働き方改革、ワークライフバランスへの意識の高まり、エンゲージメントへの注目、新型コロナウイルスによるリモートワークの普及、副業の解禁、AIの台頭など、働き方や働く環境は大きく変化した。
これらの変化により、「働く」ことの意味や価値も変わってきているのではないだろうか。
そこでリクルートグループは、個人の「働く喜び」の11年間の変遷をまとめた「働く喜び調査2013―2023年の変化」レポートを公開したので、注目のポイントをピックアップしてお伝えしよう。
この1年間、働くことに喜びを感じていたか
過去11年間の推移を見ると、「働く喜び」を感じている人の割合は2017年を境に変化を見せている。
2013年以降、5年間にわたり減少傾向にあったものの、2018年に増加に転じ、2019年には全体の44.5%が「働く喜び」を実感し、その後42~44%の間で推移。最新の2023年の結果では42.6%であった。
「働く喜び」の実感がやや増加傾向である背景には、社会と働く個人の価値観の変化がある。日本ではこの11年間でいくつかの重要な法律やガイドラインの変更があった。
例えば、「女性活躍推進法」施行(2016年)、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」発表(2018年)、「働き方改革関連法」成立(同年)などがあげられる。
これらの改革は、ワークライフバランスをはじめとした働く環境の改善、パートタイムや非正規社員の待遇改善、そして働く選択肢の拡大をもたらした。さらに、近年では多様性の尊重やテレワークの普及など、自由な働き方が推進されている。
個人の価値観の変化はどうだろうか。リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットは2016年末に『ライフ・シフト 100年時代の人生戦略』を発刊した。
この書籍では、伝統的な「教育→仕事→引退」という3ステージの人生から、多様で柔軟なマルチステージの人生への転換を提唱している。
これは、長寿化社会の中で、自分自身のキャリアや生き方を見直し、より充実した人生を設計するきっかけを多くの人に提供した。
社会の変化は「働く喜び」を感じやすい環境を整え、個人の価値観の変化は自分自身が働く意義や価値について深く考え直す機会となった。
11年間の調査結果を見ると、少なくとも「働く喜び」を実感している人が減っているわけではないため、社会の変化や個人の変化が良い方向へ向かっているように思われる。
とはいえ、「働く喜び」を感じている人が半分にも満たないこともまた事実であり、まだまだ課題が多い状況であることには変わりないだろう。