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念書という言葉を見聞きしたことはあるだろうか。念書とは、取り決めや約束事を証明するために用意する文書で、約束をした証拠として使用できる書類のことだ。
本記事では、念書の詳細な内容や書き方を紹介する。契約書や覚書との違いも解説するので、これらの文書に携わる可能性がある方はぜひ参考にしてほしい。
念書とは
まずは、念書とは何か具体的に確認していこう。契約書や覚書との違いを確認することで、念書に関する理解がより明確になるはずだ。
■念書の意味
念書はなんらかの約束事を書面に表し、約束をした当事者が、もう一方の当事者に向けて提出する文書。約束の内容と署名・捺印を提示することで、当事者間の取り決めの証拠としての役割も果たす。
当事者の一方が約束したいことを希望して提出する文書であるため、署名・捺印を行うのは差出人だけであり、受取人に義務はない。この場合は双方の同意ではないため、民法で規定された契約には当てはまらない。
また、当事者が約束をする内容の文書は広く念書と捉えられるため、借用書や誓約書なども念書の一種といえる。
■契約書との違い
契約書は、契約の当事者間の契約同意を証明するための文書。当事者全員に権利義務が発生する点が、念書との違いとなる。署名や捺印は差出人と受取人の双方に要求され、受取人の承諾をもって契約が認められる。
契約は双方の合意によって成立するため、契約書は双方の合意を示す証明となり、法的効力を持つ。両者の意思表示があれば契約となるため、契約においては必ずしも契約書が必要ではないことに注意しよう。
■覚書との違い
覚書は「おぼえがき」と読み、契約内容についての詳細や補足情報などを書き残しておくための文書。契約書を補完する文書で、当事者全員に権利義務が発生する点で念書と異なるのは契約書と同様。契約書と同じく当事者全員の署名や捺印を求められる。
補完的な立ち位置の文書であるものの、契約書と同様に当事者双方の同意を得た場合には法的効力が発生する。
念書の書き方
ここからは、念書の書き方を紹介しよう。事前に記載項目を確認の上、文書作成を行ってほしい。
■記載項目
念書を作成する際は、証拠書類としての機能を果たすためにも、以下のような項目を記載しよう。
・宛名
「〇〇様」「株式会社〇〇」のように、念書を提出する相手の氏名や会社名を記載する。
・表題
どんな内容についての念書であるか表題を記載する。「念書」だけでも不備はないが、内容を端的にまとめておくと受取人が内容を一目で理解しやすい。
・本文
念書で誓約する内容を詳細に記載する。返済期日等を記す場合は、本文に付随するかたちで記載するとわかりやすい。
・作成日
念書の作成日を記載する。「〇年〇月〇日」のように、年月日が明確にわかるように記そう。
・住所
差出人の住所を記載する。
・署名
差出人の署名を記載する。自筆であることを証明するためにも、手書きで記載しよう。
・捺印
差出人が捺印する。住所、署名と合わせて本人が作成した念書であることを証明する際に重要。
■念書を書く際の注意点
念書作成時には、念書の内容が印紙税の対象かを確認する必要がある。印紙税は主に請負や消費貸借に関する契約書などで発生するが、念書でこれらの契約に関する重要な事項を変更する場合には、印紙税の対象となる場合がある。
重要な項目の具体例としては、元の契約内容で定めた金額を変更する場合などが挙げられる。印紙税が必要な場合は、収入印紙を念書に貼り付けよう。
シーンごとの念書の例文
ここからは、シーンごとの念書の例文を紹介する。実際に念書を作成する際の参考にしてほしい。ここでは本文のみ記載するため、他の記載項目については前項を参照しつつ、別途忘れずに記載してほしい。
■借金の支払いに関する念書
借金の返済が滞っていて、期日や返済額をあらためて示すケース。
【例文】この度は返済期日を迎えたにもかかわらず、借入金○○円の返済を実現できていないこと、心よりお詫び申し上げます。返済につきまして、下記の通り実現することを誓約いたします。
支払期日〇年〇月〇日
返済額〇〇円
■退職時の念書
退職時には念書で、業務で知った情報の漏洩を行わない旨を示すケースがある。
【例文】私○○は、貴社を退職するにあたって、業務上知りえた機密情報及び個人情報を公開、漏洩しないことを誓約いたします。
■離婚時の念書
離婚時の念書で、離婚に至った原因や責任、慰謝料などを示すケース。
【例文】私○○は、不貞行為によって配偶者○○に多大なる精神的苦痛を与えました。この事実を心よりお詫びするとともに、下記の通り慰謝料を支払うことを誓約いたします。
支払金額○○
支払期日○年〇月〇日
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部