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レジリエンスとは、心理学の分野におけるストレス対応力を意味する言葉だ。
ポジティブな人や楽観視できる人は、その能力が高いとされている。レジリエンスの向上はビジネスにおいて、個人にも企業にもメリットをもたらすと考えられているのも特徴だ。
本記事では、レジリエンスとは何かを解説していく。向上させるための方法や、言い換えに使える類義語について知りたい人も要チェックだ。
「レジリエンス」とは?
レジリエンスは、ストレス社会で身につけておきたい精神力のことだ。はじめに、意味と定義を解説していく。
■ 「レジリエンス」の意味と定義
レジリエンスを辞書で引くと、意味は以下の通り。
弾力。復元力。また、病気などからの回復力。強靱(きょうじん)さ。リジリエンス。 |
上記の通り、元々「弾力」や「復元力」といった意味を持つのがレジリエンスだ。「回復力」や「適応性」、「再起力」とも言い換えられる。ボールを握った時に生じる、元に戻ろうとする力と考えると分かりやすいだろう。
また、全米心理学会では、「逆境や困難、強いストレスに直面したときに適応する精神力と心理的プロセス」と定義づけられている。つまり、心理学の分野でいう「ストレスにうまく対応できる能力」や「強靭な心」を指すのもレジリエンスなのだ。
「レジリエンス」が高い人の特徴
レジリエンスが高い人、すなわちストレス対応力のある人には、ある一定の特徴がみられる。以下では、先天的・後天的なものを含め、その特徴について解説していく。
■楽観的・ポジティブ
先天的な特徴としてあげられるのが、楽観的そしてポジティブな性格ということだ。精神力が強いことを指すレジリエンスとポジティブさは、切っても切り離せない関係である。
さらに失敗や過去に囚われず、肩の力を抜いて先を見通せるのが楽観性だ。つまり、何事においても前向きに考えられ、さらに不安をも断ち切っていける性格であることが多いだろう。
■社交性・行動力がある
社交性や行動力の高さも、先天的な特徴の一つである。先述の通り、楽観的でポジティブさがあるレジリエンスが高い人は、基本的に不安や恐怖心が薄いと考えられる。
それは対人面でも同じで、どのような人とも進んでコミュニケーションを取れるだろう。さらにその社交性は、トラブルの解決や目標達成といった行動力にも大きく影響してくる。
■問題解決力が高い
後天的な特徴としては、問題解決力が高いといったところだ。レジリエンスが低いと、問題となるトラブルと対峙した時にストレスを感じやすく、おのずと問題の解決も遠のいてしまう。
一方、問題に堂々と向き合える強い心を持っているのが、レジリエンスが高い人である。また、問題を解決するための忍耐強さを持っていることも特徴の一つだ。
■自己・他者理解が深い
自己理解および他者理解が深いことも、後天的な特徴に数えられる。自己理解が及んでいるとは、つまり自分のストレスとの向き合い方を知っているということだ。
また、社交性がありコミュニケーションがスムーズなことは、他者理解につながる。つまり、自分のことも他者のことも深く理解している人こそ、レジリエンスが高い人といえるだろう。
「レジリエンス」向上のメリット
レジリエンスが高まると、個人のみならず企業全体にもプラスの要素がもたらされる。以下では、レジリエンス向上によるメリットを解説していく。
■ 企業におけるメリット
従業員個々のレジリエンスが向上すると、企業側は主に離職率の低下・リスク対応力・企業価値の向上といった3つのメリットを得られる。
離職につながる大きな原因の一つが、仕事におけるストレスだ。レジリエンスが低いとストレスをうまく処理できず、離職に至ってしまうケースも少なくない。
その点、ストレス対応力に優れたレジリエンスが高い人が企業に多いと、離職率を下げられると言える。
また、レジリエンスの高さは問題解決力とも深い関係があるため、トラブルが発生した時のリスク軽減といった面でもプラスに働く。さらに問題解決力に優れた企業として認識されれば、信頼度も高まり、企業価値の向上にも大きく貢献するだろう。
■ 個人におけるメリット
レジリエンス向上による個人のメリットは、主にストレスの軽減と能力の向上があげられる。
どうあがいてもストレスの根源は減らないものの、対応する術を身につけていれば、精神的負担を感じる度合いは少なくて済む。さらにストレスをうまく処理できて心身ともに健康であれば、集中力やパフォーマンスといった仕事に欠かせない能力も向上するだろう。
レジリエンスを上げることは、日常生活を快適にするメリットにもつながると言える。
「レジリエンス」を育てる方法
個々のレジリエンスを育てるためには、定期的なストレスチェックと自己肯定感を高めることが必要だ。
レジリエンスが指すストレス対応力には、自分に今どれだけのストレスがあるか見定める能力も含まれる。ストレスチェックの機会を意識的に設ければ、おのずとストレス対応力は磨かれていくだろう。
また、レジリエンスが高い人はポジティブな性格である特徴を逆手に取り、自身をポジティブな考えにシフトしていくことも方法の一つだ。自己肯定感を上げる方法は、以下の通り。
・規則正しい生活をおくる
・笑顔を心がける
・他人と自分を比較しない
・適度な運動をする
・自分を褒める、認める
ポジティブさや楽観性は、先天的な要素であると先述した。しかし、自己肯定感を上げることである程度は身につけられると考えられる。
「レジリエンス」と類義語
レジリエンスには、似た意味を持つ言葉が複数存在する。混同しないよう、以下では代表的な類義語を2つあげ、さらにニュアンスの違いを解説していこう。
■「メンタルヘルス」
レジリエンスと同じく精神面を意味する言葉に、メンタルヘルスがある。心の健康といった意味を持つのみで、強靭さなどは特に示されていない。
メンタルヘルス対策において、心の健康を保つために必要とされるのがレジリエンスである。つまり、メンタルヘルスのために行うのがレジリエンスの向上なのだ。関連性こそ高いものの、意味は違うと覚えておこう。
■「ストレス耐性」
レジリエンスの類義語として、混同されがちなのがストレス耐性だ。同じストレスにかかわる言葉ではあるが、カバーする範囲が異なる。
ストレス耐性はあくまで耐性であって、ストレスに耐える抵抗力を意味する。対して、レジリエンスはストレスの耐性を含めた対応力を指す。レジリエンスの一部にストレス耐性があるとイメージすると良いだろう。
レジリエンスとはストレス対応力であって我慢強さではない
レジリエンスとは、問題発生に伴うストレスの対応力といった意味があると分かった。
楽観的な人やポジティブ思考の人、また問題解決力が高い人はその力が強い傾向にある。ストレスの処理といった面で、個人にも企業にもメリットをもたらすのがポイントだ。
ストレスを向上させるためには、自分のストレスを把握し、自己肯定感を高く保つことが欠かせない。
ストレスを我慢すれば良いわけではないため要注意だ。類義語も含め、言葉の意味をきちんと理解し、正しい方法で高めることが、強くしなやかな心を育てるだろう。
文/shiro