目次
「存じ上げる」とは、「知る」「思う」ことを指す謙譲語表現です。使う際に気をつけるべきポイントが複数ある言葉のため、使い方を間違えないように確認しなおしたい場合があるでしょう。
この記事では、存じ上げるの意味や「存知」の漢字表記の正誤、「存じる」との違い、例文、注意点を解説します。あわせて類語・言い換え表現も確認しましょう。
「存じ上げる」の意味
「存じ上げる」は、ビジネスシーンなどで使用する頻度の高い言い回しです。職場などで大人としてふさわしい言動をするために、存じ上げるという表現を改めて確認し、正しく使いましょう。
はじめに、存じ上げるの意味や「存知」という漢字表記は正しいかどうか、「存じる」との使い方の違い、例文、使用する際の注意点を確認します。
■存じ上げるとは「知る」「思う」を意味する謙譲語
存じ上げるとは、「知ること」「思うこと」を意味する謙譲語です。謙譲語とは、自分の行為や物事などをへりくだって伝えることにより、相手への敬意を表す表現です。
「存ずる(存じる)」だけでも、「知る」「思う」を指す謙譲語として使えます。さらに「上げる」を付けることによって、相手への敬意を高めた表現です。
ビジネスシーンでは、取引先などの目上の方に対して、「お名前は存じ上げております」などの形でよく使用します。
■「存知」という漢字表記は正しいか?
存じ上げるの読み方は「ぞんじあげる」です。ビジネス文書のなかで、「ぞんじ」の部分を「存知」と漢字表記し、「存知上げる」や「ご存知」などと記載されている場合があります。
「ぞんじ」の部分の漢字表記は、「存じ」とするのが正しいです。「存知」と漢字表記するのは当て字だとされています。存じ上げるやご存じは「存ずる(存じる)」が変化した謙譲語であることを理解しておけば、正しい漢字表記を判断しやすくなるでしょう。
存じ上げるの使い方
■「存じる」との使い方の違い
先述のとおり、「存ずる(存じる)」も「知る」「思う」を指す謙譲語です。実際に使用する際は、「存じております」や「存じます」などと表現します。
存じ上げると存じるの使い方で大きく異なる部分は、対象となるものです。それぞれ、以下を対象として使用します。
・存じ上げる……人物に対して使う
・存じる……人以外を対象として使う
存じ上げるは、謙譲の意味をさらに強めることで、対象とする相手を立てる言葉だと覚えておきましょう。
■存じ上げると存じるの使い方を例文で確認
存じ上げると存じるを正しく使い分けられるように、さらに例文で使い方を確認しておきます。
・〇〇社の〇〇部長のことは存じ上げております。以前のプロジェクトでお世話になりました。
・今回のミーティングの日時が変更となった件は存じております。
・「今回のプロジェクトの概要は知っているか?」「はい、存じております」
存じ上げるは、人物に対して使う言葉です。たとえば、物や場所などを尋ねられた場合には、「存じ上げます」ではなく「存じます」などと伝えましょう。
■存じ上げるを使用する際の注意点
存じ上げるを使用する際に注意すべきポイントは、「相手を主語にしないこと」や「否定形で用いる場合の使い方」です。
存じ上げるは、自分の行為や物事などをへりくだって伝える謙譲語表現です。そのため、「〇〇社長のことは存じ上げていますか?」などのように、主語が相手になる場合に使うのは適切ではありません。主語が相手になる場合には、「ご存じ」などと言い換えましょう。
知らないことを伝えたい場合に、「存じ上げません」と伝えるのは注意が必要です。堅苦しい印象や突き放すような印象を与えてしまう可能性があります。「わかりかねます」などに言い換えると良いでしょう。
また「存じ上げません」と否定形で用いる場合は、「申し訳ありませんが」などのクッション言葉を使うと、否定のニュアンスを和らげられます。
存じ上げると存じるの類義語・言い換え表現2つ
存じ上げるや存じるの類義語・言い換え表現は、以下のとおりです。
・思っております
・承知しております
これらのほかにも、「面識があります」「心得ております」「所存です」「うかがっております」「お聞きしております」「わかりかねます」などの類義語・言い換え表現があります。
それでは、存じ上げると存じるの類義語・言い換え表現の意味などを確認していきましょう。
1.思っております
「思っております」とは、「思う」に存在を示す「おる」と丁寧語の「ます」を付けた表現です。「思う」とは、「ある物事に対する考えを持つ」「考える」ことを意味します。
「思っております」は丁寧な言葉ではあるものの、謙譲語である「存じ上げます」のほうがさらに相手への敬意を表せます。使用するシーンや相手に応じて、適切な表現を選ぶと良いでしょう。
2.承知しております
「承知しております」の「承知」とは、「承って知ること」「聞いて引き受けること」を指します。
存じ上げると同じく、「知っていること」を意味する謙譲語表現として使える言葉です。とはいえ、それぞれでニュアンスの違いがあるため使い分けに注意しましょう。
先述のとおり、存じ上げるは人物に対して使います。一方で、「承知」は何らかの事情を知っている場合に使う表現です。このように、存じ上げるの類義語・言い換え表現であっても、使い分け方を理解する必要があります。
適切な場面で存じ上げるを使おう
存じ上げるとは、「知ること」「思うこと」を意味する謙譲語です。自分の行為や物事などをへりくだって伝えることで、相手への敬意を示します。
ビジネスシーンなどで目上の人に対して使う表現であるため、自信を持って正しく使いたい言葉でしょう。使用する際にとくに注意すべきポイントは、「相手を主語にしないこと」や「否定形で用いる場合の使い方」です。
存じ上げるや存じるの違いやそれぞれの使い方、正しい漢字表記、使用する際の注意点、言い換えられるフレーズなどをあらためて確認し、適切な場面で使えるようになりましょう。
構成/chihaya