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「卑下」という言葉を使う時に注意が必要な理由

2024.08.09

「卑下」とは、へりくだった姿勢を示せる言葉だ。会話で時折使われる表現ではあるが、正しい使い方ができているだろうか。

本記事では、言葉の意味と読み方、「自分を卑下する」を当てはめた例文を紹介していく。類語や間違った言い回しを知っておきたい人も、ぜひ参考にしてほしい。

「卑下」とは?

「卑下」を簡単に言うと、へりくだることである。以下で意味と読み方、由来を確認していこう。

■ 意味・読み方

「卑下」を辞書で引くと、意味・読み方は以下の通り。

読み方:ひげ

[名・形動](スル)

1 自分を劣ったものとしていやしめること。へりくだること。「そんなにする必要はない」

2 いやしめて見下すこと。また、そのさま。

「自修の事を甚だ—なる田地に落ち沈ましむるなり」〈中村訳・西国立志編〉

引用:weblio辞書/デジタル大辞泉(小学館)

「卑下」は「ひげ」と読み、「自分を下に見せて、へりくだること(さま)」といった意味を持つ。簡単に言うと、謙遜の意を示す言葉だ。読み方を覚えにくいと感じるなら、「卑屈」の「ひ」であると紐づけておくことを勧める。

ちなみに、「いやしい」とも読む「卑」には、「地位や身分・価値が低い」「下品」などの意味がある。こうした自分をさげすむ意味があると知っておくと、さらに「卑下」を理解しやすいだろう。

■ 由来

「卑下」は、古代中国に伝わる儒教を由来に持つ。

儒教による謙遜の意を持つことや謙虚な振る舞いの重要性が、謙遜を美徳と考える日本の教えにつながったとも考えられている。日本では平安時代から確認されているため、古くから伝わる言葉と分かるだろう。

「卑下」の使い方

「卑下」は、主に「卑下する」と動詞形で使われるのが一般的だ。意味の通り、自分が劣っているとアピールしたい時や、謙遜の意を表したい時の表現として適している。

以下では、使い方をさらに掘り下げていく。

■自分を下に見せる「卑下」の使い方

自分を下に見せる「卑下」の例文は以下の通り。

・あまりに自分を卑下すると、嫌味に聞こえてしまうかもしれない

・卑下することが美徳と考える人もいるが、行き過ぎてしまうのは考え物だ

どちらも卑下することの重要性を示しつつも、過度な態度はトラブルの元と考えている例文だ。

■他人が謙遜する様子を表す「卑下」の使い方

自分ではなく、他人が卑下する様子を表す使い方をした例文は以下の通り。

・○○さんは仕事ができるのに、自分を卑下する癖がある

・彼女は卑下して、自分の能力を下に見せていた

自分のことではなく、相手が卑下する様を表現した例文だ。ただし、「卑」にはポジティブな意味合いがないため、へりくだっている本人に使うのは避けたい。

「卑下」を使う時の注意点

ポジティブな意味ではない分、「卑下」を使う時は配慮が必要だ。ここでは、使い方の注意点を見ていこう。

■多用に注意

「卑下」を使ううえで注意したいのが、むやみやたらに多用しないということだ。

先述の意味をよく見てみると「自分を劣ったものとして」とあり、「劣っているように見せる」というニュアンスが含まれると分かる。つまり、本当に劣っているわけではなく謙遜している場合にも使う。

これが捉えようによっては、上から言われているように感じたり、自慢されているような印象を受けたり、傲慢な態度をとっていると受け取ったりする人もいる。

へりくだる意を示すことも大切だが、一歩間違えば逆効果になってしまうと肝に銘じておこう。

■「相手を卑下する」のは間違い

「卑下」の使い方として覚えておきたいのが、相手を指す言葉としては適当ではないということだ。

意味にもある通り、卑下するのはあくまで自分のみ。「私は××さんを卑下する」といった使い方はできないため要注意だ。何より、相手に対してこれでは無礼な表現だ。

「卑下」の類義語

以下では、「卑下」と同じ意味を持つ言葉を2つ紹介する。

■「謙遜」

「卑下」を、ややポジティブに言い換えるなら「謙遜」が適当だろう。

「控えめな態度」や「へりくだること」といった同様の意味がある。「謙遜する」と動詞形でも使用できるため、文字をそのまま差し替えても違和感が出にくい。

■「卑屈」

より劣って見せたい時は、「卑屈」を使うのも手だ。

「必要以上に自分をいやしめること」との意味があり、過剰にへりくだっていることを示せる。ただし、ネガティブすぎる言葉のため、相手が反応に困ることもあると考えておかねばならない。

「卑下」の対義語

次に、「卑下」と反対の意味を持つ言葉を2つ紹介する。

■「自慢」

「自慢」は、「自分で自分を褒めて、他人に誇ること」を意味する言葉だ。自分を見下すこととは真逆の意味を持つ対義語である。

「いつもは卑下する彼女も、今回ばかりは自慢が多い」と用い、態度の対比を出すことも可能だ。

■「尊大」

「尊大」とは、「他人を見下げる態度をとること」といった意味を持つ言葉だ。

聞き慣れない言葉かもしれないが、自分を下に見せることと反対の意味を示すと分かるだろう。ポジティブな印象の「尊」が入っているが、特に相手をたてる言葉ではないため要注意だ。

「卑下」の英語表現

最後に、「卑下」を英語に訳すとどうなるか解説する。

■「belittle oneself

「卑下する」を直訳するなら、「見くびる」「けなす」といった意味を持つ「belittle」がふさわしい。「belittle oneself」で「自分を卑下する」、「Don’t belittle yourself.」で「自分を卑下してはいけない」と相手に訴えかける表現となる。

また、へりくだることを伝える意訳表現としては、「謙虚な」「つつましい」といった意味を持つ「humble」が適当だろう。

自分を卑下するのは相手に失礼にあたる可能性も

「自分を劣っているように見せて、へりくだること」を意味する「卑下」は、相手に謙遜の意を示したい時に使える言葉と分かった。下手に出ることがよしとされやすいビジネスシーンにおいて重宝する表現と言える。

一方、多用は自慢と捉えられかねないのと同時に、相手に失礼にあたる可能性もある。尊敬している相手に自分を卑下されたら、どんな気持ちになるだろう。一度よく考えてみてほしい。

文/shiro

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