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「所用」とは、用事や用件を意味する言葉だ。ビジネスシーンで欠席や休暇の理由を伝える時に便利だが、果たして「所用のため欠席」とは正しい敬語なのだろうか。
本記事では、所用について詳しく解説していく。意味や例文、言い換え表現に加え、「私用」との違いを知りたい人も、ぜひ参考にしてほしい。
「所用」とは?
「所用」とは、主に用事や用件を指す言葉だ。しかし、実際のところ意味はほかにもある。ビジネスシーンで重宝する言葉のため、以下で意味を詳しくチェックしてみよう。
■ 「所用」の3つの意味
「所用(読み方:しょよう)」には、大きく分けて「用いるもの(こと)」「用事・用件」「必要なこと(もの)」の3つの意味がある。データベース上の意味は以下の通り。
① 用いるところ。用いるもの。また、用いること。 ※古事談(1212‐15頃)一「移二大炊天皇於淡路国一、国内官物調庸等任二其所用一云々」 ② 用件。用事。用向き。 ※明徳記(1392‐93頃か)上「しからば満幸在京しても所用なし、いそぎ下向して在国すべきよし仰下されて」 ③ 必要なこと。また、そのもの。入り用。 ※清原国賢書写本荘子抄(1530)七「費は所用につかうついえ也」 |
上記のうち、ビジネスでは2つ目の「用事・用件」の意味として用いられることが多い。そのまま用事や用件としても問題はないが、よりかしこまった表現が「所用」なのだ。
そのためビジネスシーンでは「所用」を用いるのが好ましいと考えられている。
ビジネスにおける「所用」の使い方
ビジネスにおける「所用」は、欠席や休暇、社内の人の代役になることを伝えるシーンに使用できる。
以下では、2パターンの使い方を、例文とともに解説していく。
■欠席や休暇の理由とする例文
「所用」を欠席や休暇の理由として表した例文は、以下の通り。
・前日までのサポートはいたしますが、当日は所用のため欠席させていただきます。
・所用のため、〇月〇日まで休暇をいただきます。ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。
自身の欠席や休暇、遅刻・早退の理由として「所用」を使う時は、「~のため」を付け加え、上記のように「所用のため」とするのが一般的だ。理由を述べずに出られないことを伝えられるため、詳しい内容を言いづらい時に重宝するだろう。
■代役になることを表す例文
「所用」を代役になる表現として使った例文は、以下の通り。
・上司の〇〇は所用で出席できないため、私が祝辞を代読させていただきます。
・誠に恐れ入りますが、〇〇は所用のため席を外しております。代わりに私が対応させていただきますので、いつでもお申し付けください。
「所用」は自身が出られない理由となるほか、社内の誰かの代わりになることを相手に伝える表現としても使用できる。ビジネスシーンでは、上司や部下などの手が離せず、担当ではないにもかかわらず対応する機会は少なくない。そんな時に覚えておくと良いだろう。
ちなみに理由が相手に明かされないため、クライアントなど社外の人に、本人が対応できないことをオブラートに包んで伝えられるのが便利なポイントだ。
「所用」を使う時の注意点
欠席や休暇を伝える時に便利な「所用」だが、似た言葉との使い分けと使う頻度に注意が必要だ。特にビジネスシーンでは相手を混乱させたり、雑な印象を与えたりする可能性があるため、事前に理解しておこう。
■「所用」と「私用」の使い分け方
「所用」と「私用」は、個人的な理由かどうかを基準に使い分けると良い。「私用」には、「自分個人の用事」「私事」といった意味がある。
対して、「所用」は先述の通り「用事・用件」といった意味のみで、個人的な理由かどうかは定められていない。
つまり、個人都合の理由がある時は「私用」もしくは「所用」、会社都合の理由には「所用」を用いて正しく使い分けよう。
■「所用」は敬語ではない
用事や用件のかしこまった表現である「所用」だが、敬語ではないということに注意しなければならない。
さらに、ビジネスシーンにおいて、欠席や休暇を申し出る時には理由を添えるのが一般的だ。幾度も「所用のため」と表現すると丁寧な印象に欠け、相手に不信感を与えかねない。間違った表現ではないが、乱用しないよう気をつけよう。
「所用」「所要」「諸用」の違い
読みが同じで、」漢字表記を間違えやすい「所用」「所要」「諸用」の違いは、意味と数にある。「所要」と「諸用」を辞書で引くと、意味は以下の通り。
所要:あることをするのに必要とすること。必要とされるもの。「—の手続きをとる」 諸用:いくつかの用事。「所用」と同じ意味合いで用いられたり、「所用」に代替されたりすることも多い。「所用」は単に用事・用件のこと。 |
まず「所用」と「所要」は「必要なこと(もの)」といった同じ意味はあるものの、「所要」は「用事・用件」の意味は持たない。
また、「所用」と「諸用」はほぼ同じ意味だが、用事・用件の数が違っている。「諸用」は「諸」の文字が入っていることから、用事や用件が複数あることを指す。対して、「所用」とする場合の数は限定されていない。
上記のことから、ビジネスシーンで用件や用事があることを伝える表現としては「所要」は適当ではない。また、用件・用事の数が複数にわたる時は「諸用」、一つか複数か分からない時は「所用」を使うのが好ましいと考えられる。
「所用」の類義語
「私用」や「諸用」も「所用」と似た意味を持つが、類義語はほかにも複数ある。以下では、ビジネスシーンで使える言葉を2つ紹介しよう。
■「諸事情」
類義語のうち、ビジネスシーンでよく使われるのが「諸事情」だ。
「さまざまな理由」「あれこれの事情」といった意味があり、「諸用」と同じく、複数の理由がある時にふさわしい表現である。「所用」と同様、内容を詳しく述べずに用事があることを伝えられるのが特徴だ。
■「用向き」
「所用」の同義語でもある「用向き」には、「用事」や「用件」のほか「用事の内容」という意味もある。
「ご用向きは?」「どのようなご用向きでしょうか?」といった使い方は、相手に要件の内容を訪ねるビジネスシーン向けの表現となるため、ぜひ覚えておきたい。
「所用」の英語表現
最後に、「所用」の英語表現を2つ紹介する。ビジネスでは英語を使う機会も少なくないため、知っておくと重宝するはずだ。
■「business」
「所用」を表す代表的な英語表現が、「business」である。「business」は「仕事」を指す言葉であるとともに、「業務」や「営業」など複数の意味を持つ。
ちなみに「for business」で「所用のため」となり、「Absent due to business」で「所用のため欠席」となる。さらに「I am afraid that〜」や「I am sorry for〜」を付け加えると、より丁寧に断りを入れられるだろう。
■「have Something to do」
用事があることを伝える英語表現としては、「have Something to do」も適切だ。
「Something to do」は「何かすること」を指し、haveを加えると「用がある」といった意味になる。相手に用事があることを伝えたいときは、「I have something to do」と表現しよう。
「所用」は敬語ではない!ビジネスでは言い換えも要検討
「所用」とは、いわゆる用事や用件を意味する言葉と分かった。例文で挙げた通り、「所用があり」「所用のため」などと使うのが一般的だ。内容が個人的なものかどうかという「所用」と「私用」の違いも、ぜひ理解しておきたい。
ビジネスシーンによくある言い回しに、「所用のためお休みさせていただきます」がある。休むことを簡潔に伝えられる言葉であり、かしこまった表現でもあるが、理由を明かしていないため印象が悪いと感じる人もいる。
有給休暇の申請に理由は不要だが、親しくしているクライアントや上司の誘いを断る際は、なぜ行けないのかの説明を添えると丁寧だ。
文/shiro