で、プロから見ても現実味のある対局に。/85巻
劇場版では、2003年公開の『迷宮の十字路(クロスロード)』が特に好きで何度も見たという。
「舞台となっている京都には私も頻繁に行きます。鞍馬山や六角堂など、作中に出てくる場所を通る際、コナンくんたちも歩いたのかなと想像すると楽しくなります」
『名探偵コナン』といえば、その醍醐味のひとつに推理が挙げられる。羽生さんは、推理と将棋には似た部分があると話す。
「推理は、限られた情報の中から、いろいろな可能性を考えて、どういう結論にたどり着くか考えるものだと思いますが、将棋もかなり似ています。パズルみたいに解いていく詰め将棋というのがあって、一個一個の駒の配置がヒントやトラップや伏線だったりするんです。問題を作る人は、パッと見てわかっちゃったらつまらないから、いろいろ隠したり、見えないように配置します。こういった点は、推理ものと作り方が似ているのでは」
日本将棋連盟は今年9月に創立100周年を迎える。『名探偵コナン』同様、長年にわたり人々から愛され続ける理由とは?
「世代を超えて楽しめることと、その奥深さですかね。将棋は決して同じ形になることがなく、毎回異なるのがおもしろいところ。棋士って40年とか50年とか現役時代が長いので、継続は大事だと常々感じています。青山先生も長きにわたり連載されているので、感服しています。クオリティーを保ち、みんなを楽しませ続けているのは、本当にすばらしいことです」
交通課の女性警察官・宮本由美にベタ惚れで、作中では2人の恋愛模様も描かれる。/85巻
〈MY FAVORITE CONAN GOODS〉過去にはクラウドファンディングの返礼品に!
東京と大阪に新将棋会館を建設中で、資金集めのひとつとしてクラウドファンディングを実施。返礼品に用意されたのが『名探偵コナン』とコラボしたキャラクター将棋駒根付け。棋士・女流棋士にもファンが多いそう。
3つのQuestion
Q『名探偵コナン』のキャラクターで親友になりたいのは誰?
小嶋元太
「うな重が大好きなところとか、子供らしくてすごくイイ。強めのキャラクターが多い中で、ほんわかしている感じが好きです。そういう意味では警視庁の高木さんもいいですよね。友達になったら楽しそう」。なごみ系2人の名前が挙がったのはちょっと意外!?
Q『名探偵コナン』の単行本で一番好きなのは何巻?
89巻
89巻収録「婚姻届のパスワード」がおもしろいと羽生さん。恋人の由美が、管理人に隠された秀吉の封筒(婚姻届け入り)を探す話だ。赤井ファミリーと幼い頃の新一(コナン)の遭遇を描いた「さざ波の魔法使い」(92巻)も好きで、「赤井がコナンくんの頭をなでる場面が印象深いです」
Q 阿笠博士の発明品で一番欲しいものは?
ターボエンジン付きスケートボード
動力付きのスケートボードで、クルマと同じぐらいの速度が出せる。「ちゃんと乗りこなせるかって話はあるんですけどね(笑)。街の中でよく似たキックボードで走っている人を見かけると、やっぱり青山先生は先見性があるんだなって思います」と、感性の高さにも感心しきり。
(※1)2023年「週刊少年サンデー」30号に掲載された青山先生と羽生さんの対談。(※2)現在は叡王を加えた八大タイトル。
取材・文/内野智子 撮影/藤川直矢