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アライアンスとは、他企業や公的機関と協力体制を築くことだ。いわゆる業務提携のことで、ビジネスシーンでは互いの利益獲得や成長といった目的のために実行される。
「アライアンスを組む」や「アライアンス契約」などのビジネス用語は比較的耳にするワードかもしれないが、意味や使い方をきちんと理解しているだろうか。本記事では、アライアンスとは何か分かりやすく解説していく。
「アライアンス」とは?
「アライアンス」を辞書で引くと、「同盟」や「提携」、「連合」といった意味が出てくる。
日本語では業務提携とも呼ばれ、ビジネスシーンでは自社と相手側の企業・機関が協力しあう経営スタイルを指す。基本的には資本の移動(経営権の移転)を伴わず行われるが、協力体制をより強固なものにしたい場合はこの限りではない。
■ 「アライアンス」の目的
アライアンスは、主に以下のような目的で行われる。
・互いの利益獲得
・企業の成長
・事業継承
・リスク分散
企業間で各ノウハウを共有することで新たな価値を生み、互いの利益獲得や企業としての成長を促すこともちろん、危ぶまれる事業の継承やリスクの分散も狙いの一つだ。
自社だけではもはや頭打ちの部分を、手を取り合い補完しあう目的で実行する企業は少なくない。
「アライアンス」の種類と特徴
アライアンスは大きく分けて、以下の4つの種類がある。
・技術提携:互いの技術を提供・共有する提携。新商品の開発にあたり、他社の特許技術が必要な場合に結ばれるケースが多い。
・資本提携:資金面で協力し合う提携。主に株式の取得、もしくは株式の持ち合いによって行われる。
・産学連携:研究・教育機関との連携。大学などの機関が持つ知識や技術を活かし、産業化・実用化にこぎつける場合に結ぶ。
・オープンイノベーション:自社以外が持つ経営資源(資金、人材、時間など)を取り入れる提携。革新を促すために、研究・教育機関や異業種企業などと結ぶことが多い。
「アライアンス」の使い方
「アライアンス」は、他企業や機関との経営スタイルを表すシーンに使用できる。この言葉を用いたビジネス用語は少なくない。
以下では、代表的な用語を取り上げつつ、3つの例文を紹介する。
■「アライアンス契約」の例文
「アライアンス契約」を使った例文は以下の通り。
・弊社と〇〇大学の間で結ばれたアライアンス契約に基づき、正式に新商品の共同開発に取りかかることとなった。
・国内外販路拡大のために、アライアンス契約が交わされた。
アライアンス契約とは、アライアンスを行う前に交わされる契約のことだ。まだ取りかかってはいないものの、これから協力して進んでいくという段階の周知や告知に使用できる。
■「アライアンスを組む」の例文
「アライアンスを組む」を使った例文は以下の通り。
・マーケットのさらなる拡大のために、弊社は〇〇社とアライアンスを組むことを決めた。
・あの大手企業同士がアライアンスを組めば、今までにない革新的な開発が成されるだろう。
アライアンスを実行することを、アライアンスを組むと表現する。他企業や機関と協力体制を築き上げることを指すため、業務提携にあたって知っておくべき表現だろう。
■「アライアンスパートナー」の例文
「アライアンスパートナー」を使った例文は以下の通り。
・この度〇〇社をアライアンスパートナーとし、新たな技術の開発に取り組むこととなった。
・アライアンスパートナーと協働することで、互いの利益獲得を狙いたい。
アライアンスパートナーとは、アライアンス契約を交わし、協力体制を築く相手企業・機関のこと。関係性を一言で表せる便利な言葉と言える。
「アライアンス」と「M&A」の違い
「アライアンス」と混同されやすい「M&A」との違いは、締結することによる経営スタイルと効果の範囲にある。経営スタイルに関しては先述の通り、資本の移動を伴わないため経営権は移転しない。
対してM&Aは、契約を締結すると相手側に経営権が移る。経営権を移転すると、売り手側は独立性を維持できなくなってしまうのも異なる点だ。
また、アライアンスもM&Aも、利益獲得や事業継承といった目的に変わりはない。しかし、その効果が両方にもたらされるか、どちらか一方にもたらされるかに違いがある。
「アライアンス」のメリット
アライアンスは、企業に多くのプラスをもたらす。以下では、費用と手間・企業競争力・手続きといった3つの観点からメリットを解説する。
■費用や手間を抑えながら行える
アライアンスのメリットといえば、提携や連携のための費用・手間を抑えられることが挙げられる。合併や買収を行うM&Aと違い、相手企業の調査や選定に大きく時間を要さず、締結のための複雑な手続きも必要ない。
さらに経営権が手元に残り、一方的にコントロールされないため、自社の経営資産を動かしやすいのもメリットと言える。
■企業競争力が向上する
アライアンスを行い、相手側のノウハウや技術を得ることで、企業競争力の向上に期待できるのがメリットの二つ目だ。
その過程において、自社では対応しきれなかった課題の解決にもつなげられるかもしれない。さらに、今までと異なる方法をとることで顧客に新たな価値を提供でき、さらなる利益獲得や企業成長にも期待できるだろう。
■容易に関係を解消できる
アライアンスはいざという時に、相手側との関係を解消しやすいのもメリットの一つだ。経営においては、市場の変化など、自社とは直接関係がない予期せぬ事態が起こることも少なくない。
経営権を移転せず独立性を維持できるため、基本的に各々の経営資源はそのままだ。さらには複雑な手続きが不要なため、比較的容易に協力体制を解けるだろう。
「アライアンス」のデメリット
次に、アライアンスのデメリットを解説していく。自社の情報やノウハウ共有といった協力体制を築くからこその、マイナス面も発生すると覚えておかなければならない。
■機密情報が漏洩するおそれがある
アライアンスのデメリットの一つ目が、自社の機密情報が漏洩するリスクが高まるということだ。
アライアンスに伴い開示する情報は、通常の契約によるものよりおのずと機密性が高まる。場合によっては、自社に多大なる不利益がもたらされるかもしれない。
秘密保持契約を結んだり、相手企業をよく見定めたりといった対策を講じればリスクは軽減されるが、情報漏洩の危険性がなくなるわけではないのだ。
■自社のノウハウが流出するおそれがある
機密情報に加え、自社が培ったノウハウの流出リスクもデメリットの一つ。
各企業のノウハウを共有して行うため、自社の技術や知見が外部に流出してしまいかねない。
こちらも秘密保持契約の締結で多少リスクは減るものの、セキュリティ対策は企業によって異なるため、本来守らなければならないものが漏れかねないと肝に銘じておこう。
■失敗する可能性がある
アライアンスは失敗するおそれがあるのが、デメリットの三つ目。
ノウハウを共有するなど協力体制を築くだけで、成功が保証されているわけではない。想定より効果が上がらなかったり、かえって互いの不利益になったりといった場合もあるのだ。成功が約束された内容ではないと覚えておかなければならない。
アライアンスとはビジネスにおける協力体制
日本語で同盟や連携と訳されるアライアンスとは、いわゆる企業間や教育・研究機関と協力体制を築くことを指すと分かった。その目的は、互いの利益獲得や企業としての成長などさまざまだ。
混同されやすいM&Aとの違いは、経営権が移転するかどうかと目的にある。
「アライアンス契約」や「アライアンスを組む」などは、ビジネスシーンで頻出する使い方だ。メリット・デメリットを含め言葉の理解が、アライアンス実行の決め手となるかもしれない。覚えておくと役立つだろう。
文/shiro