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近年、ビジネスシーンにおいて重要視されるのが「非認知能力」と呼ばれる能力である。この能力は、単なる知識やスキルだけでなく、感情の管理やコミュニケーション能力、問題解決能力など、人間的な側面に関わる要素を含む。非認知能力が高いと、リーダーシップやチームワーク、ストレス耐性などの向上につながる。
本記事では、この記事では、非認知能力の高い大人の特徴について具体的に掘り下げ、それがビジネスシーンでどのようなメリットをもたらすのかを解説する。また、非認知能力を育てるための方法や、ビジネスパーソンとして活用する際のポイントも紹介する。
非認知能力とは
非認知能力とは、単なる知識や学習能力だけではなく、感情のコントロールや自己管理、他者との関係構築、問題解決能力など、人間的な側面に関わる能力の総称だ。
■非認知能力の概要
非認知能力とは、ソフトスキルとも呼ばれ、社会性やコミュニケーション力、自制心などを包括した能力のことだ。近年注目されるようになった背景には、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンによる研究がある。
彼の研究によって、従来はIQなどの認知能力が成功に直結すると考えられていた。しかし、非認知能力と成功との相関性が高いことが示されたことで、注目されるようになったという背景がある。
この能力は、AIに代替されにくい高次な思考判断が求められる仕事に重要であると考えられている(OECD, 2015)。
協働して新たな知識や価値を創造する際には、他者の視点や共感性が必要であり、課題達成には粘り強さや創意工夫が重要だ。社会の変化に伴い、多様性が増大しているため、異なる文化に対する敬意や自己意識が求められるようになってきている(シュライヒャー, 2019)。
※出典:日本教材文化研究財団「令和元年度 研究紀要 第49号」
■学校教育における非認知能力
学校教育においても、単なる学力だけでなく、生徒の非認知能力の育成が重要視されている。文部科学省の「第2回会議の主な意見等の整理」によると、非認知能力の育成が教育課程に盛り込まれるべきという意見がある。特に、以下のような非認知能力が重要視されている。
自己管理能力:時間の使い方や目標設定、計画立てる能力などが含まれる。
コミュニケーション能力:他者との意思疎通や協力、共感する力などが重要視されている。
積極的な姿勢:授業や学習に対する意欲、向上心、好奇心、チャレンジ精神などが挙げられる。
これらの能力は、単に学業成績だけでなく、生徒の将来の社会での活躍にも大きな影響を与えるとされている。そのため、教育現場では非認知能力を育てるためのプログラムや取り組みが注目されているのだ。
また、学習指導要領(H29年3月告示)には、育成すべき資質・能力の3つの柱が明記されているが、そのうちの1つ『学びに向かう力・人間性等』がこの非認知能力が該当する。
※出典:文部科学省「育成すべき資質・能力の三つの柱」
※出典:文部科学省「第2回会議の主な意見等の整理」
非認知能力の3つの種類
非認知能力は以下の3つが挙げられる。
1:自分を高める能力
2:自分と向き合う力
3:他者とつながる力
順にみていこう。
■非認知能力の種類1:自分を高める能力
非認知能力の1つの種類は、自分を高める能力である。これは自己認識や自己管理とも関連し、自分自身の内面を理解し、向上させる力を指す。
自分を高める能力を持つ人は、自己認識が高く、自分の感情や思考、行動について客観的に見ることができる。これによって、自分の強みや弱みを把握し、成長のための方向性を見出すことが可能だ。
■非認知能力の種類2:自分と向き合う力
次に挙げる非認知能力の種類は、自分と向き合う力である。これは自己理解や自己受容とも関連し、自分との対話や内省を通じて成長する能力を指す。
自分と向き合う力を持つ人は、自分の内面に向き合い、自分自身との対話を大切にしている。自分の信念や価値観を深く掘り下げ、なぜ自分がそのように考え、行動するのかを理解しようとする。また、過去の経験や失敗から学び、成長の機会として捉えることができる。
■非認知能力の種類3:他者とつながる力
最後に紹介する非認知能力の種類は、他者とつながる力である。これはコミュニケーション能力や協調性とも関連し、他者との関係構築やチームワークを円滑に行う能力を指す。
他者とつながる力を持つ人は、他者とのコミュニケーションが得意であり、適切なタイミングで情報を共有し、意見を交換することが多い。また、他者の視点やニーズを理解し、協力し合う姿勢を持っているという特徴がある。
非認知能力の高い大人の特徴とビジネスシーンでのメリット
実際に非認知能力の高い大人の特徴とはどんなものだろうか。また、このような非認知能力を高めた際のビジネスシーンでのメリットについて解説する。
■非認知能力の高い大人の特徴
非認知能力の高い大人には、以下のような特徴がある。
感情のコントロールが得意
高い非認知能力を持つ大人は、ストレスやプレッシャーにも柔軟に対応し、冷静な判断を下すことが可能。感情をコントロールすることで、周囲の状況に左右されずに物事を適切に判断できる能力があるという特徴がある。
コミュニケーション能力が高い
非認知能力の高い大人は、他者とのコミュニケーションにおいて優れた能力を持っている。言葉だけでなく、非言語的なコミュニケーションも巧みに行い、相手との良好な関係を築くことが可能。これはビジネスシーンでの協力やチームワークに大きく貢献している。
問題解決能力が優れている
非認知能力の高い大人は、複雑な問題に対して創造的かつ効果的な解決策を見つけ出す能力がある。新しい視点から問題を捉え、独自のアプローチで解決に導くことが可能。この能力はビジネス上での意思決定や戦略立案において重要である。
■ビジネスシーンにおける高い非認知能力のメリット
高い非認知能力を持つ大人は、ビジネスシーンでさまざまなメリットを享受できる。
リーダーシップの発揮が可能
感情のコントロールやコミュニケーション能力、問題解決能力が高いことから、非認知能力の高い大人はリーダーシップを発揮しやすい。チームや組織をまとめ、目標達成に向けてメンバーを導くことができる。
チームワークや関係構築が円滑に
高いコミュニケーション能力によって、他者との協力やチームワークがスムーズである。相手の意見や要望を理解し、適切に対応することで、チーム全体のパフォーマンスが向上する。
変化に対応し、創造的な解決策を導く
ビジネス環境は常に変化しているが、非認知能力の高い大人は柔軟性と創造力を活かして変化に対応できる。新たなアイデアやアプローチを提案し、組織全体を前進させることが可能となる。
大人の非認知能力の伸ばし方
■非認知能力の伸ばし方1:感情のコントロールを意識する
非認知能力を伸ばすための第一歩は、感情のコントロールを意識すること。日常生活や仕事の中でストレスや不安を感じたとき、その感情に振り回されず、冷静に対処することが重要である。感情のコントロールを意識するためには、まずは自分の感情に気づくことから始めよう。自分がどのような状況や出来事に対してどんな感情を抱いているのかを意識することで、感情をコントロールするための第一歩となる。
また、感情のコントロールには、近年注目を集めている、マインドフルネスや深呼吸などのテクニックを取り入れることも効果的。ストレスがたまったときには、一度立ち止まって深呼吸をすることで、心身の緊張を解きほぐすことができる。
■非認知能力の伸ばし方2:自己認識を深める
次に、非認知能力を伸ばすための方法として、自己認識を深めることが挙げられる。自己認識とは、自分自身の考えや感情、行動パターンを客観的に見つめる力である。
自己認識を深めるためには、心の中で思ったことをありのままにすべて書き出すジャーナリングをしたり、他者からのフィードバックを受け入れたりすることが有効。これにより、自分の盲点や改善点に気づくことができ、さらに、自分の強みや弱みを把握し、それを活かした行動ができるようになる。結果として、他者との関係性も向上し、コミュニケーション能力の向上にもつながる。
■非認知能力の伸ばし方3:他者との関係を大切にする
最後に挙げる非認知能力の伸ばし方は、他者との関係を大切にすることである。ビジネスシーンにおいては、他者との信頼関係や協力関係が重要な要素となる。
他者との関係を大切にするためには、まずは相手の立場や視点を理解することが重要。共感力を養い、相手の感情や考えに寄り添う姿勢を持つことで、より良い関係を築くことが可能となる。
また、他者とのコミュニケーションを積極的に取ることも大切である。積極的なコミュニケーションを通じて、信頼関係を築き、協力関係を深めることにつながる。
まとめ
本記事で解説したように、非認知能力の高い大人はビジネスシーンにおいて重要な役割を果たし、自身のスキルを活かして組織やチームをリードし、変化に対応しながら成果を上げることが可能となる。非認知能力を日々の生活の中で、意識的に育てることで、ビジネスパーソンとしての成長や成功につなげたい。
※参考文献
中山芳一『自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』東京書籍
中山芳一『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』東京書籍
文/真南風文藝工房(まはえぶんげいこうぼう)
自動車メーカーでの先行開発エンジニアを経験した後、理系教科書編集(高校数学・中学校理科教科書編集)職に転向。近年は、サイエンスライティングに加え、理系・元エンジニアとしての経験を活かし、就職活動サイトコラム執筆や人事・広報ライティングなど、幅広い分野での執筆活動に取り組んでいる。