画像編集や文字入力は便利に使える、今後のアップデートにも期待
少々残念な結果になってしまったボイスレコーダーの文字起こしだが、Galaxy AIの中にはきちんと使える機能も存在する。生成AIによる、画像編集や画像拡張機能はその1つと言えるだろう。Pixelの「編集マジック」に近いが、写真の中で被写体の一部を移動させたり、拡大・縮小させたりしたあとに、足りない部分をAIの力で補うことが可能だ。写真や編集する量にも完成度は左右されるが、ぱっと見では加工の跡がわかりづらい写真に仕上がることが多い。
消火栓が邪魔だったので、端に移動してみた。建物の看板のアルファベットは適当だが、ぱっと見で修正されていることがわからないよう、自然に足りない部分が描き足されている
同様のことはPixel 8シリーズでもできたが、Galaxy AIでは、写真の角度補正にも、生成AIを応用している。被写体の水平を保つために写真全体に角度をつけると、どうしても周囲に余白ができてしまう。一般的には、写真をトリミングすることで写真全体を水平にするが、それだとデータのサイズが小さくなる。Galaxy AIでは、この余白になった部分を生成AIで補うことができる。
角度補正でできる余白は面積がさほど広くないためか、複雑な背景でなければ、かなり自然な補正をかけることが可能だ。AIで背景の足りない部分を拡張したと言わなければ、気づかない人も多いレベルに仕上がる。ほかにも、ギャラリーには写り込みや影を消す機能が搭載されており、いずれも編集の痕跡はほぼわからない。言語を扱うAI以上に、ギャラリーに内蔵されたAIのクオリティは高い。大画面のGalaxy Z Fold5は、こうした編集がしやすいのもメリットだ。
写真の角度補正をした際に、足りなくなった周囲を描き足すことが可能。トリミングして写真のサイズを小さくする必要がなくなる
映像を扱う機能では、動画のフレームをAIで補間して、自動的にスローモーションにできる「インスタントスローモーション」もおもしろい。通常、この手の動画はあらかじめ高いフレームレートで録画しておかなければならなかった。撮影時に、スローモーションにできるかどうか決まってしまうというわけだ。これに対し、インスタントスローモーションは映像の足りないフレームを補間しているため、表示も滑らか。単に再生速度を落とした動画とは違う、しっかりとしたスローモーション動画を楽しめる。あらかじめ動画を撮り分ける必要がないため、利便性も高い。
動画再生中に画面を長押しするだけでスローモーションになるほか、編集で速度を1/4にすることも可能だ。AIでフレームを補間している
Samsungキーボードに搭載された、文体変更機能も利便性が高くて使いやすい。この機能は、入力した文章をシチュエーションや用途に合わせて変換してくれるというもの。例えば、「お世話になります。石野です。明日の打ち合わせの件で、時間変更の相談があります」と文章を入力したあと、ボタンをタップすると、文章をより丁寧にしてくれたり、逆にカジュアルにしてくれたりする。
キーボードで文字入力中に、AIボタンをタップすると文体が変換される
結果は、以下のスクリーンショットのとおり。取引先に送りたい時には「丁寧」を、逆に友だちに送りたい時には「カジュアル」を選ぶだけよく、非常に実用的だ。メールの文面をとりあえず書き出しておけば、細かな部分はGalaxy AIが整えてくれるというわけだ。SNSに投稿するための文章として、自動でハッシュタグを生成してくれるのもアイディアが冴えている点と言えそうだ。
用途に合わせて文章を選ぶだけでよくなり、細かなことを考えずにとりあえず文字を打っていくことが可能だ
また、純正ブラウザには表示されているサイトを要約する機能も搭載されている。こちらもなかなか優秀で、記事の要点をサクッと箇条書きでまとめてくれる。標準だと、やや短くまとめて過ぎてしまうきらいはあるが、設定で「詳細」に変更することも可能だ。また、サイトの中身をワンタッチで翻訳する機能にも対応している。普段はChromeを使っている人もいると思うが、その場合は共有メニューから標準ブラウザを呼び出せば、Galaxy AI利用できる。
ボイスレコーダーの文字起こしがやや微妙な結果になり、ここに期待していた筆者はやや肩透かしを食らった格好だが、画像編集やキーボードの文体変換、ブラウザの要約などは、使い勝手がいい。ディスプレイサイズが大きいGalaxy Z Fold5だからこそ、生きてくる機能もある。ただし、やはり登場したばかりのため、粗削りな部分は多い。特に日本語対応はまだまだ。今後のアップデートに期待したい。
【石野’s ジャッジメント】
音声翻訳 ★★★
文字起こし ★★
画像補正 ★★★★
スローモーション ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。